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幾何学文様

 9月は国立民族博物館で版画展を2つ観てきました。1つは企画展『カナダ北西海岸先住民のアート│スクリーン版画の世界』。こちらでは、蛸や蛙など、神話や口頭伝承による民族独特のデザインが作り出す幾何学文様の世界観を知ることができました。

もう1つはエントランスホールで開催していた田主誠氏│今春亡くなった版画家。民博開館当初から広報誌や研究連絡誌を初め、新聞や雑誌の仕事も数多く手掛ける|の版画展。こちらでは温かみのある木版画の作品と一緒に展示してあった左右対称で描かれた作品『MASK』と三角で描かれたクルクル幾何学文様が一際目を奪われました。

一括りに幾何学文様とまとめてしまうのは違うのかもしれませんが、全く違う民族から生まれた版画作品を幾何学文様として同日に見比べれたことは、幾何学模様に虜の私にとってはとても刺激的で面白くもありました。

 展覧を観にいくとき、物販コーナーも楽しみにしているのですが、今回はそこでとてつもなく良き出会いがありました。

いつもは物販コーナーは展覧を観終わってからと決めているのですが、常設の物販コーナーへ行きたい熱を阻止できず、真っ先に入っちゃいました。

常設店の充実っぷりがそうさせたのかもしれませんが、此奴がワタクシメを呼んでいたに違いない!それは、シピボ族−南米ペルー、アンデス山脈のふもとアマゾン地域に暮らす先住民−の泥染め布−樹皮を煮出した染液と、特別な泥を使って模様を染める伝統工芸−。

先ほども言いましたが私、幾何学模様に目がないんです。それでも模様だけが一目惚れした理由ではないと思います。

家でも店でも使っている大好きなクバ王国−アフリカ大陸のコンゴ民主共和国の内陸に位置−の北側、サンクル川近くに住むショワの人々が作る『草ビロード』と呼ばれる多様な幾何学文様が施された刺繍の布。

これに近しき愛おしさを感じたのですが、大陸すら違うのにハテ?と思いましたが、手作り特有の歪さに同じような感情が生まれたのかもしれません。

茶色の中でもど真ん中に好きな茶色だったことも一目惚れした理由の1つ。作る工程を調べてみて、なぜこの茶色に惹かれたのかなんとなく分かる気がします。この泥染め布1枚を作る工程を知ると気が遠くなる作業|薪を集め、タンニン色素を含む木の表皮を煮出し、布を染め、幾何学文様を描く、この工程を何日もかけて行い、タンニン色素と特別な泥に含まれる鉄分を化合(鉄媒染)させ、フリーハンドで描いた幾何学文様を黒く浮き上がらせる|で、今回手に入れたサイズは約160㎝のおよそ正方形。どれほどの時間を要したのだろう…。

 1日通して伝統的な幾何学文様に触れたことで、昔から引き継がれている技術の素晴らしさと大切さに気づかされました。

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