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セルフライナーノーツ / The Orchestra of Stray Sheep

※追記5/13 未投稿曲に関してはサウンド面も書き足しました。

アルバムをリリースしました。今日から少しずつ更新していく形でライナーノーツを書いていきます。

このアルバムを作ろうと思ったのは、2/15のことでした。そのときは投稿されている動画の曲と、数曲だけあり。そこから、これだけの曲数、いやそれ以上の曲を描いては少し構想から外れていると感じたものをボツにして、このアルバムがあります。2ヶ月、駆け抜けた気がします。

私はきっと有名にはなれない。なろうとしたってなることはできない。それ以前に音楽を作ることはいつかともいわず終わってしまうのかもしれない。終わらせたくなった日があったから。いつどう舵を取るか分からない故に「今」私の中でできる全てを詰め込みました。手に取ってくれた方、耳で触れてくれた方には感謝しかございません。ありがとう。

理由や宛先のないありがとうは言いたくないし、ツイッターでも言ってこなかったつもりだから、これは本当の心の底からのありがとうです。

ちなみに通販はやります。ライナーノーツというからには聴いてもらえた方へのあとがきみたいなものなのだけど。これから手にとって頂けて「ありがとう」と言える方にも向けて誠意を込めて書きます。 

それでは、前振りが長くなってしまいましたが一日一曲ごとのライナーノーツ。ゆるりお楽しみください。 


【アルバムコンセプト】

タイトルは、直訳すれば「迷える羊達のオーケストラ」。私以外にもこの言葉を話す人はいるけど「生きることそのものが芸術」というのは私の中でも真理に思えるんです。

そんな迷える羊達の1人1人にスポットを当てて、一つの芸術作品を仕上げていきたいなって思いました。とは言っても1人の人間が書く詩なのでパーソナルな想いでもあるのですが、生きている間で遭遇している物事はその時々で違う以上は考え方も変わるでしょう。となると、案外パーソナルって大衆的ともいえるのではないかとも思います(というか、私が特別な経験をしてる人間でもないので)。なので、1つ1つの事象。つまり、時系列の違う自分を1人1人の他人として分解することで書いていこうと考えました。

ただ、それをネガティブに終止するだけではなくって、それを受け入れたり、もがいたり、そうやって光を見つけたり、そんな人間ならではの美しさを描いていけたらな。

そんなアルバム。


【各曲ライナーノーツ】

5/8更新

♯1 おはようとおやすみの不思議 / LUMi

◆Songwriting
今作で一番最後に描いた曲。静けさと壮大さのコントラストをワンコーラスという中で出しきりたいと思って書きました。そしてワンコーラスで〆て「え!ここで終わらせるの?」って思った方も多いんじゃないかと思います(書いてくださった方もいらっしゃいましたね!)。今回はワンコーラスにして、フルコーラスを作ったらそれは投稿しようかなとか考えてました。そういったチョイスこそアルバム制作の難しさと楽しさそのもの。

◆Words
すごくパーソナルな歌詞。心のすべてが空っぽになってしまったときがあった。でもそれに名前がついて、私は安心した。理由はわからないけど、自分を追い込んでいた自分が間違えていたことが示されたからなのかもしれない。それは光のようで、そこに絶望はなかった。その日から「おはよう」と「おやすみ」は今日私達が生きていることの証明をしあう言葉のようで美しく聞こえたんです。


5/9更新

♯2 降りやまぬ雨に / 初音ミク

ボカロ処女作で投稿したときにもライナーノーツは書きましたが、改めて。私が作曲を始めたのは13年前。この曲は3.4曲めくらいに制作した曲。今でも相変わらず無名な存在の僕だけど、それより遥かに小さい子供の頃のような感じな曲なんです笑。そのときは音楽で生きたいって思ってて、でもまだ右も左も知らなくて。しかも周りは「音楽で生きようなんて夢見がちな人間のやることだ」って感じで肩身が狭くて。でもいいかえす勇気もなくて。そんな思いの丈の初期衝動。


5/10更新

♯3 微睡みの森は祈り溢れて / 初音ミク

音楽をすることそのものが私は怖い。それはボカロを始める前にやっていた音楽活動ですごくショックなことがあってエンストしたようにプスン…と活力がなくなって。「そんな状態の人間が誰かに何かを持って曲を届ける資格があるのだろうか」と考えた末、その活動をやめました。ただ、活動をやめても音楽はやめられなかった。曲を描くしかできなかった。でも曲を描くたびそれは悪夢のように蘇るし、苦しいし。でも、届けたい景色があるのは変わらない自分を知って「あぁ、歩くしかないんだ…。」と再認識するんです。それならそんな過去の想いすら背負い切ろう。そんな私なりの意思表示の曲です。だからこの曲は私の「それまで」に一番、近いサウンド、曲構成だと思います。それを作ることで本当の新しいスタートを切れた気がしてます。


5/11更新

♯4 幼き魔法の羽のこと / LUMi

知らないって状態、すなわち無垢な状態ってなんて神秘的だったんだろうと今だから思います。皆さんも似たようなことを思ったことはあるんじゃないでしょうか?子供の頃の夏の空の蒼さ、空想に耽ればどこにだって行けた授業の時間。新鮮な思いってやっぱり大人になればなるほど感じる機会が減ってきます。知らないことがまだ多々ある世の中だと分かりながら、もう実は知りすぎてしまったんじゃないか。とすら時に思ったり。でも、そんなわけはなくて知らないことがある限りは、新鮮さという神秘を噛み締めるときは大人になったってあるはずなんです(当たり前ですが)。ただ、それを求めたい。味わいたい。死ぬまでに何度だって。そんな曲。

私の場合は自分の描く音楽でそれを味わいたくて日々を生きています。だって、その神秘に今でも尚、恋をしているから。

皆さんはどうでしょうか?


5/12更新

♯5 狼少女と十進法 / 初音ミク

なんでこんなに数字に縛られて生活しないといけないかな。と書くとこんなネット媒体の活動なのでツイッターのいいねやら、動画の再生数やらありますし、それも意識はしていないといえば嘘。無視すればいいのに、できればいいのに。そんな自分への嫌悪感もあります。それ以外でも数字のプレッシャーはありますよね。ノルマ、納期、テストやら。その「数字という名の結果」が価値として扱われる世界に身を置いていることを知った途端、誰もいない場所に一人旅に出たくなったり。でも、誰かの価値は自分の価値ではないということを私たちは沢山経験しているはずです。分かっているんだけどな…。主人公の女の子はその枷をまだ外し切れていないのだけど「生きてくわ!答えなどないから」。


5/13更新

♯6 いつか土に還るまで / LUMi

◆Songwriting
さて、ここからは全て未投稿曲です。マイナーキーの不安感を煽るようなイントロのギターのアルペジオフレーズから膨らませていきました。専門的な話なのですが、ギターはレギュラーチューニングで3カポ、但し1弦だけ噛ませない変則チューニングなので、コード譜も大変なことになっています。ギター先行だったのでピアノが大変でした。サビがマイナーキーなのでそれならCメロと間奏で思いっきりメジャー転じて景色を広げたい思いました。そこからの間奏はその延長、転調を交え、主役を入れ替え景色を変えていくように。余談ですが毎回ギターソロが臭いのは、ブルースギタリスト好き故。

◆Words
「生きる意味」「今この場所からどこへ向かっているのだろう?」なんて答えなんて無限にあるようなことが話の根底になってきます。いや、向かいたい場所ならあるんだけど、この身果てるまでに見ることはかなわないだろうなってすごく後ろ向きな…笑。一度、夢(青写真)を燃やし尽くしてしまった人間が、今度は違う場所を目指すその葛藤の詩。

時に私の好きなバンドにLOST IN TIMEというバンドが居てそのバンドが「誰かじゃない。3人称じゃなくて2人称の『あなた』1人1人に歌いたいんだ。」ということをある曲の演奏を始める前に言うんですね。その言葉がずっと残っていて。だからせめて私も曲を描き上げるという「種を落とす」行為が、曖昧な誰かじゃなくて、1人1人の事象にリンクして心に芽吹くものになったという実感を得られたとき、それは私が見たい景色を見た瞬間だ。きっとね。そう思った話。


5/14更新

♯7 フロムウズノソコ / LUMi
◆Songwriting
これは…何から書けばいいのやら…。「全て」が拘りです。エゴの塊な曲です。後述の歌詞も含めエゴ塗れです…笑。コード感、拍子、音の重ね方、毎サビ展開を変えるドラムも、うねるベースも、雰囲気の土台を作るバッキングギターも、切れ味のあるリードギターも、ダイナミクスとフレーズの力強さをコントロールするピアノも、散りばめられたシンセや発振ノイズ(業界用語)も。一つ一つ書いていくとキリがなくて書くに困っています(現在進行形)。ただ、特筆したいとすれば、和音、コードの進行じゃないかなと。私自身、自分の曲で一番目立たないけど一番の自個性はこのコード感だと思っています。Aメロは特にそれが顕著に出ていると思います。とはいっても聴こえ良ければそれでよし。「複雑 = 良い」というわけでは決してないですよね。世の中にはシンプルな思考の方も沢山いますし、少し脱線してコードからリズムの話にすり替えるなら私自身も最強のビートはエイトビートだと思っている次第です。でも、エゴを叶えられたこの曲はこのアルバムの中で一番のお気に入りかもしれませんね。

◆Words
私にはワーカーホリック的なところがあって「お前、病気だよ」「休めよ」とか怒られることが多くて。頭では休まなきゃって思ってるんだけど、休むってどうするんだっけ…?と、うまく休めなくてですね…。それはどういうことかというと、『衝動』に勝てないんです。だから、「おはようとおやすみの不思議」で書いたように過去に本当に病気になったのですが…苦笑。脳がもう限界って言っているのですが一方で「この世界を描き切るまで休むな!」「まだ私は何も成していない!まだ何者でもない!」と言ってくる自分もいて、もう何だか混沌とした渦が私の周りをぐるぐる回り、「何者かになりたいであろう私」はまるでその渦の中心から手を伸ばしてるみたいだと思ったんですよね。でも、たぶん実際は何者かにはなれているんです。張り裂けそうな想いを形にすることがそうでした。生まれてしまった『衝動』が身を削るものだとしても、それが私の大切なものなのです。(とは言いながらも力が抜けてきたんじゃないかと思っている今日この頃です。)


5/15更新

♯8 虹の上にただ二人 / LUMi
◆Songwriting
この曲はドラムのフィルを一部、知り合いのドラマーと一緒に考えたんです笑。僕は本職がギタリストなので、考えられるドラムの引き出しもやはり本職の方と比べると乏しいところがあるのと。あとは「臭いドラム」にしたかったというところが大きいです。「染まれないとしても」のドラムや、曲の〆のドラムのフィルなんて、スタジオミュージシャンが使うような玄人っぽさのあるフレーズで気に入っています。

ちなみにイントロ前のSEやサビ前で使われるひゅーーんって音(語彙力)はボトルネックと呼ばれるギター奏法の音色を加工して飛び道具的に使っています。

◆Words
「自個性」ってなんだろう?という風に思うのは私が好きな音楽をする人がことごとく活動を辞めていったからだと思います。その虚しさから描いた曲です。「その世界をもっと教えて欲しかった」「その夢をもっともっと見させてほしかった」。そして、そういう方々にもっと活動を続けてもらいたかった。実に難儀な話ですね。

主人公の少年は本当は自分の色を見つけているのに、それを周りと比べてしまったとき「僕の色はなんて地味な色なんだろう」なんて思ってしまうこともあるのでしょう。でも、案外その「地味な色」って世間が作り出した勝手な物差しだったりもします。それはその物事が時に世界の全てかのように錯覚させたりします。

いいえ、違うよ。あなたはそれでいいんだよ。そう言ってあげたかった。


5/16更新

♯9 悪ふざけの手紙 / 初音ミク
◆Songwriting
アルバム制作終盤で、箸休めになる曲が欲しいなって思ってて。頭も使わないで描こうとありのままを一日で描き上げた曲です笑。元々はサビのシンセの音をギターで弾く予定だったのですが、ギターギターしすぎるのもなぁとシンセに変えて。理由もなくマリンバを入れたり。遊び心ということでヤギの声入れたり笑。レコーディングも楽しかったですね。流石に手拍子を一人で5人分録るのは虚しかったですが…笑。

◆Words
歌詞全体の生産性のなさ、不毛さが「生きる意味なんて有るのも良し 無くても良し」。そこに終始します。頑張り続けるってしんどいですもの。迷いっぱなしの人生に逐一「人生ってなんなんだろう」なんて考えてたら苦しいですもの。もちろん、そこと向き合う必要性は肯定しつつ。思いっきり思考を放棄するのも私にとっては勇気なんですよね。そういう意味では自戒な曲。歳を取ると辛い日々の方が普遍的、それは不運じゃなくて奇怪な日々は案外日常的なものなんだ。そう開き直るもまた人の強さと考えます。


5/17更新

♯10 十五夜は届かぬ告白 / 初音ミク
◆Songwriting
この曲は実は某アイドルさんの楽曲コンペで2曲出して1曲が採用され、1曲が不採用だった。その不採用の方の曲なのですよね。そのような形でハードディスクで燻っている曲は沢山あるのですが、この曲に関しては「早く日の下に出してあげたい」と思いました。ストリングスのメインフレーズ、サビ直前での転調、うねるベースライン、3サビ全て異なるドラムパターン。全てが楽曲のカラフルさを演出させるパーツになればなと思って作っていました。ギターソロがNGというコンペだったので間奏は思いっきりバンドアンサンブルで攻める感じに。ニーズという縛りから「どれだけ綺麗に聴かせられるか」。そこが焦点だったように思います。

◆Words
過去の失恋との決別。分かり易い歌詞であまり多く語ることもないのだけど、全ては「好きでした」へ。何もかもを、自分すらも嫌いになったとしても、最後にその想いに正直になれたこと。それが主人公の子とってしっかり次の幸福を受け入れるためには必要なことだったのでしょう。それが自分自身を肯定して前に進むための大事な工程だった。


5/18更新

♯11 スノーウィ・ララバイ / LUMi
◆Songwriting
「冬の曲」を描きたいなって思って、気づいたら2サビまでのオケができていましたね。メロディは後ないし同時、基本的には先にオケを作るタイプなのですが、つまるところメロがなくても冬の曲の風景が浮かぶような曲になったと思います。このアルバムで一番不思議で深みのある音の世界。そう思っています。間奏は「もうやったれ」って笑。終始ただの3拍子で収まりよく聴かせるよりは、何か引っかかりを与えたいと思いました。それくらいにはただのノスタルジーな曲という印象に終わらないようにしたかったですね。

◆Words
人の嫉妬心。その根本は「誰か」という残像に届かない自分。それから目を逸らしたいからなんじゃないかなって、時々思います。嫉妬心はいわば自分の外側へと向けたベクトルを持ち続けていても、いつかは自分と他人が違うということを理解する。違うから、自分を見つめる。それはそれで人を妬むのとは違う苦行。でも自分の中に確固たる自分を見つけたらね。きっと君はこんな寒いところから出ていける。だから、そんな日を遠い春の日に待つね。そして話をしよう。


5/19更新

♯12 アルストロメリアの栞 / 初音ミク
◆Songwriting
アルバムのことを考え出す前の曲でもあるので、勿体ぶったアレンジをしたと思います笑。今まで憂いを帯びた印象が強く出る曲が多かったので、明るさと風の吹くような爽やかさの際立つサウンドを意識していました。ゆったりしがちなサビのビートに対してトータルアレンジとしてどのようにして推進力を生み出すか。頭打ちのイントロにしたのも、Bメロで4拍子展開してエイトビートを刻むのもその答えで。そこが面白さだったんじゃないかと思います。

◆Words
あとがきみたいな歌詞。というのは、私の中で「自分との対峙」というのが一つのテーマだったので、そのすべてのアンサーになってる歌詞なんじゃないかって思ったんですよね。ある意味でこの曲に向かってすすめるようにして他の曲の歌詞を作っていた部分はあります。色んな物語を生きて、色んな偉人の言葉があって。もちろん、そんな偉人の言葉もその人たちの経験から自分と対峙した末に生まれたもので(この一文は私の言葉ではなくとある方から気付かされたものなのですが)。その結果としてみんな「歩くのは私自身の足だ」と、そんな当たり前のことを再認識しているんじゃないかと思ったんですよね。この子は紆余曲折してその答えに辿り着いた一人で、ようやく純粋な思いで前を向けるようになったんじゃないかと思います。

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