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「副業としての政治家」という新しいスタイル。政治は、普通の人がやるべき

ほづみ、選挙出るってよ

というわけで、会社の同僚のほづみゆうきさんが東京都中央区の区政にチャレンジするそうです。


かといって、


ほづみ、会社辞めるってよ


とはならず、これまで通り会社で働きながら政治活動を行うとのこと。

詳細については是非ほづみさんの渾身のブログをご覧ください。


今回のほづみさんの挑戦は軽率な思いつきなどではありません。

彼がこの数年間、いかに中央区政や行政に対して向き合ってきたかはブログを読めばわかります。


そして彼は、今後の活動方針として下記の3つを掲げています:

① 働きながら、子育てしながら活動を行う(ながら選挙)

② 路上などで騒音を撒き散らす行動は控え、インターネット上での発信に注力する(騒音レス選挙 / ネット選挙)

③ 活動に掛かるコストはできる限り抑える(ほぼゼロ円選挙)

※ なぜほづみさんがこういった活動方針を選択したのかは、重ねてになりますが彼のブログをご覧ください。


同僚として、そして、彼の中央区政に対する想いと実績を知る者として、心から彼の挑戦を応援したいと思っています。


ですが…


様々なご縁をいただいて、私はこの政治業界に10年以上関わってきました。

かつて、自分自身も首長選挙に立候補したことがあります(そして、完膚なきまでにボッコボコにされました)。

その後も、心から応援したい候補者のサポートに入り、国政・都政・県政・区政・市政の各選挙を経験してきました。


だからこそわかるのですが、きっと彼の活動方針をみて多くの政治関係者はこう思ったことでしょう。

「政治を舐めるんじゃねえ」

「そんな活動方針で選挙に受かるんだったら苦労しないわ」

「これだから素人は…」


もう、四方八方から聞こえてくるようです。


実際のところ、正直いって、このまま選挙に突入しても結果は相当厳しいものになるであろうことは想像に難しくありません。

都議会議員の音喜多さんもブログで書かれてますね。


この音喜多さんの考え方には10,000,000,000%同意です。

誰だって、明らかにご近所迷惑な、自分の名前だけを連呼するやかましい選挙カーを回したくて回しているわけじゃありませんし、

好きで朝から晩まで駅前に立ってチラシを配っているわけではないのです。

通行人にうざがられながら握手を迫りまくるのだって、時折ゴミを見るような目でみられると正直「つらい…」と思う瞬間もあります。

寒い日に雨が降ったら「今日は活動はやめとこう」

ではなく、

「注目してもらえるチャーンス!!」ってことでびしょ濡れになりながら元気よく挨拶周りするのだって、心では泣いているのです。

こっちだってマゾじゃないのですよ。

こうしないと選挙に勝てないから泣く泣く(されど気合いをいれて)やっているわけであります。


それをあなた… 

仕事したまま、お金もほとんどかけずに、しかもネットに注力するって…

それで当選するなら、みんなそうしとるわ!!っていうね。





それでも、それでもなお、僕はほづみさんの挑戦を応援したいと思っています。

その理由はとてもシンプルです。

政治は、普通の人がやるべきと思うからです。

普段は「普通」という言葉を使うのは好きじゃないのですが、今回はあえて使います。


これは完璧に私の個人的な主観なんですけれども、現状のままでは政治家って基本的に頭のネジが2〜3本飛んでないとできない仕事だと思うのです。


というのも…


そもそも、選挙に出るなんていったら普通の会社じゃクビ、とはいわないまでも退職勧告でしょう。

加えて、一般的なやり方で選挙に出ようと思ったら、結構な投資が必要になります。基礎自治体(市区町村)の選挙ですら数百万。首長選挙や国政選挙ともなれば、0の数が違います。

こんな状況で落選したら、無職の上に大抵の場合は貯金もゼロ。経験者として言うならば、かなり精神的にやられますよ(笑

さらに付け加えると、仮に当選したとしても一発逆転で裕福な暮らしが保証されているかというとまったくそんなことはない。

今や地方議員のお給料なんて(自治体によってかなり幅がありますけれども)決して高いとはいえず、おまけにかつて存在していた議員年金だってありません。

そんな状況で、確実に4年後にやってくる失職の危機(選挙)にそなえて、なけなしのお金をビクビク貯金しなければならないわけです。

そしてその貯金はまた選挙で無に帰す…と。

さらにさらに。

政治家ともなると今どき周囲からリスペクトされるなんてことはなくとも、批判の目には晒され続けますからね。

しかも、自分だけならまだしも、家族までもが。ここが本当にキツイ。


安定した生活、とか、家族との幸せな将来とか、そういう視点でみたら選挙なんて落ちるも地獄。受かるも地獄なわけですよ。


そうなったときに、誰がこんなことを率先してやろうと思うのか。

当然の帰結として、一部の稀有な方々を除き(自分が応援させていただいている政治家の皆さまはこのケース!!)、ちょっと、いや、かなりズレている方々が手を挙げることになるのです。

例えば、こういうのとかね。


今の政治に必要なのは、優秀な人というより、例えばこんな人じゃないかと思うのです。

・自分の生活を大切にしている。

・家族のことを大切にしている。

・社会を良くしたいという気持ちがある。

・他人のことを思いやる想像力がある。

・特にお金持ちでもない。

・自身にとって都合のよい妄想に捕らわれず、社会の現実に目を向ける。

・不正を働かない。


普通!!めっちゃ普通!!ってかいい人!

でも、こういう普通のいい人は政治に挑戦することはまずないんですよね。良いことないもの。

これが、政治が現実の社会から乖離してしまっている大きな原因のひとつではないかと常々思うわけです。

「オレは妻子のことなんか顧みずに政治活動に命かけてるぜ!」みたいな人に、的確な子育て支援政策が立案できるとは思えないのですよ。個人的には。





では、どうすればよいのか。

ほづみさんのような「普通の人」が選挙にローリスクで挑戦できるように「副業として政治家(※)」というスタイルを社会に浸透させていくことなのではないかと思うのです。

※ 国会議員や広域自治体の議員は当選した後の職務の量と質、そして性質からいって、副業は非現実的。ここでは基礎自治体(市区町村)議員だけの話。


しかし、この「副業としての政治家」には大きな壁が二つあります。

① 社会人としての身分を保証されたまま立候補&政治家として活動できる仕組みがない
② 選挙を勝ち抜くナレッジ不足


① 社会人としての身分を保証されたまま選挙に立候補&政治家として活動できる仕組みがない

今回、ほづみさんは選挙に立候補するにあたってクビになることも左遷されることもないそうです。

彼の所属する会社の懐の深さは良い意味で異常です(笑

多くの場合はそうはいかないでしょう。

会社に在職中の社員が公職選挙へ立候補をするのは労働基準法で労働者の権利として認められていますが、立候補にともなう選挙活動については、その限りではありません。

まずは社員が在職したまま選挙活動ができるようにする法的基盤を整えた上で、それをやっても会社に対してなんら不利益を及ぼさないという成功事例を積み重ね、慣習上も問題をなくしていくというプロセスが必要ではないでしょうか。

そういう意味でも、ほづみさんのようなケースは本当に貴重だと思うのです。


② 選挙を勝ち抜くナレッジ不足

選挙はシビアです。

すでに述べた通り、有能だからといって、いい人だからといって、当選するわけではないのが選挙の常。

実際、有権者の多くは立候補者の政策案とか時間をかけてみていません。

特に、基礎自治体(市区町村)の選挙は「大選挙区制」です。

小選挙区制(衆議院議員選挙)と異なり、立候補者が何十人といるのです。多いところでは50人を超える地域も…

その中からたったひとりを選んで投票しないといけないわけですが、面倒くさくて政策案の比較なんてやってられないわけですよ。

おまけに、もし仮に真面目に政策案とかに目を通したとしても、本当に実現してくれるかはわかりません。

結局、知っている人に投票しよう、とか、頑張っている人に投票しよう、とかいうことになります。

だから、古典的にして王道の選挙手法は名前だけを連呼する選挙カーとか、握手作戦とかになるわけですね。

はっきりいって、この状況を覆すことは容易ではありません。


とはいえ、逆に「大選挙区制」だからこそのチャンスもあると思うのです。

大選挙区制のもうひとつの特徴として、小選挙区制等とは異なり、一般的な方々の支持を広く得ることはできなくとも特定のセグメントの票を固めさえすれば勝てる、というものがあります。

悪い例になってしまいますが、外国人に対するヘイトスピーチを堂々と行っている候補者や、明らかに思想的に偏ったことを主張する候補者が当選してしまうのも、この制度の特徴のせいです。

とはいえ、じゃあ具体的にどうするの?と言われても今の私にはわかりません。

特定のセグメントの票を固めればいいのは間違いないですが、どうやってその人達にアプローチして、しかも支援をしてもらえるのか… 現段階では皆目検討がつきません。

冒頭で述べた通り、ほづみさんの挑戦は本当に困難なものとなることは間違いないでしょう。

でも、この挑戦は本当にこれからの政治に必要なことだと個人的に思います。

男性も女性も、子育てしていようがいまいが、「普通の人」が政治の世界にローリスクで進出していく流れを、僕たちの世代から少しづつでも作っていきたいです。

それが、きっとより良い社会につながっていると思うので。

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