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アフター・マージ: The Mergeを終えて

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経済情勢が悪化する中、Mergeを終えた今のEthereumは今後どうなっていくのでしょうか?

先週金曜日の9月15日午前2時45分(EST)に、EthereumはProof-of-Stakeネットワークへの移行に成功しました。このPoSへの移行は、Ethereum誕生当初からの構想であり、遂に実現のときを迎えました。Mergeに至るまで不安定な値動きが続きましたが、実際のアップグレードは滞りなく行われ、12分後にネットワークは無事ファイナリティに達しました。しかし、Ethereumのジェットコースターはまだ始まったばかりです。

事実売り

マージ当日がようやく設定されると、トレーダーはすでに動き始めていました。イベントが発生する予定の数日前から、CEXへのETH流入が始まり、マージ前夜には980k ETH(~16億ドル)以上が取引所に移動し、2016年以来最高の純流入量に達しました。

Source: Glassnode

米国の最新のインフレ数値発表によってETHが1,600ドルまで下落した(-8%)後、Mergeを取り巻く高揚したナラティブが衰えを見せ始めていたため、多くの人がこのレベルでETHを売りたいと考えていることが明らかになりました。過去数年間、The MergeはEthereumにとって最も強気なイベントとして常に宣伝されてきたため、トレーダーはそれが正式に完了した時点で「事実売り」を行う準備をしていたのです。

しかし、Mergeアップグレードそのものに問題がなかったからか、マージ直後の数時間、市場は比較的穏やかでした。最初の12時間、ETHは一時的なデフレ化し250ETH以上がバーンされましたが、その影響はほとんど目立たちませんでした。

ベアもブルも強い主導権を握ることができず、ETHは米国株式市場が再び開く前の夜まで1,600ドルの範囲にとどまりました。そして、その時、門戸が開かれたのです。

小売業の数字が予想以上に強かったことやと労働市場の縮小が要因で、FRBがインフレ抑制策を強める可能性が出てきたため、投資家が神経質になるのも無理はありませんでした。国債や債券の利回りがさらに上昇し、株式及び暗号資産は売りに転じました。1,600ドルのサポートレベルを守ることができず、イーサリアムは6.3%沈み1,489ドルまで下落したのです。グローバルリスクオン資産にとって破壊的な1週間の後、1420ドルのすぐ上でうろつき、やがてまた下落を再開させました。

Source: CoinGecko

ほとんどの暗号通貨は週末に出血を何とか食い止めたものの、月曜日には即座に暴落が再開しました。多くの人がFRBの動きに関し最悪の事態を予想していたため、BTCとETHの先取り売りが続き、おそらくそれ以上の事態が発生しました。米国株式が回復しその日をプラスで終えたが、一方でイーサ価格は9%も急落し1,280ドルの安値まで急落しました。FRBの決定が近づくと、ETHは1,300ドル台で推移しましたが、長くは続かなかったようです。

ロシアと利上げについて

プーチンによる徴兵令

偶然にもFOMCの直前に、もう一つ市場を動かす重要な出来事がありました。ウラジーミル・プーチンは水曜日、ロシア国民に対し第二次世界大戦以来の徴兵を命じ、西側が彼の言う「核の脅迫」を続けるなら、モスクワはその膨大な兵器庫の力をすべて使って対応すると警告を発したのです。

ロシアがウクライナの反撃にあい、自軍を撤退させ占領地の一部を明け渡したことで、ウクライナをめぐる対立は大きくエスカレートしています。

識者は、これはプーチンが「面目を保つ」ため、そしてウクライナ戦争後の自分たちの失敗を正当化するためのさらなる賭けであるとの見解を示しています。この演説が行われた後、市場は若干の下落を見せましたたが、FOMCまで大きな動きはありませんでした。

9月FOMC

当然のことながら、FRBはデータ主導のスタンスを崩していません。現状では、インフレ率は低下したものの予想よりも粘りがあり結果的に75bpsの再引き上げとなりました。

予想通りの決定だったとはいえ、市場の下落圧がなくなった訳ではありませんでした。やがてビットコインは発表から1時間で19,700ドルまで上昇した後、18,500ドルまで急落したのです。一方、ETHはさらに大きな打撃を受け、10.6%以上下落し1,230ドルを底値に下落しました。

Source: CoinGecko

専門家らはFRBの決定の影響に関し考えを張り巡らせていますが、以下では今回の会合とパウエルの最近のスピーチから重要なポイントをいくつか紹介します。

  1. 新たに発表されたドット・プロット・チャートによると、12/19のFOMC参加者らは、FF金利が2023年12月までに4.5~5%に達すると予想している。信頼できるものではないが、FRBはインフレ率がより管理しやすい数値になるまで経済を引き締める意思があることを示唆している。

  2. パウエルによると、FRBはインフレ率が2%になるまで揺るがない。これまでの利上げにもかかわらず、8月のCPIが上昇を示したことを考えると、FRBの最新の金融演習が今後数ヶ月の間に意図した効果を達成できるかどうかはまだわからない。

  3. GDP成長率は2022年に0.2%に減速し、その後の数年間はわずかに上昇し、長期的には1.8%にとどまると予想される。近い将来の経済数値が同様の状況を反映する場合、FRBは努力を歩むか、スタグフレーションの環境を作り出すリスクを負うことを余儀なくされるかもしれない。

  4. FRBはこの1年間積み上げた債券保有額を減らしており、別称「量的引き締め」と呼ばれている。FRBの8.9兆ドルのバランスシートから、満期を迎えた債券から毎月最大950億ドルの資金が放出されるようになっている。

  5. 識者は、FRBは他の重要な経済的レバーが壊れるまで軸足を移すことはないだろうと考えている。そのようなレバーが試されることさえあれば、世界中の資本市場にとって良い兆候とはならないだろう。

フォークの数々

この間、いくつかのETHのPoWフォークがついにデビューしています。ほとんどの取引所はChandler Guo氏をはじめとする大手マイナーの支持する公式ETHWフォークをサポートすることを決定しましたが、PoloniexはETH PoWネットワークのメインとしてEthererumFair(ETF)に忠誠心を移したことが顕著でした。とはいえ、この間取引所には多くの売り圧が見られました。

FTXやOKXといった主要なCEXは、これらの資産の取引を最初にサポートしましたが、多くのユーザーはエアドロップされたトークンをすぐに売却しました。これらのフォークトークンを取得/保持する予見可能なインセンティブは特にないため、ETHWは本質的にエアドロップ受信者の底辺への競争になっています。その後、ETHWは80%以上下落し、わずか10ドル、当時のETHの価値の1%未満となりました。

Source: CoinGecko

フォークされたネットワーク上では、ユーザー向けアプリの実際のエコシステムを開発・維持するための進展はほとんどありません。PoWSwapのようなDEXがいくつか立ち上げられたものの、それらは単にユーザーがフォークした資産をETHWに変換するためのツールとなっているだけです。このように期待が消滅につれ、CEXを介したETH PoW売却が継続されることは間違いないでしょう。

いくつかの考察

多くの人が、MergeがETHをデフレ通貨へと変化させ、価格にもっと良い影響を与えると予想していました。確かに、マージ後約12時間はアクティビティの増加もありデフレに傾き、ETHの供給量は減少していたのです。

Source: Ultrasound.money

ただし、Ultra Sound Moneyのチャートを見ると、10日以上が過ぎた今、ETHの供給量は0.21%(約8400ETH)ほど増加しており、インフレしたままであることが分かります。

Source: Ultrasound.money

ETHがデフレになるためには、ネットワークの需要が一定以上増加(およそ>15gwei)しEIP1559によってPoSにより新規h発行されるよりも多くのETHがバーンされなくてはいけません。ただし、冬相場に入って以降、ガス価格は落ち着いており、向こう数ヶ月のうちにETHがデフレに転換する可能性は低いと考えられます。

とはいえ、MergeによってETHのインフレ率が、PoS移行前と比較して大きく下落したことは強調されるべきです。もしPoWが維持されていれば、Merge以降から本記事執筆(9/27)時点までで150,000ETH以上が発行されたはずですが、PoS下でその後新たに発行されたのは8,300ETHのみであり、なんと約95%の新規発行量削減が実現していることが分かります。

Source: Ultrasound.money

以下はPoW ETHとBTC、PoS ETHの予想インフレ率を比較したチャートです。0.21%のインフレ率は、PoW ETHだけではなくビットコインの1.72%を大きく下回っています。

Source: Ultrasound.money

しかし、直近の値動きは期待とは真逆の方向に向かっています。ファンダメンタルズについて話すのは自由ですが、クリプトが現在マクロの展望と密接に結びついているという事実は変わりません。現状では、ロシアが第3次世界大戦の開始をちらつかせており、インフレは依然として高止まりしています。弱気市場は残酷であり、数ヶ月に渡るゆっくりとした長いダウントレンドが予想されるでしょう。

しかし、価格がすべてではありません。弱気相場であっても、イーサリアムコミュニティが歴史上最大級の大事業を成功させたことを忘れてはいけません。そしてやるべきことはまだ多く残されており、今後数年でさらに多くのアップグレードが行われる予定です。

Surge、verge、Purge、Splugeと簡略化されているが、これらはすべてEtheruemの継続的な進化における重要な瞬間となります。

Vitalik自身が言うように、Ethereumはまだ5分の2しか進んでおらず、同じイーサリアンとして、ネットワークの次の章に何が待ち受けているのか、私たちは皆、楽しみで仕方がありません。

原文執筆者:Benjamin Hor
協力:Khor Win Win

*本日本語記事は原文を一部修正かつ情報を追加したものであり、完全な翻訳記事ではありません。

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