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伊良コーラ物語

馬鹿にされた夢がある。気づかずに涙が溢れていた夜がある。
これは、一人の日本人が、世界的なコーラメーカーを作るまでの物語。

Dream in the Can.

1. 「始まりは唐突に」

物語のスタートは2022年4月2日。

「バカサミット」というイベントの会場へと向かうタクシーの中に伊良コーラ(いよしコーラ)代表の小林とメンバーの藤原はいた。

イベントの登壇に加えて、物販用の大量の商品を運搬する必要があったので、珍しくタクシーを使っていた。

そして、会場へと向かうその車内では今後の伊良コーラの方向性についての話をしていた。

千葉県大多喜を本拠地とするクラフトジンのMITOSAYAさんが新たに清澄白河に缶の充填場を立ち上げること。
クラフトビールの世界では瓶ではなく、缶への充填が世界的に主流になっていること。
伊良コーラでも今後、多品種のクラフトコーラを製造してくためにも缶へ自社充填をしたいということ。
そして、実際に奥多摩にあるクラフトビールのブルワリー「VETERE」さんへ充填機械の見学の相談もすでにしたこと。

バカサミットの会場に到着し、トークセッションが予定通り終わる。

そして今回のバカサミットではホリエモンこと堀江貴文さんへの公開質問ということで特別に堀江さんへ質問する機会をいただいた。

バカサミットでの一コマ

現状の伊良コーラの状況を説明したのち、「今後、どのように事業を展開していけばいいでしょうか?」という質問をする。

すると堀江さんの回答はなんと、

「缶を作れ」

ということだった。
海外輸出を視野に入れて瓶よりも圧倒的に有利な缶。
さまざまな理由から缶を推奨いただく。

イベントへの道すがら、藤原と話していたことをタイムリーに堀江さんの口から聞くという偶然。

その日からとにかく缶の製造に邁進することになった。

そして、缶を中心に国内、グローバル、ともに大きく打って出よう、と決意した。

缶コーラの発売を2023年の春に照準を合わせ、世界を見据えて事業を進めていく。

そのために協力会社の力も借りて、生産量の拡大に備えよう、と決意した。

2. 「邂逅」

6月。
ICCというスタートアップのイベントへの登壇を推薦していただき、そのご縁でCOEDOブルワリーさんとヤッホーブルーイングの見学をさせていただく機会をいただく。

COEDOさん、ヤッホーさんといえば日本のクラフトビール界の雄だ。

スタイルに異なる部分もあれど、ものづくりに魂を込めるクラフト界の先輩の姿勢に触れたことで、「どこで」製造しているかよりも、「どう」製造しているか、こだわりを貫いてモノづくりをする「精神性」=「クラフツマンシップ」こそがクラフトにおいて大事なのだと実感した。

3. 「少しずつ前へ」

「製法」をどうするか。これは研究開発の分野だ。

缶の充填ラインにあうように、スパイスや果実の顆粒なしで、高いクオリティのシロップを1から開発する必要があった。

季節はもう秋になっていた。

だが、どれだけ試作を繰り返しても納得のできる味にたどり着かない。多くの方々に話を伺った。

カレーにおけるスパイスの技術を東京カリ〜番長の伊東さん、島さんに。クラフトビールのホッピングの技術を地元落合のクラフトビール屋の木下さんに。バーテンダーの野村さんやラーメン屋さん、焼肉屋さんにも多くの相談をさせていただいた。

東京カリ〜番長リーダーと試作の様子

中途半端なものは出せない。そんなプレッシャーがずっとかかり続けていた。
気づけば試作中に涙が出ていたこともあった。

相変わらず続く試作を繰り返す日々。
日中はオフィスで業務を行い、夜から、オフィスの奥にある、キッチンで深夜まで試作を行う。

4. 「プロト缶」

そして、迎えた12月半ば。ついにテスト製造の日が来た。あらかじめ製造したシロップを缶工場に運び込み、プロト缶の製造を行なった。

充填されて、初めて出てきた凜としたその姿は勇ましく一生忘れることはないだろう、と思った。

出てきた缶

ドキドキしながら一口飲んだ。
美味しい。ついにやった!と思った。
深夜、車で帰路に着いた。

5. 「絶望」

翌日。
オフィスに出社し、昨日やっとできたプロト缶のコーラを飲む。

一瞬、自分の舌を疑った。
昨日まであったスパイス感が全くなくなっていたのだ。
理由はわからない。だが、天然のスパイスで味を構成しているが故に、予測不能な何かが起こったに違いない。

今まで、本当に多くの壁を超えてきた。無理だろう、というところから絶対できる、と信じて挑戦し続けてきた。
だが、この場に及んでまだ新しい壁が出現するのかと、正直心が折れそうになった。
今まで、全て天然由来の材料からこだわって作られた缶飲料がなかったのはだからか、と思った。自分は長い間、無駄なことをしてきていたのか、とも思った。

すでにプロト缶製造から2週間が経過し、年の暮れになっていた。
打ちひしがれながらプロト缶を飲む。

するとなんとおいしくなっていたのだ!
沈殿したスパイスからじわじわと香りや味が2週間のうちにひろがっていったのではないか、と推測される。

6. 「リスタート」

自分のやり方は間違っていなかった!
そう思い、レシピに磨きをかけた。
その過程ではクラウドファンディングでのフィードバックやたくさんのフィードバックを参考にした。
そして、3月初旬、本製造を迎えた。製造途中、いくつかのトラブルがありながらも無事に完成。

コンテナにシロップを充填
高速で充填されていく

製造の過程は是非こちらを見てほしい。

7. 「スタートラインへ」

この一年は一歩でも足を踏み外せば奈落の底に落ちていくような、暗い一本道をずっと歩いてきたように感じている。
もし少しでも違う選択をしていたら・・・、と思うとぞっとする。間違いなく今この場には辿り着けなかったであろう。

出来上がった缶

正直、我々が歩んできた道が正解だったかは、まだ分からない。
だが、これは自分一人の力だけではなく、多くの力を貸してくださった方々、そして伊良コーラの頼もしいメンバーあったからこそというのだけは事実だし、今はまだ正解かわからなくても絶対に正解にしていきたい。

また、最近あった嬉しいことについて報告させてほしい。

「コカ・ペプシ・イヨシにする」という、自分が創業時の5年前から言い続けている夢を語ると、その場がシーンとなるようになった。そして時には無理だよ、厳しいよ。やめときなよ。と言われるようになった。

とても嬉しい。

なぜか。

今まで、「コカ・ペプシ・イヨシにする」と語ると、ずっと、笑われていた。
どこの馬の骨ともわからない男がただのジョークを言っている、と思われて笑われ続けてきた。
それが笑われなくなったのだ。
大きな前進だ!
ライバルは遥か遥か遠くにいる。でも目を凝らせばぎりぎり見えるような水平線のこちら側だ。

我々は今、スタートラインに立ったばかりだ。
創業から5年経ち、やっとスタートラインにたった。
そして大きな変化はもう一つ。
伊良コーラに優秀なメンバーが集まり始めている。

最後に、この文章を今、読んでいる皆さんへ。

次のステージに進みたいです。
「コカ・ペプシ・イヨシ」の夢を叶えたいです。
明日からナチュラルローソンで販売。
この結果次第で、「青い」ローソンさんにつながっていきます。
どうか皆さんの力を貸してください。
よろしくお願いいたします。