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ただこれは焦りです

パリにいると、パリにいるということだけで連絡をくれる人もいてそういう人は家に泊められないと言うと途端に連絡が途絶えたりする。
そういうことにいちいち傷ついたり腹を立てたりするほどもうナイーヴではなくて、ああ、人間は自分が得をするために必死になってしまう時期というのがあって、そういう時期は自分にもあったし、ある。というふうに、なんだか閑散とした気持ちになってしまう。
私も誰かにこうして不義理をしたり不誠実だと思われているかもしれない。
時間や心に余裕のないときほど、不義理をはたらいてしまう。
それが自分の根っこの性質なのだなと思うと暗い気持ちになる。
そうはありたくないのだけれど。

パリはバカンスに突入した。
あれ、でも今日はまだ近所の小学校が騒がしいな。
なにか特別授業みたいなものがあるのかな。

パリにいると「フランスに行くことになったから会いに行きたい」と言って時間を作ってくれるがいる。
そのたびに私は自分の好きなお散歩コースに友達を連れてゆく。
何度も入った美術館、何度も入ったカフェ、そういうところに友達を連れて行けるのは嬉しくもあるけれど、ときどきやっぱり疲れてしまう。
安く泊まれるホテルある?美味しいレストランに行きたい。パリから◯◯に行きたいんだけど電車で行くのがいいと思う?ストがあるみたいなんだけど◯◯日は大丈夫かな?
私だってそんなこと分からない。
フランス語が多少わかるからもちろん調べてあげるし、少しでも楽しくお得に過ごしてほしいから親しい友達に情報を聞いたりもしてみる。
でも、ときどきわたしはガイドさんじゃないんだからと疲れてしまうときもある。
私はここで遊んで暮らしているわけじゃない。
毎日働いていて、あなたが来る日のためにわざわざその日の仕事を他の日に回して、自分の活動を停止させて、もう見なくてもいい美術館に入る。

ときどき、そんな風にひとの想像力のなさを憎んで、嫌いになってしまいそうなときがある。
優しくないな、わたし。
ただ余裕がないだけなんだ。
会いに来てくれてすごく嬉しいんだよ。
なのに、余裕がないとこんな風に意地悪なことを考えてしまう。


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