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COLLECTIVE 〜 中部エリア 〜

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47都道府県の ZINE を公募し展示販売するエキシビジョン COLLECTIVE。中部エリアから参加してくださった方たちの ZINE の紹介ならびに、様々な活動の紹介をそれぞれ… もっと読む
運営しているクリエイター

#Collective

オオイシモヘ 『MAYDAY』 (静岡県静岡市)

多くの小学生がそうであるように他聞にもれずぼくも毎日のように漫画を描いていた。日本中の男子が人生に一度は描くであろう『主人公』が剣を持って冒険するタイプのギャグ漫画である。誰に見せるでもなく描かずにはいられない衝動あれは今思えば ZINE の目覚めかもしれないが、日々廊下を全力でダッシュする少年の有り余るエネルギーと感受性の矛先がノートの上に描かれたスライムかと思うと泣けてくる。けれど、あの時、誰かに褒められた経験や、それを読んだ友達が笑った、という原体験がいまの僕のクリエイ

山上 健太郎 『2』 (新潟県)

ぼくの髪が少し伸びすぎてる時、ぼくの髪がおかしな方向にハネてる時、ぼくが髪をくしゃくしゃに掻きむしってる時、そんな時は決まってあんまり『よくない』。よくない時期であり、よくない日であり、よくない瞬間である。そういう時は決まって仕事が忙しかったり、生活のリズムが乱れていたり、そのせいで余裕がない。時間が経つのが早い。足並みが揃っていない。昨日のランチが思い出せない。そんな時は「えいっ!」と目に止まった床屋に入って、短くしてもらう(ついでにヒゲもきれいに剃ってもらう)。すると不思

こばやし まい 『コーヒーのはなし』 (富山県滑川市)

ぼくが高校生の頃に所属していた演劇部では代々、先輩から『喫茶店文化』が受け継がれる。ある日、数人が先輩に連れられてそのジャズ喫茶へ行くのだ。席も決まっていて、必ず入ってすぐ右のボックス席。店の外から覗いても見えない位置にある席だからたばこが吸える。コーヒーとたばこ、それにジャズと演劇論さえあれば何時間だって居ることができた。時にジャズの音が大きくて口論がヒートアップして行くこともある。『先輩のその考え方は違う!』と反論すれば『お前は甘い!』とねじ伏せられる、そして『お前らうっ

上杉あき 『夢と日常』 (静岡県三島市)

絵はうそがつけるからいい。雨の日に青空の写真は撮れないけれど、雨の日に青空を描くことならできる。そっけない窓辺に花を飾ることもできる。あの時食べたトーストの味をいつだって思い出すためにつく嘘ならどんな嘘を筆に乗せてもいい。夜の街にキリンがいたっていいし、行ったことない世界に旅することだってできる。夢みたいな光景がたくさんあったっていい。遠くの景色を描くために空を飛んだっていい。葛飾北斎だって空も飛べるはず。 ある日、神奈川県の真鶴という小さな港町に移住した友人から手紙が届く