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COLLECTIVE 〜 北海道・東北エリア 〜

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47都道府県の ZINE を公募し展示販売するエキシビジョン COLLECTIVE。東北エリアから参加してくださった方たちの ZINE の紹介ならびに、様々な活動の紹介をそれぞれ… もっと読む
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#PARKGALLERY

かなた 『Kindar garten』 (秋田県)

中学1年の時に付き合っていた村岡さんとは、ぼくの転校がきっかけとなって別れることになる。父の仕事の都合でぼくは東京から山形へ。ときどき手紙を書くね、と村岡さん。うん、と、ぼく。公園のベンチでクールにうなづいたはいいけれど、どうでもいいからキスしたかったのを覚えてる。 村岡さんは美人なうえにスタイルもよく、スポーツもできて頭も良くて明るくて手先も器用、女優を目指すと言って中学では演劇部に入った。そんな村岡さんから届く手紙はたくさんのイラストと言葉で埋め尽くされたポップでカラフ

ITWST 『西会津フィルム』(福島県西会津町)

福島県『会津』と聞いて鶴ヶ城、飯盛山、白虎隊、野口英世、猪苗代湖、喜多方ラーメンあたりを思い浮かべられたあなたはもう立派な会津ツウ。武家屋敷、七日町通り、こづゆ、なんてキーワードが出ればだいぶ好きですね。さらにうっかり『会津慈母大観音像』について語り合えたりなんかした日には『え?どこの中学出身!?』なんて話になりますが(なりませんね)、その会津からさらに西に30キロほど向かうと『西会津町』があります。 交通網の整った碁盤目の城下町という印象の『会津』とはまた違い、西会津は大

大槌 秀樹 『神々の撮影』(山形県山形市)

これは半裸の男が林のような茂みを背景に石の上で西洋の彫刻像のポーズをとっている自作のカレンダー。 笑った。一発でやられてしまった。 大槌は主に、山形県内に多く存在する消滅集落や廃村、山でその撮影を行い、その様子を映像や写真として発表している。無法に生い茂る草木になかで生身の現代人の肌は一層白く感じる。その体が生身であることの違和が作品としての条件を支えているものとしても、少なくともそこに写っている彼は彼本体ではなく、西洋の彫刻像という理想化された人体を模すパフォーマンスを

ユカリロ編集部 『yukariRo』(秋田県秋田市)

ぼくの好きな言葉に(もしくはぼくが好きなひとたちが好きな言葉に) 人との出会いは旅だから借金してでも行きたいね という詩がある。こんな風にひとは時々『人生』を大きな『旅』と捉えたり、人生に置けるヴィジョンやアクションを『旅』の行程に置き換えたりする。地図やしおりがあった方がいい旅人もいれば、ない方がいいってひともいるし、目的地は決まってない方がいいひともいれば、身軽なのがいいひともいる。正解はない。ただ、みんなで行く旅行も、孤独を求めるひとり旅もいい『縁』はあった方がいい

是恒さくら 『ありふれたくじら』(宮城県仙台市)

そういえば、僕は鯨をナマで見たことがないと思う。 「そういえば、」「と思う」。そのくらいのあやふやさで見たことがない。 それでも、僕は鯨を紙の上に描くことはできるし、鯨が登場する物語をいくつか知っている。その絵が鯨を描いたものであることは、世界の何人に伝わるだろうか。その物語を理解できる人は何人いるだろうか。 <ありふれたくじら> は是恒が各地をフィールドワークして鯨にまつわる文化や物語を集め、自身の刺繍とともに収録した ZINE 。 僕も ZINE とか自費出版物に関

早川佳希 『それだけ』 (岩手県滝沢市)

岩手なら宮沢賢治。しんしんと降り積もる雪の上、満点の星空が孤独な夜を照らしてくれるイーハトーブ(理想郷)。銀河鉄道が走る。『いはで(言わで)おもふぞいふにまされる』(「言うことより言わないでいることの方が気持ちが勝る」)と、古今和歌集でも歌われた岩手。伝統工芸・南部鉄器も沈黙の黒。重く力強く塞いだ美しい鍋の蓋が、素材の美味しさをとじ込める。東北の人間は言葉が少なく、そして我慢強く、優しい。そんなふうに聞くことが増えた。まだ昨日のことのように思い出す『東日本大震災』。特に被害も