さかもとめぶき 『めぶきの本』 (大阪府大阪市)

今回の COLLECTIVE の会期中よく会場を飛び交ったフレーズの1つに『レトロ印刷』という存在があります。ZINE ブームに拍車をかけたとも言える『レトロ印刷』とは。

製本しかり、紙しかり、手触り、立体感、発色などなど、ZINE の個性を強く印象づける多くの要素はレトロ印刷にお任せ! とも言える存在。今回の COLLECTIVE でもレトロ印刷による印刷・製本は多く、見るにも触るにも楽しめました。同時に、ネガティブな意見としては「印刷や製本方法、紙に頼り過ぎていて内容が入ってこない」という意見もあったのは事実。その『紙』である理由、その『製本』である理由、その『塗り』である理由。いかに内容と製本(技法)の足並みが揃っているか、それは決して理詰めにする必要はなくて、でも、手にした瞬間、直感的にそれらが『納得』できる手触りの本というのがぼくは好き(でも足並みなんてちぐはぐでいいからやりたいことやろう!っていう意見もある!)。製本も一通り遊んでみてから考えるっていうのもいいかもしれないね。

さて、大阪からエントリーのさかもとめぶき『めぶきの本』もそんなレトロ印刷で作られた1冊。ですがパッと見ただけではレトロ印刷を感じさせないところに内容と技法の足並みが揃っている印象を受けます。静かにドスンと落ちるようなシックな黒紙に、艶のある光沢の黒インク(を乗せた表紙の意図とは)。黒い景色を駆け巡る <めぶき> という女の子とは。

その黒はまるで夜に吹く生ぬるい風。

この ZINE は、めぶき(作者?)と思われる女の子が黒い紙の上で、感情きままに・踊ってるみたいに立ち振る舞うイラストレーションの連続。まるでコマとコマの間がだいたんに抜け落ちたアニメーションを見てるかのような感覚になる。時に得意げに、時にさみしげに、物語とも言えない物語は進んでいく。黒にシルバーの線で描かれた <めぶき> が変幻自在に踊る。いつのまにか感情が黒紙の中に移行する。この感じ、個人的には『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』。ラムちゃんを失いかける諸星あたるの気分(いい映画なので気になる人は見てみてください)

今日という日をぶち殺してしまっておかないと明日に備えられない。
2度と今日がありませんようにと。ー さかもとめぶき

最後にそっと <めぶき> ロスが訪れる。

全体的に感じる『風』の表現が秀逸。空気というより風のドローイングでしょう。『芽吹き』とあるくらいだから『吹』を意識しているのか。黒い風が心地よくて何度も何度もめくってしまう。夜なのか。夜じゃないのかも。風も通り過ぎたらなくなってしまうよ、と。だんだんと『いぶき』=『今日』の遺影に見えてくる。2度と今日がありませんように。

ただ不思議と暗くない。

考えすぎかな。

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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そこにあるようにしか居られないをテーマに絵を描いております。







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