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ITWST 『西会津フィルム』(福島県西会津町)

福島県『会津』と聞いて鶴ヶ城、飯盛山、白虎隊、野口英世、猪苗代湖、喜多方ラーメンあたりを思い浮かべられたあなたはもう立派な会津ツウ。武家屋敷、七日町通り、こづゆ、なんてキーワードが出ればだいぶ好きですね。さらにうっかり『会津慈母大観音像』について語り合えたりなんかした日には『え?どこの中学出身!?』なんて話になりますが(なりませんね)、その会津からさらに西に30キロほど向かうと『西会津町』があります。

交通網の整った碁盤目の城下町という印象の『会津』とはまた違い、西会津は大自然に包まれた里山。そんな西会津町から届いた1冊の ZINE が『西会津フィルム』。西会津町に暮らす住民にフォーカスし、24枚撮りの 35mm フィルム 1本 のみを使って切り取った、インタビュードキュメントシリーズ。記念すべきエピソード1は表紙のイラストからもそのひとの優しさ、真摯さも伝わって来る『かたおかもとじ』さん。👈 何者⁉︎

『西会津フィルム』の作者はニューヨークから人口7000人に満たない西会津に移住をし、グラフィックデザインを中心にさまざまなフィールドで活動をする ITWSTMomoe NarazakiWiliam Shum によるグラフィックデザインユニットだ(イラストレーターとしての Momoe Narazaki さんが好きでずっと見てたので今回の参加はうれしいのです)。

グラフィックデザイナーが作った ZINE であるというのは、この冊子に触れた瞬間からじわっと伝わってくる。紙のぬくもり、肌触り、めくりやすさ(グリップ感)うんぬん…。シンプルな縦型の冊子と終わらせてしまうのは勿体無い気もするのでここに書いておきます(会場に来たらぜひ触ってめくってみてください)。それと、インタビューのテキストの色ですね。『かたおかもとじ』さんの語りの部分だけ赤とも言えない不思議な温度感を感じる色が付いていて、インタビュアーと『かたおかもとじ』さんの色分けによる境界線になっている。その境界線が時に『西会津の森の妖精』と呼ばれる『かたおかもとじ』さんの個性を浮き彫りにする。あとぼくの勝手な印象ですがこの赤に『方言』のぬくもりを感じてうれしくなります。少し早くて強くて、でもあたたかくてやさしい東北の訛りというか、そういうものをこの赤から感じてますが、きっと気のせいかもしれません。すみません。

『かたおかもとじ』さんが何者であるか、ここで書くのは野暮で、これは読んだ人だけの楽しみになると思います。インタビューを一気に読み終えると、西会津の森の中を ITWST と『かたおかもとじ』さんと一緒に歩いた感覚に。もっと誰かに会いたくなりました。西会津に行きたくなりました。

最後にこの ZINE のルールでもある『24枚の写真』について。フィルムだから撮り直しはきかない。そんな心地のいい緊張感が、インタビューに対する(『かたおかもとじ』さんと向き合う)集中力に変換されているかのよう。写真を数えたらしっかり24枚。その日のムードを伝えるのに1枚として足らない感じがなくて、かといって蛇足的でもない。写真の役割を改めて考えさせられました。偉そうにすみません…。

おしまい

ー Written by 加藤 淳也PARK GALLERY

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エントリー 福島県西会津町

ITWST / グラフィックデザインユニット

Momoe Narazaki と William Shum によるグラフィックデザインユニット。

「西会津町フイルム」は西会津町に住む色々な人々のインタビューシリーズです。35mm フイルムを1本使い切り撮影した24枚の写真を使ってドキュメントしています。第一弾はこの町で生まれ育った農家のおじちゃんでありクリエイターである片岡元治さんです。ー ITWST より


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