saorin 『旅と山と、』 (東京都台東区)

羨ましい。

今回並んだ ZINE を見た時に、もしくは今回並んだ ZINE の制作のプロセスをひとつひとつ見た時に『羨ましい』=『嫉妬』に似た感覚を覚えたのはこの1冊に尽きると言える。デザイン、写真のクオリティはもちろん、ストイックなようでやわらかな雰囲気も残っていて、遊び心やロマンチックな要素も忘れていない。自分が作るんだったらこういう ZINE だったなあと頭をかく。

saorin『旅と山と、』vol.1

この ZINE は、<物語のある旅と山の写真案内サイト『畔の窓』> を紙に落とし込んだ1冊。サイトも紹介しておきます。

ただの旅のガイド、旅の日誌ではなく、想像力を掻き立てる余白のある写真と、同じくポエティクなエピソードが交えて綴られる切り口が魅力的。それがフィクションかノンフィクションかも判断できないその感じもいい。ドキュメントの向こう側に、ドキュメントよりもっとリアリティのある表現がもしあるのであれば、この ZINE こそが、ドキュメント以上のリアリティ表現のように思う。ストイックで繊細な、旅の記録と思ったら大間違い。

ちなみにそんなことを言っておきながらぼくは『旅』が大の苦手。旅に行っても何をしていいのかわからなくなる。有名な観光地で景色を見ても、ものの5秒で満足してしまうし、おいしいものを食べたいって思うけれど、ひとり旅だとビジネスホテルでコンビニで買ったカップラーメンやおにぎりを食べてしまう男。旅先ではなるべく誰も話しかけないでくれと思うし、予定した旅が終わる前に『帰りたくなる』これはもう病気とも言える。つまり、有限を楽しめないのだ。今だけとか、この日だけとか、この時だけというのを楽しめない。どちらかと言えば『毎日同じ景色なのに自然と訪れる変化』とか、同じテンポでリズムを刻んでるのに、心持ちが3拍子と4拍子だったがゆえにずれるとか、そういうのに憧れる。

この ZINE からは『有限』=『今しかない瞬間』を抱きしめる包容力を感じる。ストイックに見えてやわらかいのはその部分だろう。もちろん海外の、あるいは山の頂上の『寛大な』景色がそれを誘発しているけれど、その奥の、圧倒的な『好き』とか、身を委ねている感じがよいのだと思う。

例えば、旅があまり好きじゃないぼくも『ZINE にまとめる』というアウトプット(着地点)があれば、旅をもっと楽しめる気がする。あるいは ZINE を作るという前提で(ZINE にならなくてもいいから)ZINE みたいな視点でカメラや言葉を操って、旅をすればもっとこれからの旅を楽しめるかも。みんなもそう。もしくはこの景色や瞬間は二度と訪れないと、感じることができたら、その衝動を ZINE にしてみたい。

そんなこと言ったらいつだってどこにいたって旅のようなものだしね。いまこの瞬間が大事だってもっと感じたい。毎日を ZINE にしてみたい。

そう思わせてくれる ZINE でした。

山頂で食べるソーセージ入りラーメンおいしそう。

ー Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 東京

saorin

写真企画室ホトリ 室長

浅草橋の写真アトリエギャラリー「写真企画室ホトリ」室長。 “写真を形あるものに残そう” をテーマに、ホトリ写真塾と称した教室・ワークショップの開催、写真公募展など、写真にまつわる様々な企画・活動を行っている。

旅と山の写真案内サイト「畔の窓」( http://mado.fotori.net )をオープンし、そこに掲載しているコラムや写真を WEB だけではなく紙媒体でも作りたいと思い、ZINE という形にしました。ー saorin

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