福田 真也 『FLOPS & LINES - 10 stories about "Good Life" -』 (東京都世田谷区)

一度レビューは置いておいて(ついにレビューを置いた!)

今回の COLLECTIVE 。『ZINE』のあり方について大いに語る時間も機会もたくさんたくさんもらえたし、それを理論的に構築する相手も、感情的に隆起させる相手も幸いいて、でもまだまだ輪郭が掴めずにいる。エキシビジョンも終わったばかりでとてもじゃないけれど整理されていないので、語弊なく言えたらいいけれど、輪郭が掴めない要素を少しだけ分解していく。

例えば、ZINE というメディアのイメージが安価であること(具体例:雑誌は1000円でも買うけれど ZINE は “手作りなのに” もしくは “ひとつひとつ凝っているのに” 1000円じゃ高いと感じるひとがいる)。例えばアートブック未満であること、雑誌未満であること(具体例:主張性が弱まるまたはベクトルが見えづらいためアートの文脈で語られにくい = アートのマーケットに流通しづらい ≒ マス向けの情報メディアとして扱いづらい判断しづらい = 購買層のターゲッティングの必要性はいかに)。さらには作家による価値付け(値段付け)がうまくできていない。その魅力のプレゼンテーションができていない(表紙など特に)。<流行りの> メディアであることも、ZINE の輪郭を暈していると言える。では、逆説的に、

読者層・購買層をターゲッティングして内容をはじめ表紙や編集を考える。値段も赤字が出ないように対価をつける。お求めやすいように値付けする。コアを意識しながらマスに向ける。

これって ZINE ですか? という点。まぁ諸説ありですまだまだ。

同時に語られるのは『自由である』『作りたいという気持ちが溢れている』=『売れなくてもいいから作る』=『とにかく自由』『コミュニケーションに特化した <ツール> である』『安いからいい』『気楽だからいい』『マスじゃなくコアに届くのがいい』『届けたいひとに届けばいい』etc...

こだわって作ったはいいけど誰も読まない。売れない。共感できるマニアックなひとに届いてるから満足&納得できる。在庫が残る → 作る気がなくなる → やらなくなる。負のスパイラルイコール悲しい。

と、ネガポジ反転。ますます ZINE というシルエットを捉えられずにいるのがぼくなんですが(もう少しでキャッチできそうですが)その状況の僕にひとつの答えを提示してくれている気がする ZINE がこれ(レビューに戻ります)

FLOPS & LINES - 10 stories about "Good Life" -

企画編集人でもある福田真也氏が『旅』で出会った10人に『Good Life』をテーマにテキストを集め、編集した1冊。寄稿して編集し、デザインは外注。もはや A5 という判型だけが ZINE であって、立派な『雑誌』だ。ただ一般的な雑誌と大きく違うのは広告やタイアップがないこと。出資者がないこと。

海外で様々な人達と出逢う中で、いろいろな文化や考え方を「ああこれもいいんだな」と受け入れてきました。そんな中で、では自分にとって「いい人生」とか「いい暮らし」って結局のところなんだろうと思い、それではその質問をバラバラのバックグラウンドをもつ色んな人達に聞いてみようと始めたのがこの本です。ー 福田 真也

さまざまな国籍・肩書き・ジャンルのひとたちが考える『いい暮らし』とは。今回、この10人の『考え方』にフォーカスしていくとこのレビューがひたすら長くなってしまうので(長くなってしまうくらいいい ZINE です)ちょっとだけ気になったことだけを書いておきます。

『いい暮らし』は最後の3行に凝縮される。

10人が10人の『Good Life』。どれも共通して最後の3行がグッとくるのが不思議。残り数秒の100% 濃縮還元の喜び。ぜひそこ、見てみてください。

話を戻します。

この本の存在が、今回 ZINE の輪郭を少しだけ明瞭にしていきます。

編集の力量はもちろん、エディトリアルデザインも秀でていて、ブランディングも優れている『FLOPS & LINES - 10 stories about "Good Life" -』。マス向けのメジャー誌との差別化部分をもう一度明記すると、資本主義におけるコスト重視の編集プロセスがない。それ以外はメディアとしては完成に近いと言える。伝えたいことを伝える。そのための手法の取捨選択のストイック。広告主や売り上げに目配せして客寄せパンダに頼ることない雑誌 = つまり雑誌未満ではあるけれど ZINE 以上という印象を受ける。売れない、自由に発信できない、予算だけかけてコモディティ化された情報をばら撒くというマス・メディアに対してのアンチテーゼとは言わないけれど(もちろんいい雑誌もこの世にいっぱいありますし)べ・つ・に、雑誌以上である必要がないこの時代で、この ZINE のあり方はまさに『個』のメディアの大きな可能性と言えると思います。もう一度言います。

雑誌以上である必要なんてないんです。もう。

しかもこの作りで540円!え !?

だいたいの ZINE が家に帰って読み返されることが少ない中で、この『FLOPS & LINES - 10 stories about "Good Life" -』は、あなたが捨てられずに取っておいているお気に入りの『雑誌』のように、時々、呼吸し、あなたのなかに入ってくる1冊かと思います。褒めすぎかな。褒めてないか。

強いて言えばちょっとかっこよすぎるんじゃないでしょうか。

花森安治が『暮しの手帖』の前に『スタイルブック』を作ってたかのような日の出を感じます。こういったテクニックとセンスをもって Less than magazine の状態で雑誌を凌駕する ZINE がいろいろなところから立ち上がるでしょう。東京だけじゃなく。ZINE は従来のメディアの機能を終え、新しいメディアの価値観をつけはじめてる。その1つの流れ、を見た。

褒めすぎかしら。

Written by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

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エントリー 東京都

福田 真也 / SHINYA FUKUDA

企画編集人

高校教師、コーヒー屋などを経て現在はナッツ屋をしながら ZINE をつくっています。


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