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東京ヴェルディ ファンデベロップメント部が目指す姿

ヴェルディカレッジ第8講が6月30日(火)に行われました。今回は、東京ヴェルディ株式会社ファンデべロップメント部より鈴木雄大氏、菊地優斗氏が登壇。鈴木氏から『FD部・ホームタウンについて』、菊地氏から『2019シーズンの施策と2020シーズンの目標について』 語っていただきました。

執筆:メディアプロモーショングループ 梅原崇(2期生)

講師紹介

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鈴木 雄大(すずき ゆうだい)
2015年 東京ヴェルディ株式会社 パートナー営業部入社
2020年 ファンデべロップメント部へ異動
現在は、同部署のシニアディレクター

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菊地 優斗(きくち ゆうと)
2014年 東京大学経済学部 卒業
2014年 株式会社ディー・エヌ・エー 入社
2016年 株式会社アカツキ 入社
2018年 東京ヴェルディ株式会社 出向
ディー・エヌ・エーでは、新規事業、スポーツマーケティングを担当。アカツキでは、ライブエクスペリエンス事業部でマーケティングに従事。東京ヴェルディに出向(ファンデベロップメント部に所属)し、マーケティング支援とビジネスデベロップメントを担当。

ファンデべロップメント部の戦略について

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まず、鈴木氏からファンデベロップメント部(以下FD部)の戦略についてお話がありました。
FD部の戦略は、『ファンの数を増やすこと』と『熱量の高いファンを育成すること』の両立です。ファンの数を増やす施策として、ホームタウン活動や総合クラブ化が挙げられます。

また、ファンの育成とは、1度会場に足を運んでくれたお客様をいかにして2回3回と来てもらえるようにするかということです。そのファンの育成を促す施策として、UX(ユーザーエクスペリエンス)を通じた感動の提供などがあります。
FD部が行った2019年の具体的な施策については、菊地氏のパートでご説明します!

ホームタウンチームの戦略について

次に、ホームタウンチームの活動についてお話がありました。ホームタウン活動の目的、定量的・定性的なゴールは以下の通りです。

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その中でもホームタウン活動における課題について見ていきます。
それは『地域住民から絶対的に愛される存在になっていないこと』です。Jリーグ観戦者調査2019によると、

「Jクラブは、ホームタウンで大きな貢献をしているか?」という調査に対して、リーグ平均4.3 東京ヴェルディ3.9
「Jクラブは、それぞれのホームタウンで重要な役割を果たしているか?」という調査では、リーグ平均4.3 東京ヴェルディ4.1

という、2つともリーグ平均を下回る結果となっています。

この現状を打破するために、これからは行政や地域を主語に考えることが愛されるクラブになるために重要だと、鈴木氏は語ります。例えば、行政が抱える問題に真摯に向き合い、ヴェルディが持つソリューションの中で何か解決するためにお役に立つことはないのか。行政の立場に立って問題を考える必要があるというお話は非常に印象に残っています。

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また、ホームタウンスローガンをBE HAPPY、TOGETHERとしました。このスローガンには、「東京ヴェルディに関わる人々が、ともに豊かになることを意識して活動するために」という想いが込められています。

以上、鈴木氏の講義でした!以下から菊地氏の講義内容です。

Jクラブの事業構造について

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菊地氏から、まずはJクラブの事業構造について説明がありました。クラブ収入にはスポンサー、チケット、グッズなど様々な要素があります。その大原則として、ファンの数が全ての売り上げに関係してきます。よって、ファン数を増やすことは全クラブの目標であると言えます。

そして、まさに現在の東京ヴェルディの課題が『ファン数増加の伸び悩み』です。2度目にJ2に降格した2009シーズンから、平均観客動員数は5,600人で伸びずに横ばいとなっています。この課題に対して、2019年シーズンにどのように戦略を立て施策を行なってきたのかについて、詳しく見ていきます。

バケツの穴を塞ぐ

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ファン数を増やすためにはどのように対策を行えば良いのでしょうか?

菊地氏はファン数を『バケツの中の水』に例えて説明しました。バケツの中にどれだけ水を入れても、バケツに穴が空いていたら水は溜まらない。バケツに水を溜めるには、その穴をどのように塞ぐかを考える必要があります。

これをヴェルディに例えると、いくら新規集客をしてもファンが定着しなければファン数は増えないということです。そこで、2019シーズンはファン数を増やすためのフェーズを集客、体験定着の3つに分けた中の体験、定着に注力しました。つまり、観戦に来ていただいたお客様の『離脱を防ぎ、ファンとして定着させるか』を考えた施策を打ったのです。

では、どのようにして『バケツの穴』を塞いでいくのか?
まずは、また来たいと思ってもらうことが大切です。しかし、それだけではリピートはあまり見込めません。レストランに例えると、「ここのレストラン美味しかったから、また来たい!」と思ったことはたくさんあっても、実際に再度来店したことはそう多くないのではないでしょうか。

つまり、また来たいと思ってもらうことに加えて、また来るきっかけを与えることがバケツの穴を塞ぐためには必要なのです。

この『また来たいと思ってもらうこと』と『また来るきっかけを与えること』の2つがファン数を増やすために重要になります。

①『また来たいと思ってもらう』

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また来たいと思ってもらうために必要なのは、スタジアムUX(観戦の満足度)を上げることです。スタジアムUXを因数分解すると、感動体験−ストレスとなります。また、感動体験もさらに2つに分解できて、『試合の感動体験』と『試合以外の感動体験』に分けられます。

・試合の感動体験

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『試合の感動体験』について詳しく見ていきます。試合の感動体験とは、喜びや嬉しさだけではありません。チームが負けて悲しんだり悔しがったりことも、感動体験になります。

試合の感動体験を高めるために、菊地氏は『共感性』と『参加性』の2つの要素が重要であると定義しています。

『共感性』とはチームに感情移入することをいい、『参加性』とは試合に没入して自分がその空間の一部であると感じる度合をいいます。2019シーズンでは『初回観戦者でも楽しめるサッカー観戦体験の提供』をテーマに、共感していただくためにはチームや選手のことを知っていただくことが前提となるので、スタメンボードのような選手を知るきっかけとなる装飾や、試合の見どころをお伝えするマッチプレビューの放送や試合中の副音声放送などを行いました。また参加性を高める施策としてはチャント(応援歌)の歌詞をビジョンへ表示すること、ハリセンなどの応援グッズ配布、手拍手を誘発するようなBGMを流すことによる応援参加へのサポートを行いました。

②また来るきっかけを与えるための施策

また来るきっかけを与えるための施策は、タッチポイントを確保することで直接アプローチできるファンの数を増やすことです。タッチポイントとして、メールとSNSの2つが挙げられます。これからはアプローチ強化のため、メールやSNSの運用を改善してコミュニケーションの最適化を図ることやライト層向けのキャンペーンを打つことを検討しています。

FD部の2020シーズンの方針について

2019シーズンは土台作りの1年でしたが、注力して行ったキッズパスの登録者数は昨年度の約4倍、JID(JリーグID)の登録者数も2倍近く増えました。2019シーズンの感想として「サッカービジネスとかスポーツビジネスだからといって特別なことはあまりなく、ビジネスとしてやるべきことをしっかりやれば数字は伸びる」というのが菊地さんの初感だと語りました。

2019シーズンは『体験、定着』に注力しましたが2020シーズンは『集客』に注力していきます。そして、『BEYOND7000』を2020シーズンの目標に掲げて、観客動員数平均7000人を目指します。以下の画像は過去10年間達成していない平均7000人を達成するために、各項目で達成すべき指標です。

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東京ヴェルディ公式WEBサイト ニュース リリース参照: https://www.verdy.co.jp/news/9021

また、それぞれの顧客フェーズに応じた基本戦略をFD部で設定して、BEYOND7000の達成を目指します。

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次回の課題について

本講義の最後に、次週までの課題が課されました。内容は『STP、4Pのフレームワークを活用して、集客施策を考える』というものです。課題を行うにあたって、マーケティングの基本概念であるSTP分析と4P分析について、菊地氏から説明がありました。

STP分析
Segmentation(市場細分化)Targeting(狙う市場を決定)Positioning(自社の立ち位置の明確化)という3つのフェーズを踏み、市場の細分化を行って、自社と競合他社の市場の立ち位置を明確化するためのマーケティングの手法です。
4P分析
Product (商品)Price(価格) Place(流通) Promotion(プロモーション)という4つを考えることで、価値を届ける要素の組み合わせを決めるためのマーケティングの手法です。

ヴェルディが実施したキッズパークの取り組みもこれらの手法で考えられていて、現場でも使われる非常に重要な考え方です。次週までにどのような施策が出てくるのか楽しみです。

まとめ

以上、鈴木氏と菊地氏に講義していただきました。

鈴木氏の講義では、FD部やホームタウンについて理解を深めることができました。個人的にはこれからは行政主語でホームタウン活動を行っていくという言葉が印象に残っています。

菊地氏の講義では、実際のFD部の取り組みについてお聞きしました。特に、ファン数を増やすための施策を学術的視点と現場的視点の両面からの講義をしていただきました。私は経営学部に所属していて、マーケティングなどを座学で学んでいます。しかし、現場ではより深く1つ1つの要素を分解していき、徹底的に考え抜いて施策を打っていました。座学ではない現場のマーケティングをお話しいただき、非常に学ぶ事がありました。

次週9講は、鈴木氏と菊地氏に再度お越しいただき、菊地氏から課せられたSTP、4Pのフレームワークを活用して、集客施策を考えるという課題の発表&フィードバックです。


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