病人と病床

ゆっくり休める時期が私にもやっと来て、初めて気付き、実感する。

私は生まれつきとは言うものの、今の病気が確定診断されて27年になる。
今まで自分が病人だと思って居なかった。
病床に居る、という状態や状況がどういうものなのか分からなかった。
それだけ人生や生活に追われて、自覚する暇もなく、必死で生きてきたという事だ。

この3年程、忙しさの中にあっても度々寝込んでいる。
前に寝込んでいた状態と相変わらずだと思って居たが、何か違う気がした。
何も急を要する用事がない日は、努めて身体を休める努力をしていたら、ふと気付いた。

『横になるのが、こんなに楽だと感じるなんて』

布団の中が気持ちいいと日中から一日中感じた。
以前は寝込むほど具合が悪くならなければ、布団の中にもベッドの上にも居なかった。
だから、今のこの感覚こそが真実なんだと実感した。
健康なら一日中、布団の中で横になんてなって居られない。
健康なら一日中、何もしないで過ごしてなんか居られない。

動けない
そう分かって居たけれど、動いていたんだ。
やれる事を1日一つはやろう。
そう心掛けて居たけれど、その気力も力もなかったんだ。

自覚していなかった事が項を然していたのかもしれないけれど、随分と酷使して来たんだな。
そう感じる。
今、この状態で以前のように用を済ませられるだろうか?考える。
無理だ、出来ない。
はっきりと分かる。

今更になって、病人って、こういう人の事を言うのか、と知る。
病床に居て療養している(静養)というのが、こういう状態なのだ、と知る。

ずっと寝ていたい。
ずっと目覚めたくない。
出来ることなら、目が覚めないで居られたら一番身体が楽なのに…
こんな本音を実感して、初めて自覚した。

今までは、ただ思って居ただけだった。
今は、心からそう思う。

何もしたくないんじゃなくて、
何も出来ないから、
ただ起きても疲れきって、1日が痛みと疲労の苦痛だけで終わってしまうから、
眠っていたい。


病人といっても、もう再起不可能な重症患者ですよ。
そんな医者の説明を今更理解した。
これが”重症”状態か…
悲しさ、寂しさ、辛さ
そんなことを考える余裕もない。

ただ、起きているのが苦しい。
寝ていても苦しい。

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