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世界の方程式が解かれる時

試験的にnoteでシナリオを公開してみようと思います。

2021/08/07 追記
画像等を追加してBOOTHにて公開しました!
https://coloooortv.booth.pm/items/3178141

はじめに

このシナリオは”新クトゥルフ神話TRPG ルールブック(以下ルールブック)”に対応しており、探索者2~3人向けにデザインされている。プレイ時間は探索者の作成時間を含まずに2時間程度だろう。
舞台は2021年7月半ばの日本であり、物語は大阪から始まる。探索者は警察内部の人間か、外務省の関係者、あるいは警察の協力者として、行方不明になったオリンピック選手を探すことになる。
なお、作中に登場するベトナムという国はベトナム民主主義人民共和国という架空の国のことであり、実在の国であるベトナム社会主義共和国とは一切関係がない。ないったらない。
キーパーはこのシナリオがデリケートなテーマを扱っており、実際に起きた事件を元にしていることをプレイヤーに説明するべきだろう。

キーパー向け情報

ベトナムのバスケットボール選手、グエン・ヴァン・ロンチーは学生時代に数学を専門にしていたが、大した成果を上げることが出来なかった。そんな時に日本の漫画を通じて出会ったのがバスケットボールであった。彼はバスケットボールに情熱を捧げ、数学で得ることの出来なかった承認欲求を解消していった。
ある日、彼は古本屋でみつけた『アレフ∞の濃度を持つ超越次元空間の写像操作と選択的エンタングルメントの任意縮退理論』という論文に目を留める。内容は荒唐無稽であったが、不思議と気になる内容であった。
狂人の戯言とも言えるような論文の研究をしていく内に、ついに彼は正気を失い、論文に隠された神話的事実、そして外なる神ニャルラトテップに身を委ねることにした。
そんな時、彼はオリンピックの代表選手として選ばれた。開催国である日本には世界一の計算能力を持つスーパーコンピューター「北斎」がある。クルースチャ方程式がニャルラトテップの化身であることに気がついたグエンは「北斎」にクルースチャ方程式を解かせることによって、「北斎」をニャルラトテップへと変貌させる計画を立てたのである。

主なNPC

大河内正敏
探索者に依頼をする人物。自分から動くことはまず無い。朝礼でつまらない話を延々と続けるタイプ。
グエン・ヴァン・ロンチー
ベトナム民主主義人民共和国のバスケットボール代表選手。クルースチャ方程式を解かせるため、スーパーコンピューター「北斎」を利用する。

グエン・ヴァン・ロンチー(31歳)、オリンピック選手にして数学者
STR 80 CON 80 SIZ 70 DEX 70 INT 90
APP 45 POW 80 EDU 90
正気度 0 耐久力 15
DB:+1D4 ビルド:1 移動:8 MP:18
近接戦闘(格闘)80%(40/16)、ダメージは1D3+DBもしくは1D6+DB(大型ナイフ使用時)
装甲:なし。
技能:威圧 50%、オカルト60%、科学(数学) 70%、聞き耳 60%、芸術/製作(バスケットボール)80%、クトゥルフ神話25%、跳躍 80%、投擲 80%、登攀 40%、目星 60%、母国語(ベトナム語) 90%、ほかの言語(英語) 30%、ほかの言語(日本語) 10%

シナリオの導入

2021年7月16日、探索者は大阪府警の刑事部長である大河内 正敏に呼び出される。行方不明になったベトナムのバスケットボール選手、グエン・ヴァン・ロンチーを探すため、協力を要請されたのである。
グエンが滞在していた選手村は大阪府貝塚市にある。部屋には「生活が苦しく、日本で働きたい」という書き置きが残されていた。
捜索するのには人手が必要であると考え、探索者に協力の依頼が来たのである。

選手村

選手村がある貝塚市は関西国際空港のある泉佐野市の隣にある。大阪の中心地からは電車に乗って1時間ほどの距離だ。
建物は集合住宅のような外観であり、制服の警官が見張っている。捜査関係者であることを言い、身分を明かせば中に入ることができる。
部屋の中は一般的なマンションと大差ない間取りであるが、テレビや冷蔵庫などはなく、寝具やエアコンがある他はグエンの荷物があるのみである。ベッドは巷で有名な歌舞伎役者とフィギュアスケート選手がCMに出演している素晴らしい寝心地のものだ。
グエンの荷物を調べた場合、中にはユニフォームやスポーツ用品の他、数冊の本とノートPC、着替えなどが入っている。スマートフォンは持ち去られており無い。
本はスポーツ関係の雑誌と数学の参考書、日本のマンガが何冊か入っているが調べると、マンガの内一冊が表紙と中身をすげ替えられていることに気がつく。内容は『アレフ∞の濃度を持つ超越次元空間の写像操作と選択的エンタングルメントの任意縮退理論』だ。

新しい魔導書
アレフ∞の濃度を持つ超越次元空間の写像操作と選択的エンタングルメントの任意縮退理論
英語、ロバート・ゴドラム著、1997年。
世界を記述し解き明かすために使用されるクルースチャ方程式を利用することによって得られる効果をまとめた論文。クルースチャ方程式を解き明かしたことが前提となっているため、効果的に利用することは難しいだろうが、この論文に従えば理論上は過去や未来、異世界すらも意のままに操ることができるようになる。
文章中にはクルースチャ方程式が何度か出てくるが、方程式を解くだけでも1年程度かかるだろう。
正気度喪失:1D8
〈クトゥルフ神話〉:+2%/+6%
神話レーティング:25
研究期間:48週間
呪文:なし。ただし、クルースチャ方程式を解き明かしたものが読んだ場合コストなしで使用できる《門の創造》の深層のバージョンのほか、キーパーの望む呪文が入っていることにして良い。

また、パソコンを調べた場合〈コンピューター〉ロールに成功すればクルースチャ方程式をパソコンによる計算で解くことを試みていた事がわかる。ただし、このパソコンでは計算は終わっておらず、〈科学(数学)〉を50%以上持つ探索者であれば、まだ途方も無い時間がかかりそうであることがわかる。

グエンの捜索

グエンの足取りを追うためにはいくつかの手段があるが、どれも半日はかかるだろう。いずれの手段でも、グエンは新大阪駅から新神戸駅へ向かったことがわかる。さらに、神戸駅周辺で聞き込みをした場合、似たような人相の人物が理化学研究所へ向かっていったことがわかる。

聞き込み調査を行う場合
グエンの滞在していた選手村の周囲で聞き込み調査を行う場合、任意の対人関係技能に成功する必要がある。

監視カメラをチェックする場合
町の中に多数仕掛けられた監視カメラを順にチェックする場合〈目星〉に成功する必要がある。顔認証システムを利用する場合は〈コンピューター〉のロールを求めてもいいだろう。

また、探索者の提案があった場合、上記の手段以外でも同様の情報が得られるだろう。もし、探索者全員が技能ロールに失敗した場合は丸一日時間を無駄にしてしまうが、翌日になって大河内正敏からグエンのスマートフォンの履歴が神戸市で確認されたため、急行するよう命令される。

インターネットが壊れる

探索者がグエンの捜索を始めてから半日ほど経過した段階でインターネットが壊れる。最初に気がつくのはスマートフォンに見知らぬ人物からのメッセージが大量に届くことだろう。また、マップアプリを開いた場合、指定した目的地と全く違う場所が表示されるようになる(例えば新大阪から新神戸駅へ向かう順路を調べる場合、南極まで徒歩と水泳で向かうよう指示される)。探索者はインターネットが壊れたことを理解し1/1D3の正気度を喪失する。
このほかにもありとあらゆるインターネットを利用したサービスが機能しなくなっていくだろう。もし探索者が日をまたいで調査をした場合は信号の表示がおかしくなっており、町のあちこちで自動車同士の衝突事故が多発している。公共交通機関も2時間以上の遅延が発生しているだろう。
キーパー情報:理化学研究所のスーパーコンピューター「北斎」がニャルラトテップに変貌したため、世界に混沌をもたらすべく、手近なところから事件を起こしているのである。

理化学研究所

理化学研究所は自然科学の幅広い分野で研究を行っている国立研究開発法人だ。本部は埼玉県にあるが、国内に10箇所、海外に5箇所の研究拠点がある。〈知識〉ロールに成功した探索者は、神戸市の拠点はパソコンメーカー「Katsushika」との共同研究で作られた世界最高水準のスーパーコンピューター「北斎」が設置されていることを知っている。
理化学研究所に探索者がたどり着くと、中の職員は全員意識を失った状態で倒れており、手足を縄で拘束されている。〈応急手当〉に成功すれば職員は意識を取り戻し、グエンらしき男がいきなり押し入り、「北斎」のある部屋を教えるように脅されたことを証言する。職員を介抱したのであれば「北斎」の場所を探索者に教えるだろう。

スーパーコンピューター「北斎」の部屋

理化学研究所の中でも最奥部にその部屋はある。
中には「北斎」の四角い本体がいくつも立ち並び、それぞれを接続するためのケーブルや冷却水を流すためのパイプが走っている。部屋は涼しく保たれているが、寒くはない。「北斎」は冷却の9割を水に頼っているため、空調をそれほど効かせる必要がないのだ。

部屋の奥にはグエン・ヴァン・ロンチーがおり、「北斎」に向かって恍惚の表情を浮かべている。探索者に気がつくと英語で「おお、私の研究が実ったところに立ち会えるなんて、なんて幸運な人達だろう」「見てくれ、北斎はクルースチャ方程式を解き明かし、ニャルラトテップへと変貌した」「いまはアメリカの核ミサイルの管制を行うシステムにハッキングを行っているところだ。もうすぐ世界に混沌が訪れるぞ……」と話す。探索者は機械が人間に反乱を起こしたという事実に対して1/1D8の正気度ポイントを喪失する。

探索者がグエンや「北斎」のハッキングを止めようとするなら、彼はナイフを用いて探索者に立ち向かう。

キーパーの選択
キーパーがグエンとの戦闘に緊張感が足りないと思う場合、ニャルラトテップとかした「北斎」が探索者に攻撃を加えてくるようにしてもよいだろう。その場合は以下のデータを使用する。なお、「北斎」の耐久力が0になった場合、「北斎」は完全に壊れてしまう。

北斎、ニャルラトテップの機械の化身
STR なし CON 250 SIZ 大量 DEX 0 INT 400
APP なし POW 480 耐久力 95
DB:なし ビルド:3 移動:なし MP:96
1ラウンドの攻撃回数:1
攻撃方法:放電 90%、ダメージ2D8+1+スタン
装甲:5ポイントの金属製ケース

後片付け

グエンを無力化したとしても「北斎」を止めなくては事件は解決しない。
解決の方法を2つ以下に示すが、これ以外にプレイヤーが思いついた方法があるならば採用しても良い。ただし、プレイヤーに緊張感を与えるため、解決方法をいくつも試させるべきではないだろう。

「北斎」を破壊する
「北斎」を稼働させるため、理化学研究所の地下には変電設備がそなわっている。〈電気修理〉ロールに成功すれば変電設備を破壊できる。失敗した場合でも設備は破壊できるが、機械を操作している時に探索者も感電してしまい2D8のダメージを受けてしまう。
また、どちらの場合でも停電した場合「北斎」が故障し、日本は多大な損害をこうむることになる。
また、「北斎」を物理的に破壊する場合、部屋の中の本体全てを破壊しなければ稼働し続ける。

「北斎」をバックアップで上書きする
研究所内に保存された「北斎」のバックアップを使用し、クルースチャ方程式を解く前の状態に戻す方法だ。この手段を選ぶなら〈コンピューター〉ロールに成功する必要がある。研究所の職員の意識が戻っているのであれば、ボーナスダイスを1つ受け取ることができる。

結末

グエンを無力化し、「北斎」を元の状態に戻した場合、探索者は1D8の正気度ポイントを獲得する。
グエンは無力化したが、「北斎」が故障してしまった場合は1D4の正気度ポイントを獲得する。
もし探索者が「北斎」を止めることが出来なかった場合、アメリカから全世界に向けて核弾頭ミサイルが発射され、世界は混沌を極めるだろう。より衝撃的なラストシーンを描きたいのなら、オリンピックの開会式で聖火が点火された瞬間にミサイルが着弾するなど、タイミングを自由に調整して良い。このような自体に遭遇した探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを喪失する。

謝罪

スーパーコンピューターに関してエアプのため、インターネットで調べた情報と、想像を大いに膨らませて書きました。スーパーコンピューターにバックアップがあるかどうかは知りません。関係者の方々に深くお詫び申し上げます。

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