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インディアン・シネマ・ウィーク・リターンズ

ICWリターンズが21日から始まりました。
インド映画を映画館でしかも日本語字幕でたくさん見られる貴重なチャンスです。

「インドの映画にちょっと興味あるけど、何から見たらいいかよくわからないなあ…」と思っている人に最適のイベントです。

なぜなら今回は、特に面白い作品が多いということと、日本語字幕で見られるチャンスは真剣に貴重ということが重要な点です。

今回のICWリターンズには、
・神が結び合わせた二人
・アルヴィ
・マヘーシュの復讐
・ならず者たち
・銃弾の饗宴 ラームとリーラー
・マジック
・ピンク
・今日、昨日、明日
・リンガー
がかかります。

私がおすすめしたいのは「ならず者たち」と、「銃弾の饗宴」です。
二本ともものすごいクオリティの映画です。
個人的にはこの2本は抜きん出てすごい傑作だと感じました。

・男の友情にしびれる!「ならず者たち」

バングラデシュ独立戦争で、インド系難民となったふたりの少年ビクラムとバラ…ふたりは助け合いながら石炭泥棒や闇商売で必死に生き抜き、やがてカルカッタの闇市場を牛耳るギャングの長になった。

裏社会の長とはいえ、学校や病院を建設し、貧民の熱い支持を受け、もはや恐れるものなどない二人の前にクラブダンサーの美女ナンディタが現れます。そして二人同時に彼女に恋してしまいます。

さらに、力を持ちすぎた二人を逮捕しようと凄腕の刑事サティヤジートも立ちはだかります。

ビクラムとバラの恋と友情と、築き上げてきたものの運命の行方は…?という物語です。

これは本当にいい映画です。人生の映画10本選ぶなら?というとき私は5本以内にこれを絶対入れたい。
あ〜、なんか忘れてたけど、映画って本来こういうものだったな〜!と思うことうけあいです。

ビクラム役のランヴィール・シンとバラ役のアルジュン・カプールのもはや笑わせに来ているのかと思う程のものすごい肉体美、子役のうますぎる演技、ナンディタ役のプリヤンカ・チョープラのセクシーでタフで知性と気骨のある女性像の素晴らしさ、サティヤジートのブレない非情さ有能さを完璧に演じたイルファン・カーンという配役も素晴らしいです。

めちゃくちゃ面白いので、少しでも興味がある方はぜひとも見てほしい!

キネカ大森で12/28の18:30、12/29の12:00、12/30の15:20と、東京ではまだ3回見られます。

主題歌PVで筋肉の照りをご覧ください!


・映像と音楽、物語の美の極地にただ立ちつくす…「銃弾の饗宴 ラームとリーラー」

美しい映画を見たことがあるか?と問われれば、かつても私は「ある」と答えたと思う……ところが「銃弾の饗宴」の美しさを知ってしまい、それまで心に留めておいた美しい映画のことを何も思い出せなくなった……これは本当に珠玉の、美の暴力といえる映画です。
すべてのカットが、すべての音楽が、俳優の気迫が、衣装が、ロケ地やセットが、詩的なセリフの数々がそしてストーリーが…スクリーンやスピーカーからこちらに差し出されるそのすべてが暴力的な美しさを構築しながら心を滅多打ちにしてきます。

グジャラートの砂漠にある武器商人の犯罪都市に、ラジャーリ家とサネーラ家という2つのマフィアファミリーがあった。
両家はこの地で500年前から対立し続けており、銃撃戦は日常茶飯事、敵の子供を狙って銃を撃っても恥じることがないほど、憎しみが高まっていた。

ラジャーリ家の次男坊ラームは一族では変わり者で、愛と平和が信条。立場も気楽なものだし、何しろ子供の頃の不始末のせいで12年街から離れていたので、争いを好まない。ハヌマーン通りで踊り歌っては女の子にモテるという暮らしをしている。軟弱かというとそんなことはなく、無駄な殺しをさせないために実弾飛び交う喧嘩の中に飛び込んで仲裁もする。女好きなところはあるが腕っぷしもある気持ちのいい若者です。

サネーラ家は女ドンが仕切るファミリーで、家業はゆすり、殺人、武器の密輸……年頃の娘リーラーの婿選びに忙しい。リーラーは炎のように気性が激しいが絶世の美人。家の繁栄のコマとして、扱いやすい在外インド人のおとなしくつまらなそうな男と結婚させられるのが嫌でたまらない。

ラームは自分の縄張りの女たちに飽きていて、ホーリー祭の日に、いたずら心からサネーラ家に潜入してナンパしようと計画する。
うまく潜入したラームの前に、輝くばかりの溌剌とした美しさを振りまきながら、リーラーが色粉煙る広場に駆け込んできたとき、二人が交互に構えた銀のピストルから恋の弾丸が心臓に命中したのであった……!

「銃弾の饗宴」は、ロミオとジュリエットを下敷きに翻案された物語です。

二人が家のしきたりに縛られつつ愛を貫こうとするところはロミオとジュリエットのとおりなのですが、架空の犯罪都市のマフィアの両家という荒っぽい要素でひねりを加えたところに設定のうまさがあります。

実在しそうでしない危険な街をありありと作り上げたところがまず素晴らしい。それもグジャラートの刺繍をこれでもかと施した衣装を名もなき群衆までもみなまとっていて、すみからすみまで本当にきれい。画面が常に美しすぎて視力回復しそうです。

二人は翻弄される無力な恋人から、後半、武力と権力を持ち、現実と対峙する存在となって私達の前で更に複雑な愛と憎しみの物語を展開します。
ただで終わらせないところがさすがインドの脚本だなあと感心します。粘り強く、確実に納得できる答えを出して、私達の前に提示するストーリーの強さも美しい。

ラーム役はならず者たちでも主役を演じたランヴィール、リーラー役はクールな美貌と卓越した演技力、ダンスのうまさを兼ね備えたディーピカー・パードゥコーンです。
余談ですが、二人はこの映画で出会い、この秋に結婚しました。私は二人とも大好きなので本当に泣くほど嬉しかったです。お幸せに!

東京ではあと一回、見られるチャンスがあります。
12/29の18:45、こちらもキネカ大森です。

※この記事を投稿した数時間後、キネカ大森様のツイッターにて年始の追加上映が決まったというお知らせがありました!
当日券のみ、自由席で、2019年1/4、1/6〜1/10の15:30と、1/5の14:15だそうです!こいつは春から縁起がいいや!

不穏な予感をはらみながらも美しいダンスシーン


熱を入れてつい語ってしまいましたが、なぜどうしても見てほしいのかというと、広く多くの人に見てほしい傑作なのに、日本語版のDVDはこの世に存在しないからです。

通販で英語版やドイツ語版などは買うことができます。
しかし、日本語訳がついているものは市場のどこにもありません。販売されているDVDはなし、配信もなし、当然レンタルもありません。
いま映画館でかかっているものだけです。

インドの映画の良さが広く伝わり、邦画や欧米の映画のように一般上映し、全国の映画館でかかり、きちんとした翻訳のついたDVDが一刻も早く出るようになったらいいのになあと毎日思っています。

というわけで、面白いもの、圧倒的なものを見たいという望みを満足させるであろう2本がただ今公開中ですので、インド映画を見ようかなという物見高い人、退屈でたまらない人、興味がちょっとでもある人はこの機会にぜひ見てみてください。

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