韓国フォークソング「바람이 불어오는 곳(風が吹いてくるところ)」

1994年 6月 25日に発売された김광석(金光石)氏の4番目のアルバムに収録された「바람이 불어오는 곳(風が吹いてくるところ)」、散歩途中にプレイリストから流れてきて久しぶりに聞きました。
風が木々のこずえを揺らす初夏の風景と歌が見事にマッチし、しばし聞き入ってしまいました。家に戻りギターコードと歌詞を検索してみると日本語訳にこれというものが見当たらず、自分なりの解釈で翻訳してみました。

김광석(金光石)氏は韓国では言わずと知れたフォークソング歌手ですが、日本での知名度はさて、どうでしょう。たくさんの作品を残し、ソロデビュー7年目の1996年に31歳の若さで亡くなりました。彼のことが日本であまり知られていないのは残念です。私は昔、韓国に留学したことがあり、その時に興味本位で延世大学のフォークソングサークルに出入りしていたのですが、その時に김광석(金光石)氏の歌がライブで歌われるのを聞いてその存在を知りました。多くの若者に愛され支持されていたようです。韓国のフォークソングといえば、私の中では김광석(金光石)と記憶に刻まれました。どの曲も親しみやすく感じました。この曲は作詞、作曲、歌もすべて김광석(金光石)氏が一人でこなしたそうですが、軽快なリズムとさわやかな風のように流れるメロディーが初夏の風に吹かれながら聞くのにぴったりな曲だと思いましたので紹介します。

歌詞は夢に向かう自分の姿を歌詞に投影した内容かなと一見そう見えましたが、タイトルでもある「風が吹いてくるところ」というフレーズが歌詞の中で繰り返されますが、ある韓国人の方がネット上で、「風が吹いてくるところ」とは「自由が戻ってくる場所」、「君」とは「過去の弾圧を受けていた時代」、「期待も不安もあるけれど」の部分は「自由に付随する責任と期待」を意味するという解釈もあると紹介されていました。「夢見た道」、「新しい夢」、「水平線の向こう」、「陽ざしが眩しいあの場所」、「陽ざしのほほ笑むあの場所」という一連のフレーズから、憧れと期待を胸に明るく輝かしい未来に向かって進もうというメッセージが読み取れます。歌詞の捉え方、解釈というものは聞く人に委ねられるものですし、歌詞の背景についての解釈が正しいかどうかというのはそれほど重要ではないかもしれません。

ウィキペディアによると金光石氏は「民衆歌謡が持つ社会的意識から、大衆歌謡の感性や洞察まで、それぞれの本質を音楽に昇華して、当時の若者たちに人生を観照する余裕と勇気を与えた」とあります。当時の若者に大きな影響を与えた歌手だったことが分かります。内に秘めた熱い情熱を詩的な歌詞に託し、ギターのリズミカルな旋律に乗せて軽やかに澄んだ声で切なげに歌う彼の姿は、今見ると儚げで美しいと感じます。ほかにもたくさんの良い曲を残しているので興味のある方はぜひ聞いてみてください。

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ちなみにこの曲が発表された1994年はソウル市の聖水大橋の崩落事故が起きた年です。この事件を題材にした「ハチドリ」という、2018年に公開されたキム・ボラ監督の長編映画がありますが、この作品が監督デビュー作だそうです。第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション14プラス部門インターナショナル審査員賞グランプリ受賞作を受賞したそうですが、日本では2020年6月20日に公開され、ネットフリックスでも公開していますし、私も先日、見たのですが、とても美しい映画だと思いましたので、興味のある方はぜひ見ていただきたいです。
以下に歌の内容を独自の解釈で翻訳してみました。

「바람이 불어오는 곳(風が吹いてくるところ)」 
                  作詞、作曲、歌:김광석(金光石)

(1番)
바람이 불어오는 곳 그곳으로 가네   風の吹いてくるあの場所へ行こう
그대의 머릿결 같은 나무 아래로     君の髪のようにそよぐ木陰へ
덜컹이는 기차에 기대어       ガタガタ走る汽車に揺られながら
너에게 편지를 쓴다          僕は君への手紙を書く
꿈에 보았던 길 그 길에 서 있네     夢見た道に今、僕は立っている

(2番)
설레임과 두려움으로 불안한 행복이지만   期待も不安もあるけれど
우리가 느끼며 바라볼 하늘과 사람들   僕らの気持ちに変わりはない
힘겨운 날들도 있지만        辛い日々もあるけど
새로운 꿈들을 위해             新しい夢へ向かって進もう
바람이 불어오는 곳 그곳으로 가네    風の吹いてくるあの場所へ行こう

(3番)
햇살이 눈부신 곳 그곳으로 가네    陽ざしが眩しいあの場所へ行こう
바람에 내 몸 맡기고 그곳으로 가네     風に身を任せ さあ行こう
출렁이는 파도에 흔들려도         波に揺さぶられても
수평선을 바라보며            水平線の彼方を目指し
햇살이 웃고 있는 곳 그곳으로 가네   陽ざしのほほ笑むあの場所へ行こう

(4番)
나뭇잎이 손짓하는 곳 그곳으로 가네  木の葉が呼んでるあの場所へ行こう
휘파람 불며 걷다가 너를 생각해     口笛を吹きながら歩けば君を想う
너의 목소리가 그리워도        君の声が恋しくっても
뒤돌아 볼 수는 없지          もう振り向きはしない
바람이 불어오는 곳 그곳으로 가네    風の吹いてくるあの場所へ行こう

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