結婚して１０年になる夫との初めてのデートは、夫が28歳になったばかり、1歳年上の私に追いついた秋の遠足だった。
もう何年も一緒に仕事をしてきた同僚同士、仲は良かったものの特に恋愛関係に発展しそうな気配もなかったころのこと。
ある日、職場でのお喋りの延長で「今週末は行楽日和だね。もう紅葉始まってるかな？」なんて話をしていて「秋の遠足、行ってみるか！」と冗談半分で話がまとまった。遠足といっても、私は早朝待ち合わせをして、車でやってきた夫の車に乗るだけ。行先も知らず、何をしに行くかも知らず…

到着した先は群馬県、インターを降りるといきなりスーパーで食材を購入。何がなんだか分からない私は、ただ付いていくだけ。
そしていきなり軍手を渡されて「さあ、栗、拾おう！」と言われて栗拾い。
拾った栗をその場で栗ご飯に。（飯ごう炊飯！）
スーパーで買い込んだ食材で、夫が鮭ときのこのホイル焼きや、焼きリンゴを作ってくれた。
飯ごう炊飯なんて何十年ぶりだろう？という驚きとワクワク感、山の中の非日常感、そして一緒に何かをするという工程を経て、今まで以上に気を許せる相手になったせいか、ドライブがてら立ち寄った日帰り温泉ではメイクも落としてすっきりスッピンを晒すまでに。
この遠足、純粋にとても楽しかった。私は身一つで何も考えずに付いていっただけ。そしたら驚きと、楽しさと、美味しさと、清々しさが待っていた。

それから数か月後、夫が転職を機に退職して同僚ではなくなる時、結婚を前提に付き合ってほしいと言われて、今に至る。
もう夫とはそれから十数年、色々とデートは重ねたが、一番鮮烈に覚えているのはやはりこの秋の遠足、初デート。