現代に蘇ったAKIRA【天国大魔境】を今すぐ読むべし!

石黒正数

主な著書「それでも町は廻っている」
日常系ながら少しだけ不思議な世界を当たり前に描き、時系列をバラバラにしたトリックで漫画自体をサスペンス化したかのような日本漫画史に残る傑作。

前作それでも町は廻っているを読んだでしょうか?まだ読んでいない?それは勿体無い。あれほどまでに心に刺さるカタルシスを知らないとは、あまりにもったいのない人生ではないでしょうか。見下す様な言い方で申し訳ありません、しかしそれほどまでに価値がある作品です。日本文学で言うのであればあたかも「イニシエーションラブ」の様にラブコメかと思っていたらいつのまにか本格ミステリーの世界に引き込まれているかの様な感覚。あの読後感は唯一無二でしょう。
え、イニシエーションラブを読んでない?じゃあもうこのnote閉じて本屋に駆け出してほしいくらいです。

石黒正数大本命、天国大魔境!

彼の漫画のアイディアのルーツはその深く混沌とした作品群の中と石黒先生のオリジナリティやパーソナルな体験が元になっていると考えられる。よって何が彼を作っているかといえば彼自身ということになる。
しかしイラストに関しては一目見たときに彼が影響を受けた作品がわかった。

AKIRAの作者、大友克洋である。

特にそれ町のタイムトラベラーの話に出てくる未来人なんかもうほとんど大友ワールドである。作品の世界観もその話の中には凝縮されている。

このことに関してはのちに調べてみると「私にとって父親が藤子F不二雄さんで、母親が大友克洋」と語っている様に青春時代の多感な時期にこの二人の漫画に影響を受けていたことがわかる。

なるほど、確かにそれ町の話の落とし方はドラえもんだ。これは調べて見て納得した。

ではAKIRAとドラえもんの共通項は一体なんだろうか?かたやセカイ系の走りであり不良少年が世界と関わっていく物語、かたや未来から猫型ロボットがやってくるメッセージ性の強いコメディ。少し考えれば誰にでもわかる、その共通項は【近未来SF】と言うことだ。

どちらも僕たちが生きている世界の延長線上にあるリアルな世界を題材に少し不思議な世界を描いている。

それ町はあくまでも“丸子町商店街の周りをめぐるいわゆる日常系”、その中にエッセンスとしてのSFが見え隠れしているに過ぎない。(時を巻き戻すハンマーの話とか、嵐をなくす代わりに自分の存在を他者が忘れるスイッチとか)どちらかといえばドラえもんに近い作品だったと考えられる。

しかし今回の天国大魔境はさながら大友克洋、そこに石黒先生のミステリー要素と一見繋がらない二つのストーリーから始まる期待を煽る演出が重なり壮大な物語の序章であることを想起させる。今年のマンガ大賞総なめすること請け負いなスタートダッシュである。

と、以上が僕が天国大魔境を大本命だと思う理由です。以下は3話までの感想なので、ネタバレ注意です。

3話までの興奮する感想

さて今回の作品にも前作の「時系列シャッフル」ギミックの様なあっと驚く仕組みがあると予感させる1話、2話となっている。

1話では施設で何不自由なく暮らす少年少女が描かれている。明記はされていないが以上に運動能力が高い子供や第六感が非常に鋭い少女、など明らかに特別な少年少女がロボットによって管理されている。
世界は施設の中で閉ざされており世界がその向こう側まで広がっていることは誰も知り得ない(という設定、なぜか知っている少女も出てくる)、つまり大人が情報を遮断していることになる。

(余談だがこの様な閉ざされたジュブナイル的な作品が昨今流行している。今年の「このマンガがすごい!」1位の“約束のネバーランド”や、A-1とtriggerのコラボオリジナルアニメ“ダーリンインザフランキス”などもこのような管理されている子供達を描いている。こんな風に一斉にヒットしたとなるとそこには必ず理由があると思う。が、本文とはそれるため、後日そのエッセイも書きたいと思う。)

しかし物語の設定はそれだけでは終わらない、もう一つの主人公の軸が次の話数で語られる。

2話では崩壊した世界を放浪し「天国」と呼ばれる場所を探す二人の姉弟が描かれている。1話の近未来的な服装とは別にこちらは完全に現代の人間が滅んだことを示唆している様な服装である。そして彼らが持つ唯一このリアルな世界で違和感を放つ光線銃がある。明らかに我々の文明より進んだ技術、そして彼女たちが探す天国。1話の少年少女がクラス施設を読み手に予感させる。

1話の少年の中にいびつな生物と人間が融合したかの様なイラストを描く少年が出てきたが、2話ではそれを彷彿とさせる眼球や手足が生えた鳥(?)の様な化け物が夜にひっそりと現れたことも描かれている。この二つの世界線が一体どう交わっていくのか、これほどまでに次の話が楽しみなのは稀有である。

現代に蘇る名作

「ってことはAKIRAのパクリってこと?」

いえいえ、全くその様なことはございません。おそらくよほど読み込んでいないと気づけません。僕くらいのエリート漫画読者クソニートだからこそわかったところがあります。(そんなことはない)

ある意味これはパクリでなくアンサー的な作品なのかもしれないと考えています。セカイ系という概念が流行った昔と今とでは明らかに人の価値観やオタクの立ち位置が変わってきました。「何もかもがおしまいだ」と感じさせる戦後復興など今の僕たちには何もリアルではありません。ただ漠然と終末が口を開けて待っているかの様な見えない恐怖、放射能やら花粉症やらの方がよほどリアルなのです。
あの作品から漠然と漂ってくる終末感は僕ら現代の人間に必ず響く作品の作り方であると私は考察します。

石黒正数はこの作品で僕たちに何を伝えようとしているのでしょうか?そこには”クローズドサークルの子供達“の様なものが流行っている今のマンガ界を解明する何かがある様に僕は感じています。

メッセージの期待度も作品の期待度もかなり高いこの作品、おそらくコミックスになるまでに非常にじれったい思いをすると思うのでアフタヌーンで毎月見よう!漫画村で見んなよ!

オススメ度文句なしの星5!

コミックちゃん

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