『好き、分析、その先へ』 編集ちゃん その12

「次の作品はどういう話にしようかな?」
誰しも思うことですよね。
みんなどういうやり方をしてるんだろう?
今の時代、ググれば多くのやり方が出てきますよね。
僕も編集者として、お題を考えたり、企画を考えたりしてるんですが、最近こういうやり方が良さそうだなと思った方法があるので、ひとつご紹介します。

手順としては以下です

・自分の好きを深掘りする
・構造化
・相似形を探す
・企画のとっかかりにする

「自分の好きを深掘りする」
みんなそれぞれ、好きな作品や、面白いと思う作品があると思うんですが、その作品の何が好きなのか、何が面白いのかを考えるところから始めます。

例えば、先日マンガ技術研究会(旧:マンガ新連載研究会)の定例会に伺わせてもらったんですが、架神さん、ごとうさん、による新連載研究チェックの時間がありました。
毎月150作品ほどある新連載作品の中から、各々が良いと思った作品についてコメントをしていき、さらにそれがどういう構造になっているのかを分析されていました。

「構造化」
研究会が進む中、「ゾン100」という新連載作品の話題になった時に、架神さんの分析で「最悪なことが最高になるシチュエーションって何があるんだろう?」とおっしゃっいました。

「相似形を探す」
シンキングタイムになった時に、僕にある思いつきがふと生まれました。
どういう内容かというと、「ホラー映画が大好きでたまらない主人公が、猟奇殺人者が闊歩する世界に異世界転移したとしたら、普通の人には最悪な状況だけど、主人公にとっては最高の世界になるんじゃないか?」というものです。

「企画のとっかかりにする」
その思いつきを架神さんが褒めてくださり、嬉しいと思うのと同時に企画として詰めていくのも面白そうだと考えました。

もちろん、ここから主人公の動機や物語の目的といった、物語論の部分も考えなければいけないし、
編集側からの企画なので、なぜこの企画が売れると思うのか、という根拠も考えないければいけないです。

ログラインやあらすじにした時の売りや引き、キャッチーな部分、時代感にどうマッチしているのか、名作として残るための普遍的な部分はあるのか、など。
物語論の部分は、作者と詰めていった方が自分ごととして描いてもらえそうなので、ある程度は余白にしていいとしても、まだまだ考えないといけない部分は多々あります。

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以上のように、ざっと企画を立てる方法の一つをお話ししました。
創作をしていくと、「好きを深掘りしよう」「物語の構造を理解しよう」といったことは良く言われることです。
それが大事だということに疑問はないのですが、それを具体的にどうすればいいのかというところまでは、なかなか話が及ばなことが多いです。

先日、佐渡島さんとつのだふむさんの定例MTGに同席させてもらった際、こしのりょう先生もZoom参加をされていました。
佐渡島さんがこしの先生に、「こしのさんの好きなものは何ですか?」という質問をされていて、それに対する回答が「プロレス」とおっしゃり、その理由は「受けの美学」みたいなことだったと思います。

その回答に対する佐渡島さんのアドバイスとして、「その好きの理由と同じ相似形のものを探して、その似ているものも好きであればその好きは正確だし、そうでなければその好きは深掘りが足りなくて、まだ確定できていないんですよね」といったようなことをおっしゃっていました。

ここでも相似形が出てきたなと思いつつ、いろいろなことがつながっていく感覚を得ました。

創作論は広くて深い。一方で、同じようなことを視点や視座、視野を変えているものでもあると思います。
そこにクリエティブな思いつきが加わったり、こだわりや信念、思いが込められたりして、誰かに届く作品になっていくんじゃないでしょうか。

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