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でいごの花が咲き 風を呼び 嵐が来た

「最近妹の様子はどう?」
「変わらない。ちょくちょく一人でお墓で遊んでるみたい。」

今年は例年にも増して、デイゴの花が赤く見事に咲いている。
沖縄では、デイゴの咲き具合で台風の予想ができると言われていて、たくさんの美しい花を咲かせた年は台風が多く来ると言われている。

去年の夏、彼の母親が交通事故で急死してしまった。
その人は、高校のそばでゲーム喫茶を経営していて、姉御肌で面倒見がいいからか、やんちゃな高校生たちの溜まり場になっていた。
タバコを吸ったり、喧嘩したり、ゲームの花札で賭博をしたり、小さな悪い事を咎めたりはしないけど、人として間違っていることをすると我が子のように叱りとばし、時にはビンタをしてまで人としての道を教えていた。

幼い頃、彼の家によく遊びに行っていた。
母子家庭で寂しかったのか、あんまり頻繁に遊びに行くので、僕の母親に対し
「あんたあの子の母親だよね?寂しい思いをさせるな。」
と、叱られたことがあったという話を聞いたことがある。

多くの人と付き合い影響を与えた人。そんな彼の母親が事故で急死してしばらく経った頃から、彼の幼い妹に奇行が目立ち始めた。
心ここに在らずでぼーっと1日過ごしたり、深夜に夢遊病のように徘徊したり、一人でお墓で遊んだりするようになった。

沖縄では魂のことをマブイと言い、びっくりした時などにマブヤーを落としてしまうことがある。
マブヤーを落とすと体調を崩したり、運気が下がったり、性格が変わったり、奇行をするようになったりすることがあると言われている。

「そろそろユタに相談してみる?」
「そうだね。」
「母親の事故のショックでマブヤーを落としたのかもしれないね。どこで落としたんだろう?」
「わからないんだ。小学校かもしれないし、もしかしたら通学路のどこかかもしれない。」
「そっか。事故の連絡をどこで受けたのか、妹に聞いてみてよ。その時かもしれないから。」
「うん。聞いてみる。」

長く体からマブヤーが離れていると、戻しづらくなるような話も聞いたことがある。彼の母親には僕もお世話になったし。早く治してもらいたい。

ふと、外に咲いている真っ赤なデイゴと、雲ひとつない青い空に目がいく。
「もう夏か。」
「そうだね。」
コントラストがとても綺麗で、少し心がざわつく。
彼らの行く先が嵐じゃないといい。

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ウエサト トモム

フリーのマンガ編集者。元ストリートダンサー。それ以外はファッションと物とマンガに力がこもってます。音楽はHIP HOPからアラブ音楽まで。バンドもやってた何でも屋です。

ものぐるほし

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