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3Dモデルをネームに活用!『聖女リーリアはわがままに生きたい』坂西ひさとさんインタビュー!

WEBTOONのネーム作家さんインタビュー第3弾!
今回は2023年下期にcomico新作ランキング7位だった注目作『聖女リーリアはわがままに生きたい』のネーム制作の裏側に迫ります。

本作品は、星名こころさんのWEB小説を原作とし、坂西ひさとさんがネームを、 Dabin255さんが線画を担当しています。
ネームを担当されている坂西さんはCLIP STUDIO PAINTの3Dモデルを活用してネーム制作をされており、今回は特にそのポイントについて深掘りしていきます!

STORY
リーリアは十六歳で聖なる力に目覚めて聖女となったが、実は彼女は同じく聖女だった前世の記憶を持っていた。

酷い扱いを受けても神殿の言いなりだった前世を悔やみ、今世こそ「わがまま」に生きると決意しつつ、聖女として神殿に舞い戻る。

運命に引き寄せられるように、リーリアは前世で一緒に過ごした二人の青年と異常な再会を果たす。さらに、聖女を二度経験したことで「聖女の謎」に近づいてくことになり…。
果たしてリーリアは、「わがままに生きる」という今世の目標を果たすことはできるのか?

ネーム担当・坂西ひさとさんインタビュー

――自己紹介をお願いします!

坂西ひさとさん @gin_mei_sui

坂西ひさと 坂西ひさとと申します。
『聖女リーリアはわがままに生きたい』でネームを担当させていただいております。

―― ネームを担当することになったきっかけは何でしょう?

坂西ひさと comicoさんにオンライン持ち込みをさせていただいた際、分業制作のお仕事に興味無いかとお声がけいただいたのがキッカケでした。
その後、トライアルなどを経て、実際にネーム作家としてデビューさせていただいたので本当に感謝しております!

―― 作品制作のやりがいはどんなところでしょうか?

坂西ひさと 初めはお仕事としてWEBTOONのネームを作るのも、小説のコミカライズも初めてのど素人だったもので……。今思えば恥ずかしいんですけど、コミカライズって「小説の流れはそのままに、コマ割ってセリフを適度に短くしつつフキダシを置いていく」程度の単純な作業かと思っていました。けど実際やってみて、それは全然違うと痛感しました。
小説と漫画では効果的な見せ方が全く違っていて、小説を単純にそのまま漫画化するだけじゃ魅力が全然伝わらないんですよね。漫画としてわかりやすい、映える画面作りが出来るようシーンを取捨選択したり、順番を入れ替えたり、時にはオリジナルのシーンを入れ込んだり。
もちろん、原作から大きく逸れたりするのはあまり良くないですが、案外自分のカラーを出せる部分もあって楽しいですし、大変ながらもやりがいに繋がっています。

―― ネームの制作の工程を教えてください!

坂西ひさと
①原作小説を文字プロットにする
②フキダシを置く
③3Dモデルを使用しての構成
④少し時間を置いて、スマホからチェック(1回目)
⑤気になったところを修正し、枠線を追加し、各コマのコマ数を入れる
⑥少し時間を置いて、スマホからチェック(2回目)
⑦気になったところを修正し、表情を入れる
⑧少し時間を置いて、スマホからチェック(3回目)
⑨気になったところを修正し、ざっくり背景、文字指示を入れる
⑩打ち合わせで担当さんにチェックしていただき、修正してモデルを元に線を起こす

こう挙げると工程数がやけに多いんですけど、ちょこちょこ自己チェックを挟んでるからなので、①③と3Dモデルからの線起こし以外はそこまで時間はかからないです。

―― 自己チェックを結構されているんですね…!

坂西ひさと 最初は全然チェックしてなかったんですよ(笑)。
編集さんとの打ち合わせでめちゃめちゃ指摘されて、どんどん増えた感じです。自己チェックで気にしているのは人物の位置関係、コマの形やサイズのバリエーション、構図やヨリとヒキのバリエーション、誰のフキダシかわかりにくくないか、見せゴマが適度に入っているかなどです。読んだときに違和感がないかを見ています。

―― 3Dモデルを使う利点はどのようなところだと思いますか?

正直このやり方、めちゃくちゃ邪道で小狡いやり方だと思っていたので、今回のインタビューで「3Dモデルを使った制作」について聞きたいと言われてものすごくびっくりしたんです。やはり本来なら自力で絵を描いていくのが一番だと私も思うのですが、とにかく空間把握能力が乏しくてですね……。3Dモデルを使わないとキャラの立ち位置や背景との兼ね合いがすぐわからなくなっちゃうんです。
例えば、部屋で大勢が話してるシーンなどは、人物や小物の3Dモデルを一旦配置してしまえば、後はいくら視点を変えたとしても位置関係が大きくおかしくなることはなくなるので、それは本当に助かっています。

『聖女リーリアはわがままに生きたい』26話より

―― この原稿を見ると、キャラクターが4人いるアングルやコマの構成が難しい場面を、3Dモデルを使ってうまくコマ構成してるのがわかりますね…! ところどころに効果の指示も入ってるので、3Dモデルの特有の固さもなく、完成原稿ではシーン全体が柔らかい印象になっています。

坂西ひさと 他にも、自力では難しくてなかなか描けないようなアングルも簡単に作れるので、構図の選択肢も広がっていると思います。

―― 確かに、制作初期のネームはキャラクターが正面向きなど単調なアングルが多かったですが、坂西さんが3Dモデルを重点的に使うようになった話からは、面白いカメラアングルや人物の動きなど演出のバリエーションが増えて、作品全体がぐっと良くなってるのがわかりますね。

――ちなみに、3Dモデルは配置にどのくらい時間かかりますか?

坂西ひさと 一応、今までの作業時間をメモってあるんですが……大体原稿1枚(※キャンパスサイズ800px×15000px程度)につき1時間前後かかっています。だいたい8枚あるので、合計8時間前後になる感じですかね。

―― 8時間! 使い方はどこかで習ったんでしょうか?また、使うコツはありますか? 

坂西ひさと モデルの使い方は完全に独学……というか、実はちゃんと学んだことすらないんです。基本的に取説とか読まない人間なので、とりあえず弄りながらやってみる! って感じでここまで来ました。
実際に使うときはデッサン人形の手足を全部動かしてるわけじゃなくて、3Dモデルのポーズ素材を調整しつつ使ってます。立つポーズと歩くポーズはよく使ってますね。キャラクターは頭身や身長などを決めて登録しています。例えばヒロインのリーリアは155㎝、7.5頭身と登録していますね。

――身長や頭身も調整できるんですね! 3Dモデルを使う上で難しい点はありますか?

坂西ひさと やはり自然なポージングを作るのは大変ですね。
ポーズ素材を探しても、これぞというものがない場合も多々あります。その場合は泣く泣く自力で調整していますが、よく迷走します。チェックでは、モデルのポーズが不自然ではないか等、そういう部分も気にしていますね。

――なるほど。3Dモデルを使った制作では、先ほどお話しされていた制作中チェックという工程がより大事になってきそうですね。

坂西ひさと 直すところは、歩幅が女性らしくないとか、このキャラのポーズかっこよくないなとかそういう感じです。ほとんど感覚なんですけどね。

―― 制作で悩んだ時はどうしていますか?

坂西ひさと 他の作品を読んで参考になるものを探そう! と読み出しては、普通に読んじゃって大きく時間を失って頭抱えてます。

―― 作品のお気に入りのシーンは?

坂西ひさと 32〜33話のランス卿とミリアのシーンです。
実は最初は、小説では番外編的なエピソードだったので漫画版で入れるかどうか悩んだエピソードだったんですが、でもやっぱり入れたいよね! って担当さんと打ち合わせ時に盛り上がって、原作とは異なるタイミングで急遽(?)差し込んだエピソードだったんですよね。原作のこのシーンは大好きだったので、漫画として見られて嬉しかったですね……完全にファン目線になってしまいましたが。

『聖女リーリアはわがままに生きたい』33話より
男性騎士が前世のヒロインに想いを告げる前に、ヒロインが死に別れてしまったというシーン。
続きはぜひ本編でお楽しみください!

―― どのような作業環境で制作されていますか?

坂西ひさと
PC
【OS 】Windows 11 Home 64ビット
【CPU】インテル Core i9-11900H
【メモリ】16GB DDR4-3200
【ストレージ】SSD:512GB
【グラフィックス】NVIDIA GeForce RTX 3050 Laptop GPU

液タブ
Wacom Cintiq 16

―― お気に入りの仕事道具は?

坂西ひさと 確実にプロの作業スペースではないのですが、リビングで描いてます。写真はどう足掻いても溢れる生活感がどうにもなりませんでした。
(真後ろにシンクがあるというとんでもない作業台)

坂西ひさとさんの作業机

基本的にこだわりの無い人間なのですが、お気に入りの仕事道具は強いて言えば液タブのペン先ですかね。最初に付属していたやつは、ほんの数日でダメになってたんですけど、ペン先が削れないやつを買ったらずっと取り替え要らずなのでズボラにはぴったりでした。
パソコンとか液タブとか機械類のスペックとかそういうのは疎すぎて、何も役立つことが言えなくてすみません。

―― 1週間の制作のスケジュールは?

坂西ひさと お休みの曜日は特に固定していなくて、主に平日にふらりと美味しいものを求めて出かけています。
人と予定を合わせる場合、土日に休むこともありますが、土日の方が圧倒的に仕事している捻くれ者です。数ヶ月前は他社様の単発案件を並行しておりましたが、最近は自分の原稿(comico主催のコンテストの応募作品)を並行して作業していました。

―― おすすめのcomico作品は?

坂西ひさと 『とにかく私達って最高!』はキャラがめちゃくちゃ魅力的で、可愛くて面白いやり取りとかも大好きなんですよね。
毎度ニコニコしながら読ませていただいております。

坂西ひさと 『ノーモア・プリンス』は完結している作品ですが、話の面白さやキャラの魅力も勿論ある中、WEBTOONの魅力を詰め込んだような芸術的なコマ割りや魅せ方がすごすぎて芸術作品だと思っています。

―― 最後に作品の宣伝とファンに一言どうぞ!

坂西ひさと いつも読んでくださりありがとうございます!
『聖女リーリアはわがままに生きたい』も魅力的なキャラクターばかりですし、これからの展開もずっと面白いので、是非引き続き楽しんでいただけたら幸いです!

『聖女リーリアはわがままに生きたい』はcomicoで好評配信中!

坂西ひさとさん、ありがとうございました!
『聖女リーリアはわがままに生きたい』皆さん是非ご覧ください!

©Dabin255・坂西ひさと/comico ©星名こころ