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君に伝えたいことがある 風よりも早く伝えたいこと

君に伝えたいことがある
風よりもはやく伝えたいこと
マーマレードが陽にきらめく
様よりも綺麗で不確かな声

君を追いかけた八月よ
光よりただそばにいるだけで
歯をゆすぐ君の声が聞きたい
友達にだけ好きと言えること

君に伝えたいことがある
好きなのに上手く言えないこと

君に希う夢描く
蜂蜜の花と咲き変わること
マーマレードは陽にきらめく
願っていた笑声がゆるえた

限りなく青に近い白に
出会って会いたくなったこと

君に伝えたいことがある
はやる心が熱を帯びること
狭き空に夢を託した
涙が勝手にこぼれてしまうこと

優しさだけで君は手に入らない
それでもいいから優しくしたい

君を追いかけて風を待つ
夜が来るまで君を想うこと
馬鹿げていると笑ってしまう
切なさを思い出へ捨て置けないこと

届かないと知っていながら
面影に君を描いてしまうこと
あなたの幸せを願っている
風に乗って四葉が届くこと





未発行の許可証できみに会いにいく
まっさらな心に愛を注げば
水晶の丘を駆けて迎えにいくよ

緑青に寄せて帆を抱いた
あの日に似て塩辛い

雪の降る日には白を乗せた
目で追う黒髪がすぐになびいた
あたしの心をからかうままで
奔放にきみを笑わせる

春の降る日には光を溶いた
絵筆をたどりながめた横顔
あたしの心を手ぐすね引くのに
あまたの手のもと笑うあなたに
一言言いたい馬鹿なんじゃないの

好きなんて言っても叶わないんだから
あたしのものにしちゃってもいいの
粉雪を舞いきみの手をつかまえ
どこまで遠く攫えばいい

未発行の許可証できみに会いにいく
まっさらな心に愛を注げば
千鳥の跡すら飛行機雲になる

雪の降る日を横に居たかった
いつでもすこし遠くで笑い声は響く
ころがるようなやさしい痛みも
シロツメクサに祈ってしまう

好きだと言っても叶わないのかな
どこの小説にもあたしはなれない
粉雪を抜けきみの耳を塞ぐ
どこまでも遠く攫えばいい




鮮やかだった全てに変わる君の声が
街を映す
鈍色に差した光の奥で僕の声で
鼓動を打つ

世界なんて大仰な言葉で
あなたは私を呼んだ
馬鹿なんて優しい声で
あなたは私を呼ぶんだ

泣いてしまうからもう
私に振り向かないで欲しい
消えてしまうからもう
諦めさせて欲しい

私の声であなたは幸せになれないけれど
あなたの声で私は未来を超える

薄氷を過ぎた頃
クジラは天を駆けるようになった
階段を伝い光は誰かの元へ還る

泣いてしまうからそんなに
綺麗に笑わないで欲しい
消えてしまうからそんなに
優しく手を伸べないでほしい

世界なんて大仰な言葉で
あなたは私を呼んだ
嗚呼なんて優しい声で
あなたは私を呼ぶんだ

悲しみに凍える景色を見渡す
今日に朝が告げていた
声がやがて薄れてくように
恋を足りないと言うには愛は濁りすぎて
芯に冷えた名前を僕は呼ぶ

君の好きだった歌を歌う




君に奪われた心の在り処を
綴るために旅に出た
ラピスラズリ 万華鏡
彩られた道は綺麗だけれども儚い

なんだかせつないという気持ちを
胸の奥に錐で穴の空くような痛みを
きみを通じて知ってしまったので
今日は花を買って帰ろう

きみの好きだと聞いたアネモネが
昨日の昼過ぎに枯れてしまった
それを聞いてもきみは知らん顔だろうけど
僕は夕ご飯をサラダで済ませてしまったよ

偶然日付が合ったからなんて
そらぞら嘘をつけるようになりました
跳ねた髪先は少し短くなっていて
僕はタイムセールに間に合うかな

とにかくさみしいなんて言葉を
あどけなくきみが晴れ空に笑うから
きみの触れるそこかしこの温度を
全部奪いたくなってしまう

どれだけきみを透明に好きかなんて
知らないままで笑ってくれ
聞いたこともない台詞でさえも
きみの言葉で僕を過ぎる

ここから見える白砂にバイオレットの
水平線が夕陽と混ざって溶けていく
きみの言葉で翻訳した後の
世界を今も咀嚼している

きみの好きだと聞いたアネモネが
昨日の昼過ぎに枯れてしまった
それを聞いてもきみは知らん顔だろうけど
今日の献立はたぶんカレーだよ





草の匂いが鼻を駆ける
君の姉さんはどっちへ行ったんだい
スクラップに閉じた古ぼけた写真
セピアに揺らぐ海辺の教会

水面に落ちた奇跡のかたまりのような
光の星々は泣いていて
僕はどうしたらいいかもわからずにいた
ピンクや黄色にゆらぎゆく世界は
いっそう綺麗に見えてしまったんだ

震える手に触れるためだけに
なんだって出来るからさ ねぇ
好きだと言えば星は登るのかな
月をも超えて輝き出せるかな

オールドブルーをかき消して光る
夏の夕べに君は咲いた
にがにがし記憶をまたいだ素足が
簾を揺らして僕に微笑みかけていた

ましろい匂いが頬をくすぐる
飛び込んだのはうさぎの巣穴か
さみしさを腕にせえので抱きしめて
願いをこめたランタンに溶けた

白骨の砂が城に捲き上る
星くずみたいに深青の空を汚した
手を伸ばせば伸ばすほどかすれてしまうよな
麻の向こうに透けたのはきみですか

オールドブルーをかき消して光る
夏の夕べに君は咲いた
にがにがし記憶をまたいだ素足が
簾を揺らして僕に微笑みかけていた

震える手の仄か白さにすくんでは
その温度をこいねがうほどに
どうしようもなく海は叫んだ
行きたいのなら足を動かせばいいよ

モスクグリーンに誤魔化すな夏よ
ほどけた縁側を繋ぎ止めている
あかあかと日々を照らした両手が
清水をすくいあげて僕を困らせた





消えてしまうなら宝石になって砕けたい
願望ばかり染め抜いた人生だ
大袈裟な歌に心を奪われたのは
君ばかりに透明を世界が描きたがったからだ

空はどんなに暗くても空で
君はどんなに儚くとも人だ
自分のために生きているだけじゃ
鼓動を揺らす光は見出せない

証明したかったのだきっと
恋は恋として死ぬだけじゃないと
羨望を梅の木に埋めた日
記憶が光って線となる 声が何処の君を呼ぶよ

出会うために生まれてきたのなら
出会うために死んだ方がよかった
喉を潰しても良かったんだ
君さえ前を向けるのならば

星になれたって世話がないよ
目を閉じても聞こえてしまう
苦痛で逃げたくてしかたがないんだ
笑い声は痛くて 痛くてしかたがないんだ

澄んだ愛に僕らの日常が
こわされていく予感が僕をゆらす
汚れた恋が地球に青を取り戻す

哀しみが沁み切った世界で
今日もまた夜を迎えた
声が耳に残っていた
愛を呪いと呼ぶにはその温度は温かすぎて
遠くていい 君の好きだった歌を歌う






世界が美しいことをそのまま
飲み込めるようになって
見える景色に潜む残酷さは
アンモナイトのように浮き彫りになった

芽吹いた季節のまんなかで
立ち尽くす僕らは
時間に取り残されたようだ
もう夜は明けている

大丈夫という言葉ひとつで
私を泣かせてくれる彼女は
咽ぶ姿をわたしの前では見せてくれない

さびしさを絵筆にふくませて
水を描いた空の跡地
赤青黄色にめくるめく
屋台の背骨を抜けていく濃紺

きらめく星はサーカスだ
あわいに残された僕らは歌う
泣けないあなたが歩む道が
わたしには行けない道でありますように

恋から逃げ切れない自分が
ひどく滑稽に見えた
いつもより細いあなたの線に
触れられないのは痛みだ

やさしさに嗚咽がひそんだ
木漏れ日も青く染まる夕暮れ
西日に声が照らされる
君が好きだ

輝け星はサーカスだ
あわいに残された僕らは歌う
いつか彼女がこの星で
誰かと添い遂げるとするなら
遠く離れて綺麗な場所でありますように

大丈夫という言葉ひとつで
あなたの笑顔を取り戻したい
好きだという言葉をかけて
君に嘘だと言いたい

あなたを思えば思うほど胸が潰れる夜に
あなたを慰めることより保身が走った自分に
星が埋まった
鉛色の星が心をめがけて差し込んだんだ

外れないそれをかきむしると指は
星空を溶かし込んだ青の血にまみれた
恋心を殺した昔の僕らに伝えよう
大丈夫だよ 好きでいいんだよ





ずっと甘えて生きてきたんだ他の誰かに
その事に気付いた今でもついそうしてしまう
すみれ草はゆれ あさつゆが落つる
そのまんなかに君の瞳があった
零れた涙にただ思う僕が止められたらって

君だけには泣いて欲しくなかった
恋は愛に変わると知った
単純に笑顔がいとおしかった
ほかの誰より守りたいから
強くならなくちゃいけないのです

声を聞いただけで
わたしがどんな気持ちになるか
考えも及ばないくせに君は
そんな顔で笑うのです

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