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欄干から星を見る

星のゆらぎが目に映る
水面眼下、君を呼ぶ
からだめいっぱいあたしになるんだ
呼んでよ

水の波紋に指をひたす
待ち受けた声に立ちすくまないで
あたしの全部に怯えちゃだめよ
ひたすらに空を見る

サッシにふれた瑞々しい指が
ひどくいとおしそうに埃を眺めた
声も出さずに身をかがめた僕は
よりかかる柱の温度を知って

夏の田んぼの揺らぎない青さを
あなたの白い麦わらにさしのべて
ゆるゆるりゆれた透けていく睫毛
二の腕で頰を拭う内に滑ってく

汗のしずくは散りゆく花に見えたから
電話帳に手をかけてしまって
浮かんだ声に目をつむった
かたく手に刺さる星はいつでも
プラスチックのようだ

逆さまに映る夜の星座は
いつだってきっちり眠りに落ちていた
寂しげなのはあたしだけなのだ
親指の腹を棘に差し込んでいた

宇宙はすこしだけ腰が痛くて
そんなのにかかずらわずに
あなたは無重力に笑っていて
そんなところがすきだなあ
ぼやけたコードをハサミで切るの

君のゆらぎが僕を試す
ぼやけた輪郭が芯を伴っていく
泥だらけの手のひらを
どうやって掴めばいいと
君を追いかける道で見つけられるよ
あなたを好きになった理由すらもさ
海辺を指でなぞりながら
恋を繰り返してまた生まれるのだ

星のゆらぎが目に映る
水面眼下、君を呼ぶ
からだめいっぱいあたしになるんだ
呼んでよ

水の波紋に指をひたす
待ち受けた声に立ちすくまないで
あたしの全部に怯えちゃだめよ
ひたすらに空を見つめていた

ねえ全部を知ってよ
かすれた声が黄色い花弁を散らしてく
なめらかな肌にふれたら最後だ
日だまりが鼓動を助長する

僕のゆらぎが空になるなら
声を出してはいけないんだよと
たちまち埃が光の粒になる
めんどうくさがりやの君が愛しい

水面を踏み越えて躍ったら
まあるい光が頭上で綺麗だ
手のひらこぼした最後の熱も
見失わないで声を聴いて

遠さはそのまま光になるから
どんな距離だってつめたくないさ
爪先立ちして大人になれよ
ずっと昔で君を迎えてあげる

横になって見る空の星座は
ふと気づけばひとつ点滅した
寂しいのは僕だけじゃないんだ
親指の腹でスイッチを押すよ

瞬き出した電球にかざられた
さやかな夜も悲しくはないよ
自分の全部を見限らないでよ
どういうところも愛おしいから ね

サッシをなぞるあなたの瞳に
春も秋も深まって涼む
ほおばる白葡萄から滴って
暮れゆく日がぽとんと声を上げた



もうめちゃめちゃ眠いので寝るね おやすみ。

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