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デザイナーはAIと競争してはいけない「AIとは対立するな、仲良くなれ!」 〜今後のAI活用でプロトタイピングも変わる

今週末の28日(土)、Adobeのプロトタイピングツール「Adobe XD」にフォーカスした大型イベント「All About XD」が開催されます。定員300名ですがすぐに満席となり、再演が6月30日に決まりましたが、こちらもそろそろ満席になりそうな感じです。

CSS Nite LP57「All About XD」再演版
6月30日(土)13:30-19:00
大崎ブライトコアホール
定員:300名

私も「Adobe XDアドバンスド〜最先端プロトタイピング手法の実践」というテーマで登壇します。CreativeSyncとPhotoshopのAI(人工知能)機能を最大限に活用したXDの「視覚表現の省力化」について解説します。

プロトタイピングツールのイベントで、なぜ、AI(人工知能)の話題が出てくるのか理解できないかもしれませんが、XDはAI(Adobeの機械学習)が稼働しているAdobe Cloud Platform上の製品。XDと他社のプロトタイピングツールとの大きな違いは、バックエンドでAIが稼働していることです。
Adobe のAIに関する詳しいことは以下の記事に書きましたのでご覧になってください。

2018年4月8日に投稿した記事:
【更新】クリエイティブ業界においてAIと人間は対立しない。AIを熟知した人が「10倍の仕事をこなす」。そういう時代がやってきます。


クリエイティブAI(創造的な作業にAIを活用すること)のトライアルを2年以上続けてきて、実感しているのはこんなことです。

【A】AIの活用で飛躍的に省力化されていくもの
・デザインのテスト、分析・評価、例えばユーザビリティ改善、サイトの情報設計など

【B】AIでは極めて困難なこと
・人の情動に訴えかける見た目のデザイン、かっこいい、可愛い、キレイ、楽しいなど

【A】はすでに実績も出ていて、AI導入で企業の「内製化」が進むことは間違いなさそうです。一方、【B】の一から創るクリエイティブ、例えば「クールな見た目のデザイン」っていうのは、AIではかなり難しい(技術はあってもお金がかかりすぎる)。この領域は、今までどおり外注するしかないでしょう。
一般の人でも「AIの得意・不得意」は大まかに理解していると思いますので、この結果に違和感はないはずです。

Adobeのソリューションを見ても、Experience Cloud(マーケティング・データ分析)は、AI技術の市場投入時間が短縮されつつありますが、Creative Cloud(クリエイティブ製品・サービス)はまだテクノロジープレビューの段階で時間をかけてゆっくり進んでいます。

例えば、私が最初にAI活用をトライしたのが「BABYMETALのデータ分析」。仕事ではなく、ごく私的な個人の研究です。もっと正確に言うと「趣味」でやったものです。
※趣味と言っても、大掛かりなシステムを使用させていただきました。

BABYMETAL Song Dataset Graph

BABYMETAL Overseas Expeditions

BABYMETAL History Timeline
http://design-zero.tv/babymetal/datasheet.html

個人でも「こんなに速く結果を出せるのか!」と自分でも驚きましたが、94年にネット検索を利用し始めた頃のワクワクする・エキサイトする感じがとても似ていて、10年も経てば高校生でも普通に「データ分析」する時代になるのだと確信しました。


現在、私はAdobeのCommunity Evangelistという立場で活動することが多く、最近特に増えているのが「Adobe Sensei」と「Adobe XD」に関するエバンジェライズです。
「Adobe Sensei」の何を啓蒙しているの?とよく聞かれますので、分かりやすい例を紹介したいと思います。

Creative Edge School Booksでは今月、2つのエデュケーションコンテンツをリリースします。以下の2つです。

Photoshop 基礎編
http://design-zero.tv/i/ps2/

XD 基礎編
http://design-zero.tv/i/xd2/

Photoshop 基礎編は、タイトルどおりPhotoshopの基本操作を習得するための講座コンテンツですが、AI(人工知能)機能による「作業の省力化」を強く意識した内容になっており、AIの特性を理解したツールの使い方やAI活用を前提とした機能のリフレーミング(再定義)もやっています。

Photoshop AI機能の歴史

Content-Aware Fillの使用例

実際のところ、プロフェッショナルレベルではまだ「支援ツール」の域を出ていませんが、コンシューマレベルだと「ワンクリック自動処理」が実現していると言ってよいでしょう。一般ユーザー向けのPhotoshop Elementsには、目を閉じてしまった人の「目を開けさせる」機能とか、緊張した表情を明るい笑顔にする機能など、魔法のようなツールが搭載されています。

Adobe Sensei(Adobeの機械学習)が何をやっているかは理解できなくても、PhotoshopのAI機能を使えば、被写体を自動で選択してくれたり、風景から電線などを違和感なく取り除いてくれたり、具体的に「AIでこんなことができる」を見せてくれるわけです。

私の仕事は「AIの遍在化」が進んでいることをわかりやすく伝えていくことです。無知は疑心暗鬼を生み出し、間違った情報の多くは過度な期待を膨らませて煽ります。前述したとおり、具体的に「AIでこんなことができる」ってことを誰でも試すことができる仕組みが必要で、その代表的なクリエイティブツールがAdobe Photoshopだということです。


もう1つの「XD 基礎編」でも、「今後のAI活用でプロトタイピングも変わる」というメッセージをこめて、いくつかスペシャルなコンテンツを加えています。
Photoshop講座のように、AI機能を使いこなすようなアプローチではありませんが、AIが既存のワークフローをどう変えていくのかイメージできるようになるでしょう。

以下の長い図表は、リーン・アジャイル・デザイン思考・パターンランゲージなどの動向を1940年から記したタイムラインになっています。

このヒストリーから、「ムダをなくす」「たゆまぬ学び」「速く提供する」「全員を巻き込む」「改善を続ける」といったことを読み取り、何のためにプロトタイプを作るのか、じっくり考えてもらうわけです。

デザインコンサルティングの分野で知らない人はいないIDEOのCEO、ティム・ブラウンは、TEDカンファレンス(TEDGlobal 2009/「Designers — think big!」)で、「デザイン思考では、作ることから学ぼうとします。何を作るかを考えるのではなく、考えるために作るのです。」と語っていますが、じっくり学んでから行動する(もしくは、じっくり考えてから行動する)のではなく、すぐに走り始める。走りながら学び、走りながら熟考していくマインドにシフトしてもらうための講座でもあります。

アジャイルの代表的な開発手法であるスクラムやXP(エクストリームプログラミング)などは、ゼロから生み出されたものではなく、他の領域の概念や思考法などからインスピレーションを得たり、独自解釈を組み合わせながら、実践と検証を繰り返し、漸進的に形成されていきました。

AI(人工知能)が、現在のシステムや思考法などを次々と「上書き」していく可能性があることは容易に想像できると思います。

XD基礎編の概論部分は以下のとおり。

[1]デザイン思考(30:14)
   不確実性が高く予測することが難しい時代に「適応する」ための思考法を知る
[2]暗黙知(14:07)
   誰でも成功の方法を学べるのに、なぜ成功者で溢れかえる世界にならないのか
[3]協働(17:30)
   責任範囲の功罪「私がその作業をやらなくてもよい理由」を常に探している人
[4]アジャイル(23:01)
   非ウォーターフォール「理論より実践」を重視するアジャイル開発手法の哲学
[5]リーン(12:39)
   トヨタ生産方式からリーン・シンキング、ソフトウェア開発、ビジネス手法へ
[6]パターンランゲージ(26:12)
   チームの「知識ギャップ」と公には流通していない「実践知」を獲得する方法

XDの講座でなぜ?と思われるかもしれませんが、「AI(人工知能)で何が変わるのか」を想像するだけでも大変なことで、このくらい過去の歴史を学ぶ必要があると考えています。

厳格な作業ほど、AIが代替しやすいことはわかっているのだから、デザイナーはこれから何を強化していけばよいかは容易に想像できるでしょう。

とにかく、
AI(テクノロジー)とは競争するな!

これも過去の歴史が証明していますね。
テクノロジーとは対立するな、仲良くなれ!です。


投稿者:
Creative Edge School Books

投稿日:
2018年4月26日(木)

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