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【コラム1】ジョブズが創った「NeXT」ってセクシーだったよねぇ。 【コラム2】24年後にスマホの進化系は生き残っているか?

世界で最もセクシーなワークステーション「NeXT」

私は、今までさまざまなコンピュータを使ってきたが、最も印象に残っているのが、1985年にスティーブ・ジョブズが設立したNeXT(ネクスト)社のNeXTcubeである。大変高価なもので所有することはできなかったが、触った瞬間、身震いするほど感動したことを今でも覚えている。クルマ以外でハードウェアに対して、セクシーだと感じたのは初めてだった。

NeXTと言えば、CERN(欧州原子核研究機構)のティム・バーナーズ=リーがWWWを開発したマシンとしても知られている。当時使用していたNeXTは、マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で見ることができる。ビジネスとしては成功しなかったが、NeXTの技術は現在のMacに生きている。

NeXTのデザインを請け負ったフロッグデザインのハルトムット・エスリンガーは、この仕事を「何ものにも替え難い貴重な経験になった」と語っている(「形態は感情にしたがう」DESIGN FORWARD 日本語版/発行:ボーンデジタルより)。

当時、フロッグはAppleの仕事に携わっていたので、追放されたスティーブ・ジョブズに関わることは難しい状況だったが、エスリンガーが個人として引き受けていた。
NeXTの設計コンサルタントは、後にIDEOを立ち上げるディヴィッド・ケリー、ロゴデザインはグラフィックデザイナーのポール・ランドである。

今でも、YouTubeなどで当時のNeXTの映像を見つけると、ワクワクしてくる。自分にとって、スティーブ・ジョブズといえば、Appleではなく、NeXTだ。そのくらい、魅力的なプロダクトだった。誕生から30年近く経つ製品に未だ魅きこまれるのは、自分の過去の記憶と密接なストーリーとして脳に刻み込まれているからだろう。

流行りものは、どうしても古びてしまう。10年前に使っていた携帯電話を見るとよくわかる。ただ、クルマなどは古いモデルでも乗り継がれており、ヴィンテージカーの専門ショップも多い。わざわざ、メンテナンスが必要な古いクルマに乗るのはなぜだろう。デザインなのか、ノスタルジーなのか。

メカニックデザイナーという職業がある。
映画やアニメなどに登場する未知のハードウェアをデザインする人のことだ。国内では、宮武一貴 氏、大河原邦男 氏などが知られている。彼らが創り出すメカニックは、独創的かつ古びないものが多い。
デザインフィクションでは、機能美だけではない「意匠としてのデザイン」を軽視することはできない。NeXTは実世界の製品だが、プロダクトデザイナーに言わせると、無駄なパーツが多いという。ただ、その「無駄」な作り込みこそが、セクシーと感じさせる要因なのだと思う。


24年後の「部分未来」で描くスマートフォンに代わるもの

1968年4月6日(昭和43年)に米国で公開されたスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」で、宇宙船の乗組員が使っていたスレートデバイスを覚えているだろうか。 最新のiPad Proそのものだ(野暮ったい初代のiPadではない)。47年前のSFが、今では通勤電車の車内などでも見かけるような民生品として普及している。

私が現在執筆中の小説「ZEROROBOTICS」の舞台は24年後の2040年だが、風景はそれほど変わっていない。ただ、風景の「部分」に目を向けると、駅の改札や公衆電話など、様変わりしている。
24年後を描くのはその「部分未来」である。1992年の新宿西口の公衆電話エリアには、通話待ちの行列ができていたが、今は小さなデバイスのスクリーンを見つめる人々、そして「歩きスマホ」に変わった。では、24年後の新宿西口の「部分未来」はどうなっているのか。まず、券売機は無くなり、改札はたんなるゲートになっているだろう。「切符」は完全に消滅している。

公衆電話は残っているだろうか? 私は、固定電話と公衆電話については「探しても見つからない」ほど減少しているのではないと予測している。
スマートフォンはどうだろう。私たちのライフスタイルの変化を振り返ってみると、ヒントを見つけることができるかもしれない。15年前、携帯電話が普及し始め頃、ボソボソ一人で話しながら歩いている人にはまだ違和感があった。深夜、歩いていて、そんな人が前から来たら身構えたものだ。現在は、ハンズフリーの人もいるので、外では特に気にすることもない。

ただ、室内や車内などで「声を発する」ケースでは「ローレン・エンバーソンの実験」が参考になる。カフェなどにいて、隣にいる女子高生の話し声より、手前にいる携帯電話で通話中の人の方が気になってしまうことがある。これは、脳が通話相手の声を想像し補完しようと働くことで、気が散ってしまうのが原因だ。
ローレン・エンバーソンの実験では、通話相手の話も聞こえるように細工した結果、気が散りやすくなる現象を軽減させている。もし、スマートフォンが消滅し、ハンズフリーが当たり前になるとしたら、両手が使えるため、あらゆる状況で通話が可能になる。さらに、呼び出し音から骨伝導に代替されるなど、周りに「電話がかかってきた」ことさえ伝わらないとしたら。

2001年に最初のFOMAが登場したとき、最もフィーチャーされていたのは「テレビ電話」であり、SFの世界でも携帯電話の未来だった。
しかし、現在はむしろ「テキストコミュニケーション」の進化の方が顕著である。20億人の月間アクティブユーザーを抱えるFacebookがいま最も力を入れているのが「Messenger」であり、従来のSMSを無用化、電話番号さえ不要にして、新しい時代のチャットをつくろうとしている。ビデオメッセージも発展すると思うが、メインストリームは引き続き「テキスト」によるコミュニケーションだ。
24年後も、テキストコミュニケーションが残るなら、スクリーンは必要だ。それは、スマートフォンの進化形なのか、スマホがケータイを過去のモノにしたように、他の何かに置き換わるのか。

少なくとも「携帯 + 電話」の延長線上の発想というのは限界にきている。

Photo by rawpixel on Unsplash


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投稿者:
Creative Edge School Books

投稿日:
2018年9月13日(木)

初回掲載:
2016年1月18日(月)
シンクゼロマガジン「デザインフィクション」
デザインフィクション/第三回「人が機械をみてセクシーと感じる理由。24年後のコミュニケーション手段は?」

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