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Photoshop を悪者にするな!

6月22日に「Spotting Image Manipulation with AI」という記事が公開されました。翻訳記事もAdobe公式ブログで公開されています。

人工知能でフェイク画像を見破る

新しいテクノロジーが生み出す可能性がある負のインパクトに対しては、私たち全員が社会制度と社会的慣習の変化によって応えていく共同責任を担っているのです。

Photoshopの達人にしかできなかった高度なレタッチや切り抜き作業が今後、AI技術によってコモディティ化していくことは容易に想像できますが、作業の敷居が下がれば当然、悪用する人も増えるでしょう。Adobeとしては「改ざんを見破る技術も持っているぞ」と主張しておかないといけない。


学生たちが作り始めた芸能人とのツーショット写真

ここ数ヶ月ほど、学生向けに「PhotoshopのAI機能を活用した画像処理」を教える授業をやっていました。トライアルなので試験的なものです。
この手の体験学習は、作品づくりの大半の時間を「操作」に費やしてしまうので、作品は一発勝負、講評もできない状態でした。要は、操作に時間がかかりすぎるので作品の完成度を上げたり、評価し合う時間が取れないという問題です。

この問題をAI機能で解決したのが「Photoshop AI 講座」です。
写真の補正や切り抜き、レタッチ、マスク作成など、今まで時間がかかっていた作業をAI機能である程度自動化できたことで、時間に余裕ができ、バリエーションを作ったり、じっくり講評することが可能になりました。


この授業で(冒頭の記事に関連した)事件がありました。

数人の学生が、ネットから好きな芸能人やスポーツ選手の写真を手にいれて、自分が写っている写真と合成し始めたのです。
(AIが自動的に被写体を選択してくれるんだから、やりたくなる気持ちはわかる)

大谷翔平選手とのツーショット写真を作った学生がSNSに投稿しようとして、先生に「それはダメだぞ!」と注意されていましたが、まぁ見事な合成でフェイクとは思えない仕上がり。
PhotoshopのAI機能(Select Subject)を使ったことで、試行錯誤する時間が十分確保できたようですね。わざと解像度を下げて、それっぽく見せるテクニックも使っている。


強化されるPhotoshopのAI機能

一昨日、Photoshopの公式チャネルで「Photoshop Sneak Peek: New Content-Aware Fill」という動画が公開されました。

「Content-Aware Fill(コンテンツに応じた塗りつぶし)の強化版が近々、Photoshopに搭載されるかもしれませんよ」というSneakデモです。
見ていただければわかりますが、新たに専用ワークスペースが追加されていて、簡単な操作でより自然なレタッチ処理ができるようになっています。
ますます難易度が下がりますね。

今まで、スーパーテクニックと呼ばれていた高度な操作が「AI機能に代替されていく」ことで、バリエーションをたくさん作って比較検討に十分時間を使えるようになる。
「作業は奪う」けど「クリエイティビィティ(創造性)は奪わない」ということです。


それは作品か、フェイク画像か

フェイク画像については過去、何度か事件が起こっています。
7月19日に出演したCC道場で解説していますので一部引用しておきます。

番組の46分あたりから話しています。


Photoshopを「芸」にしているアベレージ・ロブを紹介。
インスタのフォロワーは30万人を超える。

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Photoshopを使った高度なフェイク画像ですが、誰が見ても明らかに「偽物」であることがわかるので、エンターテインメントになっている。

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笑って済ませることができないのが報道。
これは、レバノン空爆の加工写真(2007年)。Photoshopで黒煙を足している。上手な画像処理ではないので私たちが見ればすぐわかるレベル。

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大きな事件になってしまったので、記事を配信したロイターは「Photoshop規制」ガイドラインを発表(Photoshopでやってはいけない表現、使用禁止の機能などを決めた)。

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「ねつ造」問題はさまざまなメディアで取り上げられた。

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Adobeとしては「改ざんを見破る技術も持っているぞ」と主張しておかないといけない。
※この記事の冒頭で書いたことをそのままコピー
加工された写真を見破る技術を公開した(2007年)

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どこまでが「作品」として成立し、どこから「フェイク画像」なのか、みんなで考えよう。

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今までは、Photoshopの高度なテクニックをマスターしないとできなかった画像処理が、AI機能によって誰でも利用可能なツールになる。
まだ、一部の作業に限定したことなので実際は「つなぎの既存技術」が必要で、そう簡単なことではないのですが、この分野の技術進歩というのは凄まじく速いので、早々に「Photoshop職人の定義」も変わっていくでしょう。

写真や動画の説得力というのは大変強いので、高度な技術が身近になれば、遊び半分のイタズラが大炎上に発展することもある。
クリエイティブの表現の幅を狭めるような歪なルールは避けなくてはいけませんが、フェイクは許されないこと。

学生さん向けのPhotoshop体験授業で、こんな話を真剣に取り上げないといけない時代になりました。

本物そっくりに処理するAI機能と、
それを見破るAI機能が、1つのツールに搭載される未来。


Photoshop を悪者にするな!


Information

ロサンゼルスで開催される「Adobe MAX 2018」の関連情報をTwitterで投稿します。

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投稿者:
Creative Edge School Books

投稿日:
2018年9月13日


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