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【論文紹介②】江戸時代のコミュニティ



コミュニティについて、面白い研究ノートを見つけました。



生活満足度の高い持続可能なコミュニティ・モデルをめざして :江戸時代のコミュニティを手がかりとして (追手門学院大学 安村 克己 先生)



この論文では、持続可能な社会を構築するには、生活満足度の高い持続可能なコミュニティが必要である、という主張をされています。


簡単に言えば、

「みんなが満足していて、長く続いていくコミュニティ(地域)が増えれば、安定した社会って作られるよね」

ということです。この論文は、その主張の正当性を補強するための論文です。


こうした場合、一般的には実際に安定している社会(過疎地域の村など)を調査対象にし、聞き取り調査や観察を中心にその村のコミュニティ特性を調べる、という方法がとられます。


しかしこの著者は、「現代には安定した社会ってあまりないよね」ってことで、なんと260年以上安定していた江戸時代を調査対象にしています。


(過去のコミュニティって研究できるんだ…)
個人的にコミュニティはナマモノだと考えていた私はちょっと驚きです。

具体的には、資料をもとに江戸時代にどのようなコミュニティが存在していたのかを調べています。その上で、コミュニティと安定した社会の関係性を体系的に描き出しています。


論文の中には、江戸時代の資料が多数引用されていますが、江戸時代に出版されたような古文書ではなく、近年出版された江戸時代に関する本を参考にしています。(歴史研究ではないので)


その上で、江戸時代が長く続いたのは、

・住民の生活満足度が高かったこと
・住民が人なつっこかった(鎖国なのにいきなり来た外国人と超仲良くなったとか)
・「自分たちの問題は自分たちで解決する」という住民自治の意識があった

などを挙げ、締めくくっています。




結構おもしろかったです。


結局、コミュニティが長く持続するためには、今も昔も変わりません。誰かがやってくれる、という部外者意識ではなく、当事者意識をしっかり持つことがいつの時代も大事なんですね。


加えて、メンバーの変わらない、新しい情報が入って来ない、といったコミュニティは、必ずマンネリ化を生みます。その点で、人なつっこい性格で閉鎖的ではなく、オープンな性格を有していた江戸時代の住民は、コミュニティを持続していくための要素を無意識に兼ね備えていたのかもしれません。

(ペリー来航時の資料から引用しているのですが、外国人が日本人と交流した際、日本人の親切さと愛想の良さに虜になった話が記載されています)


江戸っ子というと今で言う職人気質、というイメージがありましたがそうでもないみたいです。


江戸時代といえど、「なるほどなあ」と納得させられる内容でした。
というより、現代ではなく、江戸時代のコミュニティを対象にした筆者がすごい。


みなさんも是非。


書籍購入費などに使います。 みなさんのおかげでたくさんの記事が書けています。ありがとうございます。