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はじめての北大総合博物館

 小川流れる緑豊かな北海道大学構内の一角に、アーチ型の入口が印象的な建物がある。1929年に建てられた旧理学部本館、現在の北海道大学総合博物館である。
 誰でも無料で入館できるほか、月1回ほどの頻度で市民向けの講座が開講される。夜間開館を利用し、北大のサークルが講演会・展示会を主催することもあるようだ。大学の構成員と市民の交流の場かつ、市民の日常的な学びの場として博物館を機能させようとする意志が感じられた。

 北大総合博物館は、”展示物=「モノ」と情報=「コト」が合わさってはじめて、歴史や未来が語られる”という理念を掲げる。北海道大学の前身、札幌農学校を紹介する「北大の歴史/通底する精神」では、歴史上の出来事というより、学校にゆかりのある人物を軸に話が展開する。人物が「モノ」と「コト」とをつなぐ接着剤として作用することによって、この博物館の理念が実現しているように思えた。
 展示の本筋からの「寄り道」も見逃せない。マサチューセッツ農科大学の学長を務めたクラーク博士が同大学ボート部の大会優勝に沸いた小話、博士が農学校の学生に送った近況報告の手紙など、歴史上の人物に親しみを感じさせるようなエピソードや展示物は、彼らの実在感を高める。こうした段階を経ることで、伝えたい歴史が、より鮮明に観客の目に映るのではないだろうか。

 「北大の歴史」のあとは、学部やセンターごとの展示スペース「北大のいま」が続く。それぞれの機関で展示形態に違いが出るのが面白い。特定の研究に焦点を当てる展示もあれば、入門的な説明を試みる展示もある。明快に区切られた空間で展開される「不揃いな」展示は、その奥にいる人々の息づかいそのものなのだろう。

各学部が掲示板で情報を発信する。
写真は水産学部の例

2023/09/27
北海道大学総合博物館 @北海道

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