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ことのはいけばな 大寒 70 候 『欸冬華(ふきのはなさく)』

白読

派手に動くヴァイオリニストがもつヴァイオリンの形と
ピアノを弾くピアニストの後ろ姿は相似形。

天井は丸い方がいい。
頭蓋骨も丸いのだから。

効率の良さを重視した空間は四角ばかり。
音が綺麗に響かない感じがする。

更に悪い素材ばかりで囲まれた空間では、
花のもちだって悪い。
人は鈍い生き物になっている。
花の反応は真っ当。

楽器というのが人の身体の拡張でもあり、楽器によって、より高らかに強く憧れへの呼びかけ、あるいは自然のもつ記すことのできないポリフォニックで壮大で調和した音曲に近づけるために生まれ、洗練されてきたのだとしたら、原型には人の形があるだろうし、またその楽器が生まれた風土や風景が、遠く離れても見えるものなのだろう。
ヴァイオリンの音色からは風の渡る草原が見えた。

【色彩と律動する時間】
ドビュッシーは、出版社への手紙の中でこう書いているという。
「私は次第に、音楽というのは、その本質からして、伝統的で厳格な形式の中で繰り広げられるようなものではないと確信するに至っております。それは、律動づけられた時間と色彩とでできているのです!」


『欸冬華(ふきのはなさく)』あるいは「音楽は律動づけられた時間と色彩とでできているのです!」に寄せて

*春まだき 蕗は風道 水の道 富貴と吹く気と 福の喜のみち
*懐かしき 光景連れて くる音いろ ひよめき薄き 頭蓋の丸さ 
*雪起こし 土より出ずる 蕗の花 我が骨もまた 笛となります
*雪原に 風の渡りて 寝起しの 結晶破れ 草の芽めざめ   
*枯野にて まず目を開けし 花地べた 睫毛の奥に うるむ光よ
*うるむ花 目を開いたら 果てしなき 白昼もまた 底知れぬ闇  

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