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まなかい;小雪 第60候『橘始黄(たちばなはじめてきばむ)』

橘は伝説の木。

徐福伝説は各地にあるし、垂仁天皇は田島守にこの実を探しに行かせたという。

別名は「非時香具実(ときじくかぐのこのみ)」。


橘は『夏は来ぬ』でも「橘の香る 軒端の」と歌われ、

太陽エネルギーをたくさん吸い込んだ果実も香り高く、また輝くような色だ。

だから「かぐのこのみ」の「かぐ」にはおそらくその二つの意味、かぐわしいと、かがやくを併せ持っていることだろう。

仙境に生えるとされるこの実は、不老長寿をもたらすとされた。


橘そのものではないが、レモン、蜜柑、金柑、酢橘、柚子、、、、柑橘類が冬空に輝く。寒く、暗い冬、冬至に向かって太陽は勢いが衰えていく。その太陽の復活のシンボルであり、依代とされるのが柑橘類、とりわけ橘、柚子、鏡餅に飾る橙、お正月にしつらえられる仏手柑など。太陽の再生を願い、柚子湯に入れば融通が効いて年を安心して越せる。湯は寒さを和らげ、硬くなってしまいがちな心と体をほぐす。治癒ともなるし、またお湯を通して、太陽のエネルギーを香りとともに身体に付与してくれる。太陽や植物と融合するのだ。その力は風邪やウィルスを祓ってくれる。

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お正月もクリスマスも、冬至由来ということで、毎年作成している「冬至かざり」は、洋の東西を跨いで古来双方でその力にあやかって人々が身に沿わせてきた植物を合わせたもの。榧、樅、冬芽をつけた楠科のヤマコウバシ(これらはいずれも香り高い)、柚子、宿木、凪筏、そして熊笹。赤い実の柊や白い綿など付ければクリスマスにも寄るし、赤い実を南天とかにすれば、お正月にも寄せることができる。

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鮮やかな黄金色の果実。常磐の葉っぱ。白く芳しい花、常世の国の、食べれば魂を賦活する、ソウルフード。冬の果実と色彩と香ばしさ。北の人々には、まさしく時を超える希望の菓子だったのだろう。



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