見出し画像

行政の職員の方向けに、資料作成のオンライン研修を実施しました。

会社員時代の、広告代理店でのコピーライト経験や、商業施設の広報担当としてのプレスリリース経験、現在の行政書士としての書類作成経験などを踏まえて、書類作成研修のお仕事をいただくことが時折あります。

今回のご依頼テーマは「相手を動かす!」

そもそも企画書や提案書は、相手を動かすためのものなので、”相手を動かさない企画書” というのは存在しないはずですが、実際には誰も動かせない書類も多いものです。私自身も多いに心当たりがありますが、書類作成に没頭すると、自分の熱い想いを綴っただけの資料になっていたり、綺麗にデザインを整えることに注力してしまうこと、ありますよね。

書類作成の一番の肝は、何を書くかではなく、提案相手の心はどうしたら動くのかを見極めること。結局、プレゼンテーションと一緒ですね。

相手の心を見極める重要性を痛感する、広告会社時代の忘れられない経験があります。

当時勤めていた広告会社がコンペに参加したときのことです。
社内で総力を結集させて作った企画案をプレゼンテーションしましたが敗北。採用されたのは他社でした。その時、どうしても納得できなかったうちの担当者は、こっそりメーカー側の担当者に採用された企画内容を教えてもらいました。
しかしそれは、どう見ても、しょぼい!お世辞にも、さすが!これなら負けても仕方ない!と納得できるような内容ではありませんでした。

全く納得できない担当者はさらにどんなプレゼンテーションだったかを確認しました。するとその会社は、プレゼンテーションの大半の時間を、これまでの実績のアピールに当てていたことがわかりました。会社としてどんな実績があり、どんな賞をとっていて、どんな評価を得ているか。今回の企画提案のプレゼンテーション自体は、おまけ程度にしかされなかったそうです。

なんだそれ!ずるい!と、うちの社員は腹を立て、私も、もしや出来レースだったんじゃないか!?とすら思いました。
そもそも企画提案にはお金がかかります。資料を作成し、データやデザインを用意し、人を動かし、必要な素材を購入したりします。にも関わらず採用されなければただの赤字です。それが企画提案には全くお金をかけず、ただ実績自慢をするだけで採用されるなら、どこだってそうしたいわ!という思いでいっぱいになりました。

そんなことでしばらくは悶々と過ごしていたのですが、ある日、ハッとしました。もしかしてその競合会社は最良のプレゼンをしたのではないか?と。

私たちがプレゼンする相手は、メーカーの担当者。そこに決裁者はいません。各社から提案を受けたメーカー担当者は、まずは各社の提案内容を吟味した上で、1つを選び、決裁者(上司)に提案、すなわちプレゼンしなければなりません。さらに、広告は当たるかどうかが難しい代物。私たちが考える”良い広告”だからといって当たるとは限らない。そうなると選んだ責任を問われる可能性もあります。

そういう状況の中どれが一番良い企画・アイデアかを選ぶのはとても重責。その担当者が自分の身を案じるなら、"もっとも言い訳しやすい案”を採用するのが自然なのです。

どれが良いアイデアか、というのを誰もが納得するように説明するのには難しい。しかし、どんな実績のある会社を選んだのかは、客観的でわかりやすい理由となります。

もちろん今となっては、本当はどんな理由でその会社の案が採用されたのかはわかりません。でも、提案する相手のことを本音ベースで把握・想像することの重要性を、改めて感じるとても印象に残る経験でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?