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note de 小説「時間旅行者レポート」その5


「お母さん、ハロー。
オリバーです。
そちらはどう?」

「あなた・・・その声。
ホントに坊やなんだね。

坊や!
あなたって人は!

こっちはねぇ
朝から取材の電話やら
町のえらいさんやらが
やってきて大変さね。

おまけに
いたずら電話も多くてさ。


お父ちゃん、今日は
工場お休みして役場に
出向いて記者会見だ、って
背広来て出てったよぉ。

あなた。
テレビにでてたの
ほんとなのかい?

かあさんやお父ちゃんに
相談もしないで
ほんとにもぉ!」

電話越しの母は
怒っているのか
舞い上がっているのかが
つかめないほど
興奮していた。

「ホントなのかね。
時間旅行するって?

選ばれたの
坊やなんだってね。

そうなんだねぇ。

母さんとお父ちゃんの
事なら心配いらん。
だけど心配なのは
あなさたね。

大丈夫なのかい?

もし帰ってこれないなんて
事になったら・・・

もう宇宙旅行は
当たり前になったけどさ
時空を超えるって・・・」

「そう
そこなんだよ母さん。

実は怖いんだ。

でもディメンションズ社から
お金、もらっちゃったんだ

こんな大金
返すにも返せないし。

こんな流れになっちゃったもんで
断らずに受けようかなって
考えてる」

「死ぬってことなんだよ!」

母がいきなり電話越しで
怒鳴った。

「あなた、たとえ100年前で
生きてたとしたって
この時代にいないってことは
死んでるのと同じじゃないか!

単なる思い出になっちゃうって
事なんだよ。わかってるのかい?」

「うん、一応」

と放ったボクの一言の
頼りなさといったら
なかった。

「お金が・・・

お金が手に入ったんだ。

たぶん、ずっと楽して暮らせる
くらいの大金が更にまだもらえそう
なんだ。

どのくらいかわからないけど

お母さん。
研究所からもらった
前金のほとんど送金します。

二人とも工場なんて辞めて
楽に暮らしてください。

あと
少しだけ使わせて
ください。

一度、高いお酒
飲んでみたかったんだ

なんてね」

「なにバカなこといってるの!

そんなおカネ要らないよぉ

そっちの生活費と学費に充てなさい
大変なんでしょ。

奨学金も返さなきゃいけないし」

「あぁ、その心配はありません。

研究所と大学が今後の資金面は
一切の面倒を見てくれると
いってくれました。

そしてお母さん。

お母さんの声を聞いたら
判断がつきました。

迷いがとれました。
ありがとう。

ちょっとだけ
いってきます。
自分の意思で
いってみたいんです。

決して
世間が騒いでいるからでは
ありませんよ。

大丈夫。
必ずもどりますから

じゃあ。Ciao.」

ボクは言いたいことだけ伝えて
母のレスポンスを待たずに
通話ボタンを切った。

そしてその指のまま
スマートウォッチの
電話機能を使った。

「Hallo Dimentionz GmbH
Guten Tag・・・」

通話の向こう側は
ディメンションズ社だ。

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続きます。



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