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note de 小説「時間旅行者レポート」その7


いそぎBARを飛び出したボクは
自分の立場というものを
知った。

刃物のように危険なのだ、と。

ささいな会話すら
傍受されている自分。

その自分と関わった
相手の存在は確実に
消される。

つまり
サーベルのように
いや
まさにそれは
極東ヤーパンで
刀匠が鍛え上げた
NIHONTOのような
破壊力と切れ味なのだ。

それが
サヤを出て
町に抜刀されたまま
歩いている。

ダメだ・・危険すぎる!
早く保護されなければ
早く、早く。

そしてボクは
「・・・08、
近くにいるんでしょ?」

ポツリと
独り言のように
ささやいた。

「はい、ここに」

背後で
こちらのポツリを
返した人物がいた。

それが08だった。

ーーーーーーーーーー

石畳の道沿いにある
カフェテラス。

そこで改めて
話がしたいと08は
持ちかけてきた。

賑わう市街地。
それとはよそに
ボクたちは無言で
コーヒーが運ばれてくる
のを待っていた。

通りすぎる人だかりは
22世紀のミュンヘンの
市民たち。

今日はホームゲームなのだろう。


バイエルンミュンヘンの
サポーターユニフォームが
やたらと目立つ。

「ブンデスで無敗
らしいですね。

ボクも生粋のミュンヘンっ子
ですから盛り上がります」

まったく嬉しそうな
そぶりを見せない
この30代前後の
全身黒スーツの男は
熱いコーヒーを
すすりながら言った。

通りすぎる雑踏の
たった一人でも
ボクの存在に
気づかないでほしい。

どうか気づかないで・・・

そう思い、Ray-Banの
サングラスを手のハラで
クイッとかけ直した。

不安を察した08が
ボクに語りかけた。

「Herrオリバー
ご安心ください。

実はあなたの周囲には
すでに護衛がついています。

それどころか
100メートル先上空からも。

スナイパーが
あなたに降りかかる
危険から守っているのです」

だとしたら
ボクすら狙われている
ことになるな。

コーヒーを
飲んでいる瞬間に
パンっいう音の前に
頭が弾け飛ぶ、という
具合だろう。

それにしても
ボクの周囲って・・・

「たとえばあそこの
カップル二人組。

たとえばあそこで
信号をわたろうとしている
初老の男性。

そして駐車中の
トラックドライバー。

みんな関係者にして
あなたの護衛です」

ボクはキョロキョロと
振り向く。

しかし誰一人として
目が合わない。

「みんなプロです。
プロの護衛団です。

ご安心ください」

08はそう言って
コーヒーを飲み終えた。

「ところで
Herrオリバー。

ここでひとつ
クイズです。

気を悪くしないでください。
簡単なクイズですから。

ではいきます。

1+1の解 を教えてください」

出たな、ボクは思った。
なので別段に
気を悪くしたりはしない。

ここに来て
この問題は当然に

ではない。

2ではない他の解を
この08は、いや
今回の時間旅行では
必要とされるのだろう。

ボクはこう答えた。

「より大きな1になる」

「ほう、その心は?」

「たとえば大きなドロ団子が
2個あったとします。

それらをAbsturz(潰す)
させると大きな1個の
ドロ団子になる

いかがですか?」

「そうですか・・・

それがあなたの解
なのですね。


ってすいません。
特に正解なんてありません

ですが
正解です。
別に 2 でもよかった。
しかしあなたが 2 と
答ていたらどうなっていたと
思います?

おそらく
パンっという
乾いた音の前に
あなたの頭は
体から引きちぎれて

文字通りの
2個になっていたと
おもいます。

クスッ

いえ冗談ですよ」

ボクはこれには
気を悪くした。

「エジソンの
1足す1理論をご存じの
ようですね。

だとしたら
大正解です」

と08は嬉しそうに
笑った。

さすがは
わが研究所の見込んだヒト
だ、とも。

ーーーーーーーーーーーー

続きます。




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