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note de 小説「時間旅行者レポート」その19


ガガーーーン!
ガアーーーン!
バキューーン!!

という炸裂音。


ピストルから飛び出した
弾丸3発は天井を突き抜け
薬きょうが足元で踊った。

これにはさすがに
ギャルソンたちも驚いた。


いきなりの至近距離での
轟音と発煙と閃光と
汚いドイツ語だったからだ。

彼らは
慌てふためいて
逃げ出してしまった。


ボクは勝った。
勝利を確信した。

ここに生きる誰も
死なせずに済んだ。

実はボクはそのことも
心配していた。

もし誰かを
死なせでもすると
歴史が変わってしまう。

これはボクの責任であり
それも心配のタネだったのだ。

最小限で最大限の成果を出す!


何よりも無事に
ウェルズ氏を助け出した事が
収穫だった。


「だ、大丈夫ですか
ウェルズさん。

助けに来・・」

「おっせーよ!!
馬鹿野郎!!

このままおっ死ぬ
かと思ったじゃーか!

なんなんだよ
コイツらぁ。

気づいたら
ここにふん縛れて
たんだよ!」



しばしの沈黙。


「ん、なんだ。
でもまぁ…あれだ。

見事だ!
よく分かったな
オリバー。


『EFLEH』のことだ!

助けろ!を逆に読んで
戻ってこいって意味だ。

なんかよぉ
あいつらに金を
脅迫されたんだよ。

だから機転を
利かしてやったんだ。

『わかった。だったら
カネ持ってこさせるから
電話させろ!』
つってよぉ
ホテルに電話したんだよ。

やつらはEnglishがわからん。
それに幸いホテルのRESEPTIONIST
は英語がわかってな。

たすかったぜ・・


大したもんだ医学生。

お前を信じてた。
あんがとな・・いてて、

て、おいオマエ!
手ぇ、貸せ」


そしてボクはウェルズ氏を
縛っていた縄を解き
手を差し伸べた。

ほどきながら侘びた。
心から侘びた。

そうしたら涙が
こぼれてきた。

「ごめんなさい
ごめんなさい、ウェルズさん。

実はそのボク、あなたの事
疑ってたんです。

お金せしめたの
あなたなんじゃないかって!

ごめんなさい。
こんなにボクを
信じてくれたのにぃ!

許してください
わぁーーん。」



ボクの震える背中を
ウェルズ氏はポン、と
たたいた。

「俺っちよぉ
ガキがいねえぇんだよ。

昔、若いころ自動車事故で
亡くしてな。

もし生きてたら
お前さんくらいの
歳だ。

だからうれしかったんだ。
息子とパリで酒が飲めた気がしてよ。


そしたらなんと
お前はまだホントは
産まれてねぇと
きたもんだ。
200年先だときたもんだ!

俺っち愉快でゆかいでよぉ。

まぁ気にすんなぃ。
こっちは楽しかったよ

がっはっははは・・・」

ウェルズ氏はボクにそう告げると
大事そうに何かを胸ポケットから
取り出した。


その何かとは。


それは大事な大事な
ゴーグルだった。



「隠しポケットってやつよ!

ヤッコさんら
このポケットには
気が付かなかったとみえる。


ほらよ。
これお前さんのダイジだろ。

それメガネか?
すんげぇな。

右から左に
光る文字が流れてらぁ」


そして返してもらったゴーグルには
緊急を告げるアラームが
鳴り響いていた。

BeeP! BeeP!!と。

NOTFALL! Vermittler!!
NOTFALL! Vermittler!!
(緊急! 取り次げ!!)

それは急ぎコールせよとの
22世紀からの指示だった。

涙でぬれた目に映ったモニターは
とてもきれいだった・・・が・・・


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つづきます。



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