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書籍「転がる香港に苔は生えない」を読んで香港を歩く

旅に出る前に旅先のエッセイを読むのが好きだ。
今回は星野博美著「転がる香港に苔は生えない」のkindle版を買い、香港旅行の一週間前から少しずつ読み進めた。

以下、ややネタバレあり。

「転がる香港に苔は生えない」は1997年の香港の話であり、香港が中国に返還される前後を書いている。

一方、それから27年を経た2024年現在。
自分の中の香港といえば、雨傘運動を筆頭に民主主義を守るためのデモが続いたがそれも抑えられ一国二制度がゆらいでいる…そんなイメージだ。
台湾でも日本でも出会うことのなさそうな濃い人々が登場するが、彼らはいまどうしているのか、自由を求めて密航してきた王さんはどうしているのか…。気になってしまう。
台湾に撤退してきた国民党兵士たちがいる一方で、台湾に渡る船に乗れなかったという元国民党兵士、そういう人たちの存在を初めて知った。
本当に多種多様な人々が香港に住んでいるのだ。

旅行中も少しずつ茶餐廳で読み進めた。
3泊4日の旅では本の中のような人たちには会えなかったけど、彼らが生活している様子を想像しながら香港を歩くのは、ただ歩くのとは違った面白さがあった。

本の中で登場する店名を検索しても出てこない。
たまたま入った店で、こういう場所だろうかと想像する。
本には物価についての記述はなかったが、どこの店に入っても値段が高くて驚いた。これも27年という歳月を表しているのだろう。

台湾に帰ってから読むと、読む前とは違って街の雰囲気は分かるので、リアルな街を想像しながら読むことができた。

終わりが近づくにつれて、自分の香港の旅が本当に終わってしまう感じがして名残惜しかった。
読み終えると、なんだか寂しくて心にぽっかりと穴が開いた。

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