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Jordan Rakei - What We Call Life (2021)

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総評: 4/10


Jordan Rakeiってそもそも何が売りなんだっけ。どんな人なんだったっけ。この作品を聴いていると、それが根底から分からなくなる。

プロダクション(音作り)は素晴らしい。バンドサウンドとエレクトロニクスを滑らかに融合させる。ソウル/R&Bの生音は薄れ、エレクトロニクスによる緻密な音作りにシフトしている。"Send My Love", "Illusion", "Brace"などを聴けばすぐ分かるが、シンセの細かな響きやストリングスも含めた重層的なテクスチャーの作り込みなど、質は文句無しに高い。バンドメンバーとの生演奏で骨格を作り、Rakei自らがプロデューサー役となって音を作っていったそうだ。

歌詞はかなり正直なものになっている。セラピーでこれまでの人生を振り返り、挫折、喪失、敗北、苦悩、それらを一度棚卸しした。正論ばかりでなく卑しい感情や醜い表情まで、心の内を全て書き並べている。それイコール良いということにはならないが、必然性と面白さはある。

しかし。なぜか心に全く響いてこないし、繰り返し聴きたいとも全く思わない。なぜかと考えながら1ヶ月聴いてきたが、理由は最初から分かっている。曲そのものに全く魅力が無いのだ。率直に言って、優れていると思えるメロディが一つも(本当に一つも)無い。

バックサウンドの求めるレベルにボーカルメロディが全く達していない。ボーカルを軸としたポップアルバムである以上、これでは評価のしようがない。いくら聴いても、サウンドが空虚に響く一方である。その声とサウンドには魅力があるのだから、次作ではよりレベルアップした姿を見たいと感じた。



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