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最近聴いているアルバム2022.07


Washed Out 『Within and Without』(2011)

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チルウェイヴというより、ドリームポップとしての傑作だと思っている。当時はBeach House『Bloom』やWild Nothing『Nocturne』などドリームポップの傑作が出ていてそれらと同列に聴いていたが、群を抜いて好き。なのにそれらより振り返られることが少ないのは、チルウェイヴという短命なムーヴメントの代表作みたいに思われてる弊害だと思う。

ベッドルームの閉じたメランコリーと時間感覚が分からなくなるクラブ特有の浮遊感とを結びつけたのは天才だと思ったし、独特の哀感(≒喪失感)は今聴いても変わらず胸を打つ。アルバムのクライマックス("Before", "You And I")を越えた後のタイトル曲の暗さ、これが私の性格にまで影響を与えてしまった。



Silversun Pickups 『Better Nature』(2015)

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Billy Corganの面倒臭さをゼロにしたスマパンのような真面目で硬派なオルタナバンドだと思っているが、ニューウェーブ要素を加えて意外な柔らかさを見せた傑作。淡く切ない雰囲気が良いし、曲もよく書けている。金色に輝く郊外の夕焼けによく合う。最近のロックシーンには、こういう普通に良いバンドがあまりいない気がする。"Pins And Needles", "Circadian Rythmns", "Latchkey Kids"などキャッチーな佳曲が多いが、特にラスト曲"The Wild Kind"は名曲。



Steven Wilson 『To The Bone』(2017)

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Porcupine Treeなどのプロジェクトを含めた彼の全ディスコグラフィの中で、群を抜いて最高傑作だと思っている。Peter Gabriel『So』, Kate Bush『Hounds of Love』, Tears for Fears『Seeds of Love』(『Big Chair』ではないのがポイント), Talk Talk『Colour Of Spring』(『Spirit Of Eden』ではないのがポイント)といったアルバム、つまりプログレポップの金字塔への愛を展開する。"Refuge"に至っては、それらを超越しているとすら本気で思う。



44th Move 『44th Move』(2020)

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2020年のAlfa Mistは今一度原点であるピアノに立ち返った活動を展開していた。2月のEP『On My Ones』はピアノのみで彼の視覚的でシネマティックな世界を表現した佳作であったし、そして4月の本作は名ドラマーRichard Spavenとの化学反応を求めた作品だ。AlfaのメロウなピアノとRichard特有の硬くカッチリしたスネアの鳴りとの相性は抜群で、普段どこか曖昧で眩惑的な印象の彼の世界が、ここまで明確な輪郭を伴って立ち上がるのは初めての感覚。2020年にはYussef DayesがRocco Palladino, Charlie Staceyと組んだエキサイティングな大傑作をリリースしていたが、全く別のアプローチによる本作も素晴らしい傑作。



No Age 『Goons Be Gone』(2020)

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10年以上「Sonic Youthを好きになりたい⇔好きになれない」を繰り返している私だが、SYチルドレンともいうべきこのアルバムはなぜかスッと頭に入ってくる。拘ってるけどそう見せない「押し付けの無さ」「しれっと感」がSYより好きなのかもしれない。録音も過去作と違い、クリアで聴きやすい。10年くらい前、チープな紙の輸入盤(CDが直に入ってるやつ)を買ってNo AgeとかFidlarとかBlack Lipsとか聴き倒してたな。懐かしい。



John Scodield『John Scofield』(2022)

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ギターの素描。孤独を感じさせる密室の作品がジャンル問わず好きな私だが、にしても本作は掴みどころがない。掴みどころと言うのは、つまり演奏者の感情がどこにあるのか?の把握のしやすさと思うが、本作は演奏者の感情が読めない。それが妙な前衛性と不気味さを持って迫ってくる。カフェインの取り過ぎで頭がぼーっとしている時に聴くと頭がおかしくなる気がする。



Muse "Kill Or Be Killed"

これまでのヘヴィサイドのMuseを形作って来た要素が矢継ぎ早に繰り出される。1.5倍速で全アルバムの要素を繋ぎ合わせたダイジェスト版のような。新作についてメンバーは「新曲によるベストアルバム」と語っている。"Compliance"や"Will Of The People"を聴いた時には訝しんでしまったが、この曲を聴いてその信憑性が一気に高まった。

だが、それより注目したいのがミックス。私は『Drones』以降のMuseの魅力は、ライブではなく、むしろスタジオ録音版にあると思っている。各楽器の分離の良さ、スネアの録音の良さ、ツーバスとミュートギターの合わせ方、ベース/ボーカルのファズの精細さ等々、テクスチャーへの凝りが異常なレベルにある。この曲はその意味で彼らの到達点にある。音数が多いのにこれだけ整理された音を作れるバンドは、他にあまり思いつかない。今のMuseはともすれば大道芸ライブバンドのように勘違いされがちだが、この点において、もう少し注目されるべきだと思う。

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