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White Lies 『As I Try Not To Fall Apart』(2022)

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5/10
★★★★★☆☆☆☆☆


3rd『Big TV』(2013)までは王道UKロックを継ぐぞという気概を感じさせる入魂のアルバムを作ってきたが、それ以降はメインストリームから意図的に外れたところで、自らの創作意欲と好奇心を自由に羽ばたかせてきた印象がある。

4th『Friends』(2016)では80'sのThe Ramones, Tom Petty, Talking Heads, Roxy Musicといったミュージシャンの雰囲気を淡いシンセポップに結合させた。5th『Five』(2019)では元から持っていたストレートなUSギターロックの要素を強め、若返りを図った。バンド自身にとって理想的なキャリアを築いてきたのではと思う。

そして本作はここ2作の集大成とでも呼ぶべき、躍動感と実験性に溢れたニューウェーブロックとなっている。それは先行シングル3曲を聴けば分かる。

"Am I Really Going To Die ?"はファンキーなベースをはじめ躍動感に溢れた曲で、少し頭でっかちになりがちだった彼らにしてはかなり肉体的なグルーヴに溢れている。"As I Try Not To Fall Apart"は前2作で試みたシンセポップの完成形で、洗練の極みといった音を聴かせる。"I Don't Wanna Go To Mars"は前作路線のダイナミックなギターロック。金持ちの宇宙旅行を貶す歌詞はピンと来ないが、音は豪快で楽しい。

ただ、その活力でアルバム全編を統一出来ないのがこのバンドの惜しい点だとずっと思っている。どのアルバムも、曲ごとの出来に差があり、中弛みすることが多い。本作もしかり。3,5,6,7,9は他の曲と比べて焦点が絞れておらず、凝り過ぎ/気張り過ぎで、メロディも不明瞭。どうも長ったらしく感じてしまう。この辺りの曲をバシッと明確でキャッチーな曲で置き換えることが出来れば最高傑作が生まれるとずっと思っているのだが、そんな簡単なものではないようだ。

このバンドを聴いていて、期待を大きく超える曲やアルバムに出会った記憶があまり無い。最終曲"There Is No Cure For It"のような名曲を作れるからこそ、このバンドには大きな期待をしてしまうし、もっと出来るはずなのにと擬かしくなってしまう。



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