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【詩】私とつがいのぬくもり

貴方の視線を吸い込みすぎて
私は沈黙と共に溺れる
四百年あとの約束なのに
回遊し続ける過去は
間違いを起こしたの?
これは飲み込まれた未来なの?
吐き出された未来なの?
それとも思い出した未来なの?
嘘と感じる鈍さと筋張った影の味
朽ちてゆく標準形式の生命には
雲と氷とオイルの匂いが残る

私はその夜
暗闇で立っていることが
できなくなってしまいました
取り返しのつかないこと
なのでしょうか
大丈夫だよ
きっとね
優しければいいよ
骨は痛みのないまま
皮膚となります
私は埋め込まれた種子が
鳥に啄まれて芽吹くまで
待ち続けることにします
命が風の中に収まるまで

それでも、たとえ
わずかばかりでも
たぐり寄せたのが
あなたであるなら
背中でうずく羽のあとが
私にはとても懐かしく思える

誰も先にいない
まだ誰も来ない
私は名を告げず
どこまで歩き通せるだろうか
私は私の名が消えてなくなるまで
歩き通せるのだろうか
それは遠い昔に虹を吸い込んだ時とよく似ている

雲と氷とオイルの匂い
公園の遊具も置いていかれたボールも雨にさらされていた
明日は陽の光が右の頬を温める
きっと風の中には時間が存在しない

私の夢は菜の花が私の景色をいっぱいに染め上げること
それまでは足元の鞄の中に小鳥のさえずりを忍ばせて
目覚まし時計を壊し忘れた
黒猫のクレオメを私の膝の上で眠らせて
私はそれをなんと呼べばいいのか
わからなくて
今日はこれから雨になる

それは景色が変わる度に対価をねだる様な、ミツバチが騒がしく飛び跳ねる春の真ん中に息をする人達の集まり
必要のないおもちゃはいらないと、夢を渡される人々が集い
我を忘れて踊る姿を見ている
それこそが究極の希望かもしれないと考え
私は願いを後ろに隠して息をしていました

外の太陽は輪切りのオレンジの様に賛美を滴らせ
概念の嗜好化を唄い
それは新たな宗教を生み出した
僕らは重ねなくてもいい
根幹部分を揃えて踊るだけ
6秒間だけ輪の中に入る
焼き尽くした果てに
迷い進む夜があってもいい

緯度の輪のホログラムが
地球の外郭皮膜として浮んでいる
地上から逃れたロンサムジョージは仲間と共に見下ろしている
経度の輪はモノリスとなり世界を分断してしまった
音も声も吸い上げ
向こう側の未来には届かない
地球のかたちが丸いことも
月があったことさえも

記憶に不安定さを求め
脊髄をかためる
振り向けないのは
影の先が私の指先を
握りしめているから
優越に呼び止められても
響くほどの雷鳴が
耳に入り込んでも
私は泣かない
込み上げてくる唄に従って
目を開けた時
世界が止まる

人生は変わっている
折り目のないページを
めくれば
円周率が書いてある
読み上げるたびに
高揚の曲線から乖離する
ガラクタだらけのキメラのおもちゃに意図を汲まれて停止する
良心の呵責が願いを汲み上げ
一括りにすると暴力が産まれる
勇気とは時間を乗り越えるすべである

白くさえずる記憶が
躊躇いと
ため息の純度を上げて行く
136時間の成層圏外遊泳は
形成される思考を薄く延ばし
ふるいにかけられた視線のみを
投げかける
忘れ行く風の音と匂いが残る
宙の果てに
思い出すべき記憶がある
宙の風の中にそれがある

ノートの隅に埋め込んだ
軽薄な言い訳も
憎しみと共に逃げた経験も
悲しみと共に逃げた経験も
誰にも知られたくない
わたしの衝動を隠す場所を
切り分けることなく
わたしはあなたと約束を交わす
それでもあなたはわたしを
守ってくれますか?

いつからか
通りの見える小窓を
知恵の実がふさいでいる
大人の共感に振り回されていると物語に取り殺される
声を悲しみにそっと差し出すのはよそう
悲しみは思いもよらぬ漂着を
見て見ぬふりをする
塵になって緑に覆われることを望むなら
時を区切ってはいけない
加速度14の世界にて

いつの頃からか海の方が
人を欲し始めた
右の頬に落ちそうな涙を2秒だけ巻き戻す
頬を近づけて
キスをする自由は許して欲しい
60cmの高さの空を歩いて行けば
水平線の向こうに辿り着ける
風の中で大きな声を出してみたら良い
海の中で
雲の中で
緑の中で
吹きつける嵐の中で

君が触れているその岩はだも
何万年何億年先には塵になる
僕らも一瞬で塵になる
あの月も
フクロウの呼び掛けに応えて
いつかは塵になる
本当さ

陽の光を浴びた雄鹿は
その角で黒きものを絡め取り
扉の向こうへ消えた
扉の向こうは何があるのか
熱き心を忘れていないか
悲しみを恐れてはいないか
景色が変わる度に対価をねだる
浅ましさを隠してはいないか
距離の違う希望の上澄みは
遠く夢の果てまで流れている
四つ折りの空から嗚咽が聞こえる

細くなるあなたの吐息に手をつけ
視線を合わせず声もふさぐ
わたしのしていることは
束縛からは遠くなく
熱を帯びたなら帰る場所は必要ない
昨日に思い詰めた焦がれは
今はとても落ち着いて
心臓から躊躇いを抜き取って行く
わたしのしていることは
涙を払いのけるわがままと同じ夢を見る 

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