8.CAC分析

大阪に待ち合わせたのは17時。

「19時までハッピーアワーだから!」という理由で早いのだ。愛梨さんは小柄で可愛らしいのに行動や発言がサバサバしてるのでファンが多いのもわかる気がする。愛車は赤色のCBR400R、センスがあるとしか言いようがない。

類い稀な語学力で国内最大手の素材メーカーの海外営業を任されてる愛梨さんの彼氏というからには、広告とか人材系の意識高いオーラが爆発してる人が来るのかと予想してたが完全に僕のステレオタイプだった。

細身のスラっとした、人あたりのいい優しそうな人。身長は175cm位だろうか。それが遠藤さん。

◆◆

遠藤さんは大学院生。去年大学4年生で航空大学校を受験したけど3次試験でダメで、元々無理なら大学院に行く予定だったそうだ。年齢は1つ上。学歴的には学部生の頃から日本でも知らない人は絶対にいない大学出身で、間違いなくエリートに違いないがそれ以上に話し方にすごく賢さが滲み出ていた。

Qに対してのAが的確過ぎる。

こんな人が3次試験の面接で落ちるわけが無い。

聞くと操縦適性検査がダメだったそうだ。

韓国料理屋でチャミスルとプルコギを楽しみながら、ひと通り積もった話をした後、遠藤さんがノートを取り出した。

『CAC分析』

このノートは本当に売ってたら買いたい。それ位の内容が詰まっている。

そもそも僕はCACの意味も知らず「SWOT分析のような分析方法のひとつか?」位に考えていた。

僕の心を読んだかのように「Civil Aviation College、航空大学校のことね。」と遠藤さんは言う。僕は全然知らなかった。

パイロットは、はっきり言って学歴偏差値的なものは通用しない世界だ。

技術者だからだ。できるかできないか。それだけ。

今でも思うけど腕次第。

でも遠藤さんの分析力はさすがだなと感心するしかない。

いままで試験という試験をくぐり抜けてきたプロ中のプロだ。

勉強のノウハウを上手く職人気質な世界でも昇華できる人だと思う。

「3次試験まではあるのは知ってるよね?まず、試験ってのは客観的に見て全体を把握する必要がある。1番重要なのは分析だから。」そう言って切り貼りで分厚くなった付箋だらけのA4の方眼キャンパスノートが開かれた。


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