齋藤 迅

小説書いています。構造主義的作品と日本酒が大好きです。芥川賞をまず目標に頑張っています…

齋藤 迅

小説書いています。構造主義的作品と日本酒が大好きです。芥川賞をまず目標に頑張っています。まずは手始めにマガジンから掌編/短編小説をどうぞ📚 2020年2月に『濾過』出版しました。 Twitter→https://mobile.twitter.com/contrast_novel

マガジン

  • 掌編/短編小説

    5分から長くても15分で読める作品たちです。少しだけ時間が開いてしまって困っている方、「齋藤迅」の書く小説って面白いのと疑問をお持ちの方などなど、是非是非まずはこちらからお楽しみください。

  • 小説を深く楽しみたい、初学者向けの書評

    小説を「より深く」楽しめるような書評を目指して書いていきます。 具体的には、学問としての「文学」や言語学、小説を書く人間として学んでいる諸々の手法などをもとに書いていきます。個人の感覚に頼るのではなく、誰とでも共有できる論理的な楽しみ方をご紹介します。 「こんな読み方があったのか!」と発見があれば幸いです。 「この作品だとどう読める?」みたいなリクエストもお待ちしております。

  • 愚考録

    小説について考えたこと、そもそもの僕の活動について考えたことなど、「思考」というところにフォーカスした記事たちです。 こいつこんな作品書いてるけどどんな人間なんだ? と思った方は是非読んでみてください。

  • あとがき

    投稿した小説の解説・あとがきをまとめていきます。 あの小説はどんな経緯で書かれたのか。どんな意味だったのか。そういった疑問解消のため少しだけ、お手伝いさせていただきます。

  • 中/長編小説

    連載形式での長めの小説です。 目安として2万字からの作品を掲載しています。ハードル高いな、という方は是非「掌編/短編小説」の方からお読みください!

最近の記事

何度も挫折していた『一般言語学講義』にようやく打ち勝った。

    • Center of the Room(短編小説)

       新聞紙を敷き詰めた部屋は、油絵の独特の匂いで満たされている。鼻につく匂いは、部屋に入った瞬間にはキツく感じるものの、段々と麻痺してきて、最終的には気にならなくなる。  絵を描くことを応援してくれている母でさえ、この匂いだけは嫌そうにしていた。だけど私にとってはただただ安心する匂いだった。この匂いに包まれている間は、目標に一歩一歩、近づけている気がする。  朝の時間は試験のための勉強をすることに決めていた。開かれたカーテンの外から、朝の日射しが差し込んでいる。窓の脇にベッ

      • 遠景(短編小説)

         走り出したと同時に景色がなめらかに背後へと流れていく。目に映る景色は全て、学生時代に見たときと変わりないように見えた。  車内販売を引き止めて、ビールをひと缶購入する。プルタブを引き上げると心地よい音がして、まるで旅行でもしているような気持ちを僕に与えた。  流れる景色が遮音壁によって隠される。隠されてみると、物理的にも記憶としても距離が生まれて、それまで見ていた景色がどんなものだったかもう分からなくなる。  そういうことを感じたくて衝動的に乗り込んだ新幹線だった。  

        • 花を飾る(短編小説)

          「いまどき珍しいですね」  曖昧な笑顔を返しながら、取ってつけたように「好きなんですよ。ほら、家にあると、なんだか嬉しいでしょ」と答えた。  投げかけられた言葉通り、僕の他にはスーツ姿の若い男は店内に見当たらない。スーツ姿の男性もいるにはいたが、奥さんへのプレゼントを買っているらしい、五十代も半ばの男性が一人だけだった。 「是非、SNSなんかに投稿してください。お兄さんみたいな若い方が買ってくれるのが、一番の宣伝ですから」  店員の女性は、悪びれる様子もなくそう言った。

        何度も挫折していた『一般言語学講義』にようやく打ち勝った。

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        記事

          モチーフの共通項から語り手の思いを捉える〜年森瑛『N/A』を読んで〜

          (2〜4分で読むことが可能です。) 第127回文學界新人賞を受賞した、年森瑛『N/A』は生々しいエピソードが多く散りばめられた作品です。 今回はその物語の生々しさに対して、どうしてタイトルが無機質な「N/A」=Not Available/Not Applicable(該当なし、などの意)とされているのか。どうして無機質なモチーフによって主人公「まどか」の内面が描かれているのかを書いていこうと思います。 1.あらゆる枠組みへの拒絶の物語 まずはあらすじの確認です。 文藝春秋

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          記憶とシーンの欠落が意味するもの〜宇佐見りん『くるまの娘』を読んで〜

          (3〜4分で読むことが可能です。) 宇佐見りん『くるまの娘』は、登場人物たちの「記憶」と、描かれた「シーン」の欠落の関係性に焦点を当てて読むことで、作者が描こうとしたであろうものの一部が、より鮮明に浮かび上がります。 今回はそのことについて、簡単に書いていこうと思います。 1.「くるま」で旅するぎこちない家族 まずはざっと、物語の内容確認から行っていきたいと思います。 今作はタイトルにも記載がある通り、「くるま」が1つの重要なモチーフとして扱われています。 その事実を代

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          より深く、より鮮やかに小説を楽しみたい方に向けた書評を投稿していきます。

          (2分程度で読むことが可能です。) こんばんは。小説を書いている齋藤迅です。 Twitter上ではつぶやいていたのですが、noteのフォロワーさんが800人を超えました🎉 フォローしていただいている皆様、本当にありがとうございます! たくさんの方にフォローしていただいているにもかかわらず、最近はあまり投稿ができていません。 折角フォローしていただいなら、楽しんでいただきたい。そう思い、改めて継続的な投稿を行っていこうかと考えています。 何を投稿しようか。やはり小説を書こ

          より深く、より鮮やかに小説を楽しみたい方に向けた書評を投稿していきます。

          短編小説『石落としと消失』(織田作之助青春賞3次選考落選作)

           巨大な石垣に惹かれた先で目にしたものは、青空の下で悠然と佇む金沢城だった。美しい城に、あの日の僕はただただ圧倒されていた。あの日以来、城は僕の瞼の裏に焼き付いている。戻ることもできなければ、多くの人々がそうするように、器用に先へと進むこともできない息苦しいこの日々を乗り越えたいつかの日に、僕はあの城とあの旅が僕に与えたものの大きさを懐かしむことだろう。  お気に入りの絵本を半分も読み聞かせないうちに、幼い娘は眠ってしまった。自分ではなく妻に似たことに心底感謝した二重の瞼は

          短編小説『石落としと消失』(織田作之助青春賞3次選考落選作)

          半年ちょっと頑張っていた公募作品が完成し、先程送りました。 4月からまた小説の投稿を行います。 良かったら読んでください。 久々に時間をかけて小説を書いてきたことで、またレベルアップできた気がしています。

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          たった12文字で感動を生み出す『限りなく透明に近いブルー』について語る

          ーー飛行機の音ではなかった。(村上龍『限りなく透明に近いブルー』新装版 講談社文庫 P7より) 368万部以上売れた、芥川賞受賞作史上最も売れている作品の、第1文目がこれです。 小説において初めの1文は、兎に角重要なものだと、よく「小説の書き方」のような本に書いてあります。 このことには多くの理由があり、ここで説明するには長くなってしまいますので割愛しますが、確かに1つの真実であるかもしれません。 有名な小説の冒頭としては、川端康成『雪国』に下記のようなものがあります。

          たった12文字で感動を生み出す『限りなく透明に近いブルー』について語る

          短編小説『二つの黒子』

           目が覚めるのとほとんど同時に、僕は彼女の右足のことを考えていた。記憶が確かであれば、彼女の右足の太腿には2つ並んだ黒子(ほくろ)がついている。2つの黒子はちょうど真ん中で皮膚を折り返したらぴったりと重なるであろう、均一な形と大きさをしていた。  急に彼女のことを思い出すなんて、夢でも見ていたのだろうか。眠っている間に自分が見ていたはずの何事かを思い出そうとしたが、当然に徒労のうちに終わる。  もやもやとした中で寝返りを打った。カーテンのない窓の外を眺めると、もう夏がやって

          短編小説『二つの黒子』

          今週は1本小説を公開する予定です。 友人のアーティスト(って僕が言いたかっただけ)と話して、一度僕の「好き」を詰め込んだ作品を公開してみようと思っています。 よかったら楽しみに待っていてください。

          今週は1本小説を公開する予定です。 友人のアーティスト(って僕が言いたかっただけ)と話して、一度僕の「好き」を詰め込んだ作品を公開してみようと思っています。 よかったら楽しみに待っていてください。

          村上春樹がSEX以外に考えていそうなこと。

          こんばんは。 今回はタイトルで惹かれた方も多いのではないでしょうか? 本日はTwitterで見かけた「村上春樹の小説を読んだ女子高生が成人男性がっこんなにSEXのことしか考えていないのかと恐怖を覚えた」というtweetを受けまして、村上春樹作品の楽しみ方を書いていきたいと思います。 皆さんもそうかもしれませんが、僕の周りにも実は「ハルキスト」と呼ばれるような人が何人かいます。 正直に言えば僕は、村上春樹作品の(特に中長編の)面白味というものを言語化する術を持っていませんで

          村上春樹がSEX以外に考えていそうなこと。

          大人になりかけの僕が今、家族というものについて考えること〜石原燃「赤い砂を蹴る」を読んで〜

          こんばんは。雨が止みましたね。 突然ですが、皆さんは家族ってどういう存在だと思っていますか? 仲はいいですか? それとも何か複雑な関係でしょうか? 本日は久しぶりに読書感想文のようなものを書いてみようかと思います。 テーマとして「家族のあり方」みたいなものを取り扱いました。 だからお父さんやお母さんが嫌いだ! なんて思っている方。もしくは結婚しようと思っていたり、したばかりだという方。そして暫く親とは会ってないんだよね、という方は是非是非読んでみてください! 読んだ作品は

          大人になりかけの僕が今、家族というものについて考えること〜石原燃「赤い砂を蹴る」を読んで〜

          No.023「傾く男」

          No.023「傾く男」

          新作連載小説を構想中のため、暫くの間現在公開している『欠落』『残火』のような短い過去作を公開していく予定です。 最も古いもので3年も前の作品ですが、楽しんでいただけたらとても嬉しい。 手書きの文字って素敵ですからね✍️

          新作連載小説を構想中のため、暫くの間現在公開している『欠落』『残火』のような短い過去作を公開していく予定です。 最も古いもので3年も前の作品ですが、楽しんでいただけたらとても嬉しい。 手書きの文字って素敵ですからね✍️