「アライブがん専門医のカルテ」の魅力

心の機微を細やかに描く感動作

2020年1月放送開始フジテレビドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」は、終了後半年が経過した今でも何度も見返して感動している名作です。
今後、アライブの魅力について様々な角度から綴ってみたいと思います。

その瞬間、胸を衝かれた

 第五話終盤、梶山先生がそれまで何度も告げようとして果たせなかった重大な秘密を恩田先生に遂に語りだすシーンがあります。
 この場面に至るまでも「いいドラマだなぁ」と思いながら拝見していましたが、この瞬間から一気にこのドラマに惹き込まれてしまいました。
 梶山先生がずっと心に抱えてきたその秘密を、恩田先生に話す機会を迎える度にそのタイミングを逃したり、臆して言い出せなくなったり、そんなじりじりする展開が続いていた状況で、ついにその瞬間を迎えました。
 視聴者はその件を追っている関河記者がきっと何か新しい情報をつかんだであろうことを知らされたため、何とか彼の話を先に聞いてほしいという気持ちにさせられた直後に物語が大きく展開し、息苦しいほど胸を衝かれる瞬間を迎えます。

梶山先生の葛藤に心揺さぶられる

 意を決して恩田先生に話を切り出したものの、なかなか核心に触れることができないでいる梶山先生の、後ろ姿から漂う緊張感、もう後には引けないと心を決めてからも、身のすくむような怖さや後ろめたさ、申し訳なさや悔恨のような、いろいろな気持ちが混じりあいながら落ちていく涙、そして何とか絞り出される掠れた声、そのすべてに胸を抉られ、いたたまれない気持ちになりました。
 第五話に至るまでの様々なシーンで、梶山先生が次第に追い詰められていくのがじわじわと心に効いていたのか、その瞬間に完全に梶山先生に気持ちを持っていかれました。 
 そして、その秘密がまさか自分の一番大切な人に関わっているなどと気づいていない恩田先生が、梶山先生を思い遣って駆け寄り肩を抱いたその手がより梶山先生を追い詰めてしまう辛さ。その手を振りほどき、ついに話し始めてしまった梶山先生が、いたたまれなさから逃れるように弁解めいた言葉をとめどなく吐き出してしまう、半ばパニックのような仕草や表情の一つひとつに畳みかけられて気持ちが大きく揺さぶられました。

静かに崩壊する二人の信頼関係

 一方で、この直前まで梶山先生を信頼し、尊敬し、感謝し、共に戦ってきた恩田先生は、あまりの衝撃に言葉を失いますが、 詳細を問いただすでもなく、責め立てることもなく、松下奈緒さんが最小限のセリフと微妙な表情の変化で困惑と動揺を表現されていてこちらも胸が痛みます。
 そしてスッと恩田先生の表情が一変し、鋭利な言葉を投げつけます。これまでずっと培われてきたお互いの信頼関係も、育まれてきた相手への思い遣りの気持ちも、この一言で一瞬にして切り裂かれ、崩壊してしまいました。
 積み上げられた信頼関係が失われていく場面が、いわゆる修羅場のような激昂シーンでないことでより深く胸に沈んでいくような気がします。 

木村佳乃さんの圧倒的な表現力 

 このシーンを通して、木村佳乃さんの表現力の豊かさを改めて実感しました。木村佳乃さんは、全十一話を通して梶山薫という明快なようでいて複雑な人物を、とても細やかな表現の積み重ねによって演じられています。
 たくさんのご出演作品で様々な役柄を演じてこられましたが、木村佳乃さんの誠実な役作りを堪能できるのもこのドラマの一つの魅力だと思います。

様々な登場人物の人間模様を繊細に描いている作品

 「アライブ がん専門医のカルテ」は主人公の腫瘍内科医・恩田心先生が周囲の同僚達と共に様々ながんの患者さんたちと向き合っていく人間ドラマですので、一話毎にそれぞれの登場人物の人間模様が細やかに描かれていきます。
 若干マニアックな視点になってしまうかもしれませんが心に響いたこと、チェックしてみていただきたいことなど今後も綴ってまいりたいと思います。

 本作品の全ての関係者の皆様に最大の感謝と称賛を。
 この作品を愛するすべての方々のために是非DVD・Bru-lay化を。
 そして是非Second seasonを。

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