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料理家の話すこと


森岡書店銀座店でのあるイベント
先日、少し驚いたことがありました。インスタグラムでフォローしている料理家のワタナベマキがあるお知らせを投稿していました(ワタナベマキさんは料理家としてテレビなどに出演している有名人なので、敬称は省きます。このコラムでは同じルールで書きます)。
森岡書店銀座店で自著『旬菜ごよみ365日』の展示を1週間行うのだが、土曜日の夜18時からトークイベントを行います、というのがその内容。
ご存じの方もいるかと思いますが、森岡書店銀座店は一冊の本を売る本屋です。実質的にはギャラリーで、決して広くないスペースです。
うちの店を開くときの分析では、絶版になっておらず、新刊で買える本としては、ワタナベマキのレシピ本の冊数は、料理家別では5本の指に入ります。間違いなく人気料理家のひとりです。インスタグラムのフォロワーは4.5万人、一つの投稿に1000以上「いいね!」、がつきます。
ワタナベマキファンとしてはぜひ参加したいと(『旬菜ごよみ365日』はうちの本屋で売れていました)、森岡書店に電話しましたが、その日は定休日。翌日、開店の13時を待ちかねて電話しました。確か15人くらいしか入れないスペースです。もう締め切っているかと思いましたが、あっさり大丈夫との返事。
驚いたのはそれから1週間ほど経ったころ、ワタナベマキがインスタグラムで「まだ席に余裕があります」と投稿していたことです。
フォロワー4.5万人、ひとつの投稿に1000以上「いいね!」なのに15席ほどのトークイベントがすぐに埋まらない。
銀座蔦屋での藤井恵
同じようなことがまたありました。
今月の上旬、銀座蔦屋書店で料理研究家・藤井恵のトークイベント&サイン会がありました(藤井恵は自著のプロフィールでは「料理研究家」と表記しています。ワタナベマキは「料理家」としていますので、それぞれの表記に従います)。

自著の新刊『和えサラダ』の宣伝・販促を兼ねてのイベントです。このイベントにも参加したのですが、席が40以上設けられていたにもかかわらず、30人ちょっとの参加者でした。満席にはなっていないということです(脱線しますが、この手のイベントは参加者がほぼ女性なので、行くのには勇気がいります)。
私見では、藤井恵は栗原はるみ、有元葉子に次ぐ位置にいる料理研究家です。管理栄養士でもあり、栄養学の裏付けがあるレシピを作っています。
料理家の魅力をみせるには
ワタナベマキ、藤井恵のケースをどう考えればいいのでしょう。人気料理家なのに、イベントには(おそらく)主催者の予想していたほどの人が集まらない。それとも、これは驚くほどのことではないのでしょうか。
自分なりに考えて出した結論は、「料理家(料理研究家)は料理を作ってこそ、その人の魅力を見せることができる」
というものです。当たり前、と言われるかもしれません。しかし、料理家のトークイベントを企画することは、料理家に料理を作らせないでもイベントの魅力は薄れない、と判断しています。
料理家は芸能人、文化人、トップアスリートなど有名人とは違う位置にいます。やはり彼女たち(彼たちでもいいですが)料理を大勢の前で作って欲しい。それが料理を作ることの楽しさを伝えるいちばんの方法だと思うからです。

料理家の魅力に触れられる素敵な料理イベントとは。このことを最近、考えていますが、なかなかいいアイディアは浮かびません。そろそろ何かやらんといかんなあ。

2019年5月24日 クック・バイ・ブック 上村武男

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