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Clubhouseでは他人や知人の全力の雑談が聞き手にとっての価値になる

昨日、ClubhouseでSpeaker(話し手)の立場で20人前後(半分以上知らない人)の部屋で1時間強程話しました。ここでの経験を経て、わかったことをメモ書きします。

Clubhouseの価値は次の様なものだと感じました。

スピーカー(話し手):当人同士しかわからないハイコンテクストのゆるい会話を前提とした高度な雑談的な対話ができる

オーディエンス(聞き手):カフェの隣の席で全然知らない他人が面白そうな話をしているのを興味深く聴いているような話を聞ける

ハイコンテクストな会話と対話

まずは「当人同士しかわからないゆるい会話を前提とした高度な対話」(いわゆるハイコンテクストな会話)についてです。ここで「会話」と「対話」は次の様に定義します。

会話:文脈を共有している人同士での話し合い
対話:文脈を共有していない人同士での話し合い

昨日Clubhouseでこの記事をベースに「スパイバー 250億円の調達についてゆるく解説」というルームを元外資系金融勤務で現在フィンテック系のスタートアップの取締役の方(Sさん)と一緒に行いました。

進め方としてはSさんさんが司会となり、スパイバー に関する質問をSさんが私にして、私が答えるというものです。

私は、オンライン勉強会をイメージして、なるべく平易にわかりやすく説明をすることを最初の方は心がけました。つまり、オーディエンスを意識した話し方です。

例えば、金融のバックグラウンドを持っているSさんと私が普通に会話をすれば、「スプレッド」や「ハイイールド」といった言葉の解説は不要です。

ですが、例えば、Sさんさんが「アメリカで今ハイイールドマーケットが盛り上がっているんですよ。」と発言された際に、私は「たぶんハイイールドと言っても聴いている人はわからないので、解説をしてもらえますか」みたいなことをちょいちょい話しました。

この感じだと、スムーズな会話にならないと言うことがわかりました。すなわち、Clubhouse的な雑談の良さが出ないのです。当然ですが、金融のバックグラウンドを持つSさんと私が普通に会話をすれば、「ハイイールドとは」みたいな確認は不要です。文脈を共有しているからです。

一方で、ある程度は文脈は共有をしていても、深いところに行くと認識の違いは出てきます。その際には「対話」が必要になってきます。例えばSさんから次の様な質問が来ました。

「証券化というのは、キャッシュフローの源泉を外出しすることになるので、価値がSPVに移るということですよね。ということは、今回の250億円の調達がスパイバー に価値として残らなくなる。そう考えると、今回の調達はスパイバー の企業価値に対する貢献は限定的ではないかと思うんです。この点、村上さんはどう思いますか?」

金融のバックグラウンドがないと意味が不明かもしれません。実際、同じルームで話し手になってもらった方に「Sさんの質問の意味はわかりますか?」と聴いたところ、「質問の意味がわかりません。」とのことでした。普通はそうなると思います。

ですが、私としては、唸るほどの「なるほど、面白い視点ですね!」となるわけです。ここで、私はSさんの質問を通訳せず、聞き手を意識せず

あー、なるほどですね。その視点はなかったです。これは面白い問いですね。今回のケースでいうと、証券化の投資家は、スパイバー が支払うライセンスフィーや工場利用料を裏づけとしますよね。でも、工場から生産させる生産物の売上も一部リベニューシェアになっているかもしれないです。・・・(以下、カット)

という感じで、聞き手を置いてけぼりにする金融バックグラウンド同士の会話(ある種の対話)を展開しました。

そんな中、話している当人達はこの雑談が抜群に面白いわけですね。なぜならば、雑談から着想を得られるからです。

隣にいる他人の話に横で聞いている感じ

一方で、オーディエンスは置いてけぼりにされてつまらないかというと、必ずしもそうではないです。実際、ルームから多くの人が抜けるわけでもなかったです。では、業界用語連発で半分ぐらいしかわからない会話をなぜ聴いているのでしょうか。

その理由が2点目の「カフェの隣の席で全然知らない他人が面白そうな話をしているのを興味深く聴いている様な感じ」です。

この点がCLUBHOUSEでのポイントかと感じました。ツイッターにより、普段個人が考えていることが文字化されました。Facebookにより個人の日常生活等の行動が可視化されました。インスタグラムでは、普段人が目にしているものが写真化されました。そしてCLUBHOUSEでは、「普段行われている身内でしか通用しないような会話が」が可視化されたように思います。

なので、意味が半分ぐらいしかわからなくても、「金融の人たちって普段こういう会話をしているんだ」という点に面白さがあったのではないでしょうか。

ファミレスで勉強や仕事をしている中、隣の席で彼氏と彼女が喧嘩をしてて、自分の全然知らない人の名前が出まくる会話を聞き耳を立てながら聴く中、「こんなことしている場合じゃないけど、面白そうだからもうちょい聴いてみるか」的な感じといえます。

もちろん、知人が話し手として話している場合も、普段とは違う話し手の側面も見れることで、「この人ってこういうことも話すんだ」的な発見できるかもしれません。詳しくは書きませんが、分人の可視化を楽しむという点も大きい様に感じます。

安心して雑談できるClubhouseの仕組み

実際、Clubhouseの仕組みも秀逸です。コメント欄等がないおかげで話し手は他の人の意見に左右されず好きなことを自由に話せます(録音機能がない、ストックとして残らないというのも雑談には大事)。CLUBHOUSEは講演ではないので、話し手は聞き手を意識する必要はある意味で全くないと言えるでしょう。

他方、聞き手は、話し手の全力の雑談を聞き耳を立てる感じで面白く聴くことができます。しかも、他のことを「しながら」とかなので、「この会話つまんねーな。別のルームに行くか」みたいな感じで容易に部屋のスイッチもできます。

これが仮に有料のメディアの音声配信ならば「お金を払ってこれってつまらない。もう解約しよう」な感じになります。この点、Clubhouseは自分にとっては有益かもしれないし、ただの無益かもしれない会話をストレスなく聴けるということになっているように感じます。

CLUBHHOUSEの価値はいろいろあるかと思います。この3日使った感覚としては、話し手にとっては「聞き手を意識せず全力で雑談できるとともにセレンディピティがある」こと、聞き手は「知人や他人の全力の雑談を聴ける」ことがClubhouseの価値になるのではいかと感じております。

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