ひとりでファミレス行けるもん

純です。久しぶりの日記です。

春ですね。これから薄着になるまでが女装の外出シーズン、イベントも相次ぎます。

その日、初めてのイベントだったので、ひとりでいくのも心細いので、友人3人で行こうということになりました。3人、数学の問題みたいで悪いんですが、A、B、Cと名付けます。A、Bは連れだって池袋から、Cは遅れて合流です。

待ち合わせをした場所が新宿御苑前のファミレスのジョナサン。この選択が間違いだったと気付いたのが、入り口の扉をあけて、店に入った瞬間です。

明るいんです。電気が明るいのもあるんですが、雰囲気が健全。

いつも暗闇で深海魚か、アンコウのように生息している私にとって、この明るさは吸血鬼が灰になるかのような恐怖。

どうみても大学生のバイト、寝不足の上戸彩のようなウェイトレスの「いらっしゃいませ。おひとりですか?」という声に、か細く「はい」と言ったのが精いっぱい。案内されたのが店内入ってすぐ奥の小さな2人掛けのテーブル。

右隣は二十歳代のカップルさん、ひとつ空きテーブル挟んで左隣は女性ふたり。どう考えても、このテーブルは店内に入ると必ず目に入る場所。

おい、本当にここでいいのか?上戸彩。お前、店長に怒られないのか。と目で合図をしたが、「ごゆっくりどうぞ」と残酷な天使のささやき。この状態で、ゆっくりできる人がいたらお目にかかりたい。

「注文決まりましたら、ボタンを押してください」

お腹減っていて、がっしり系の料理をとも思いましたが、女子らしくパンケーキとドリンクバーを、メニューを指さしながら高めの声で頼みました。ドリンクバーを頼んだのはバーに行くふりをして、顔見知りのAさんを探すため。

右隣の大学生くらいの男の子は恋人に話をするのに懸命。私の事を気づいていないのでしょうか。まったく動じません。左隣の女子も何食わぬ顔をして話をしています。

「私が純女に見えるくらい可愛い」という可能性がゼロだという事実は私でも理解しています。もし、私の生まれの町だったら、私のようなものがファミレスにいたら、パンダがエサを食べているくらいの注目度を浴びていた事でしょう。やはり、東京新宿は恐るべし、ゲイタウン、大人の街と感じた次第。

と、少し余裕が出た瞬間、不幸が訪れるもの。右すぐ隣の空いていると思ったテーブルに、二十代後半、少し大柄な女子が戻ってきました。衝撃。おっぱいがでかい。それに胸元開いて、父の割れ目、いや、乳の谷間が見えます。

店の注目度が上がり、視線がこちらに。純女の威力半端ねえーー。隣の大学生も意識してやんの。ちゃんと彼女見てろ若造。

私にとってはかなりの重圧、思わず顔伏せましたもの。

私は助けを求めるモールス信号のようにテーブルの下で「もう、ジョナサンにいます、座っています」とメッセをしました。

としばらくした後、店内を仲間が歩く天使の姿が。まあ、新宿とはいえ、そうそう女装さんがファミレスにいるわけではない、その上、誰か人を探しているとなると、きっと私の救援隊。

だけど、彼女はすがるような眼差しで見ている私を見つけられない。いや、ひょっとして私が純女と同じに見えて気づかない。こんな状況でも、そういう能天気な事を考えた頭に若干イラついたタイミングで彼女はこちらを見たんですよね。

声を上げるわけにもいかないので、手を振りましたよ。ええ、無人島の漂流者が偶然通りかかった船に手を振るように、必死で振りました。

私の熱意が通じたのか、無事に哀れな女装1名は発見されました。

ちょうど通りかかったウエイトレスがいたので、私は慌てて、「スミマセーン」と呼びました。外人か?「席、変わっていいデスカ?」

ウエイトレスはお互いをみて、完璧に理解したのか、「かしこまりました」と言って、私のテーブルの上のレシートを持ってレジに戻ります。

「さっさと、席を移ちゃいましょう」とAさんの言葉に、荷物を片手に後ろをついていくと、なんと、席は店の一番奥。見回しても見えなかったはず。

ホントいい勉強しました。

そこから楽しく会話ができました。お連れのBさんはかなり短いスカートを履いておられて、

「道を歩いていて、じっと見られたときに、微笑みかえすくらいでないとねえ」

と余裕のお言葉。まだまだ、純は修業が足らないということですね。

そこから、いつもの女装談義。女装3人寄れば姦しい。もう、純、怖くないわ。

で、雑談も続いている最中

後から来る予定の友人Cさんが何事もなく私達の奥まったテーブルにやって来た。あんなに私は苦労したのに、どういう魔法を使ったの?だから質問した。

「なんでこのテーブルって分かったの?」

Cさんはさらりと、店に入った時、「自分と同じような待ち合わせいる?」とウェイトレスに言ったら、

「あちらのコーナーの奥ですよ」

と返事があったという事。

堂々としているのが一番なのね。なんかそのさりげなさが素敵。いい歳こいて情けない。

ただ、この緊張感、癖になりそうで、怖い。


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