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肺葉切除後にQOLを低下させる3つの要因とは?

手術後は身体が受けたさまざまなダメージのため、QOL(Quality of life; 生活の質)が低下します。今のところ、その要因は大きく3つに分けることができると考えています。

1. 痛み

外科手術なのですから「痛い」ということは容易に想像できますが、その痛みの部位や種類、原因は実に多彩です。

いわゆる創(きず)は3カ所。脇の下やや後方から乳首のそばまで約15cmほど大きく切開した創の他に、排液のドレーンを挿入していた小さな創が2カ所です。これらは縫合してありますが、特に前者は腕を動かすと引っ張られますし、衣服との摩擦でも痛みを生じます。一方、ドレーンの創は身体の動きにあまり左右されません。

忘れてはならないのは、肺を切除するために肋骨も2本切っているということです。肋骨を骨折した経験のある方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。実は僕も過去に一度あります。この骨折の痛みはまた別物で、くしゃみや咳をするときには特に強く痛みます。

そして術後もっとも長く残ると言われているのが、肋骨の周りの神経が傷つけられたことによるさまざまな痛みです。これは痛みというよりも、神経の過剰な興奮による知覚異常と表現したほうがよいでしょう。胸の前から脇の下、背部の肩甲骨あたりに到るまで、まるでギプスで固められたかのような感覚。皮膚の表面を直接触ってみても、皮下にプラスチックか鉄板のようなものが何か一枚あって、隔てられているような重苦しいつっぱり感があります。

そのほかにも、肺葉やそこにつながる気管支などが切除されているわけですから、そうした臓器そのものの欠損によってもさまざまな痛みが生じています。さらに、空いたスペースへ心臓や胃など他の臓器が少しずつ移動するため、食べ物や飲み物を飲み込んだときの違和感や胸のつかえなども広い意味での痛みに含まれるでしょう。

こうした痛みの多くは、身体を起こしている状態からベッドなどに横になったときにより強く感じられます。というより、起きているときは身体を動かすことによってなんとかその辛さを紛らわすことができているのですが、いったんベッドに背を預けた途端、寝返りを打つこともままならず、ちょっとした体重の移動にも苦痛を伴うようになるため、ひたすらじっとしていることによってより強く痛みを意識してしまうのではないでしょうか。

そのため、仮に眠ることができても長くて2時間、短ければ30分足らずで目が覚めてしまい、いったん起き上がってインターバルを取らずにはいられません。

これらの痛みを軽減するために、内服の消炎鎮痛薬ロキソプロフェン(商品名:ロキソニン®️)が一日2回分処方されています。
たまたま妻が椎間板ヘルニアの治療で消炎鎮痛薬のアセトアミノフェン(商品名:カロナール®️)の他にプレガバリン(商品名:リリカ®️)を処方されているのですが、このプレガバリンは神経因性疼痛に有効とされているので、肋骨まわりの神経のトラブルにも効果が期待できるのではないかという気がしています。今度、外来を受診するときに相談できるといいのですが、外科の先生はあまり薬のことには興味がないかもしれません。

ところで、それ以外に医師からも推奨されている有効な疼痛対策がもうひとつあります。それは「温めること」です。これは入院中に本当に驚いたのですが、シャワーで熱めのお湯を当てていると、ほぼ痛みがなくなったと思えるほど楽になります。
残念なことに自宅では風呂場や脱衣所が寒すぎて、浴室を暖房でガンガン暖めても病院に比べると効果がいまひとつなのですが、抜糸して湯船に浸かれるようになったら、しっかりと身体を暖めたいと思います。

普段はなるべく身体を冷やさないようにし、衣服に貼るタイプの使い捨てカイロを使っています。また、食事をすると身体の中から温まるので、やはり少し痛みが軽減されるようにも感じています。

2. 声のかすれ/声の出しづらさ

全身麻酔のため、長時間に渡って気管へ挿管をしていたわけですから、抜管後も気道粘膜が過敏になっており、傷が治りかけているときのようなむず痒さが常に付きまといます。その結果、声を出そうとして空気が通過すると咳が出そうになったりします。

ウィスパリング・ヴォイスというか、内緒話をするときのひそひそ声のような感じで発声すると楽なのですが、まともに発声すると短い単語ひとつくらいが精一杯で、ある程度長くしゃべろうとするとすぐに咳が出そうになってしまいます。

これは気温差のある部屋へ移動したときなどに特に顕著で、暖かい部屋でじっとしている時には結構声が出ることもあるのですが、寝て起きたり、トイレに立ったりするとすぐに悪化します。

3. 呼吸に伴う息苦しさ

少し長く歩いたり、階段を上ったりすると息が切れるのでよくわかります。さすがに肺の全容量の4分の1を失ったわけですから、すぐには対応できないのも当然です。退院する頃から急に寒くなったため、まだ家の外へ歩いて出かけるという形でのリハビリも十分行えていませんが、気温差があると咳が出そうになってしまうので、ここは慎重に進めざるを得ないところです。

のど元過ぎれば熱さを忘れる?

術後9日目の時点での感想はこんなところです。これが1カ月、一年と時間が経つに連れて、そんなに辛かったっけ?と思ったりするかもしれませんので、とりあえず今、感じているところを記しておきます。

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