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『繋(ツナガリ)』 (作 くうねる)

朝が来る。
僕は、ボディースーツの上から
こども服を着て、大声で挨拶をする。
「世界の皆さん、おはようございます!」
この街に着いて半年、
こんなに学校に行きたいと思ったことはない。
早く奴らに会いたいよ。
 
この街に着いてすぐ夏休みが来て、
学校のプールで奴らと泳いだ。
健太は、平泳ぎでカエルになったり、
康太はバタフライと言って蝶々になったり、
草太のクロールなんて、ハイハイしてる芋虫みたいだった。
ね、そのままじゃ泳げないのかな?
魚になっちゃえばいいのにな。
人間って大変だなーって、不思議に思ってた。
 
飛行場に行った秋の遠足。
ヘリコプターや、
旅客機が並んでた。
飛行機が離陸するのを見て、
奴らはみんなと一緒に「わーわー」言って
やけに興奮しているんだ。
「僕は虹色飛行機のパイロットになるよ。」
草太が言うと、
「俺は虹色UFOだー!」
健太がふざけた、みたいだった。
ね、みんなはそのままじゃ飛べないのかな?
鳥になっちゃえばいいのにな。
人間って面白いなーって思ってた。
 
 
冬が来て、昨日のこと。
健太が僕に
「はいこれ。」と緑色の紙袋をくれた。
赤いリボンをほどくと、
人の手の形をした編み物が入っていた。
「手袋だ。あったかいんだぜ。」
健太が言い、
「健康草な三太だ。三太からのプレゼントだ!」
と鼻をかくと、康太と草太が親指を突き出し、「いいね!」をした。
 
僕の胸が とっても あったかくなった。
「ありがとう。三太。」
無理して冗談につきあったら、顔が赤くなった。
三太から、トナカイトナカイと冷やかされ、
僕はとっても嬉しかった。
僕には友達ができた。
友達ってあったかいし、嬉しい。
奴らが、僕らになったんだ。
ありがたいな、ありがたい。
 
 
僕はアリ型宇宙人。
アリみたいな頭をしているよ。
眠る前、全部の服を脱いで、布団に入って僕は思う。
 
地球って不思議だし、面白い。
また明日会える三人の声が聴こえる。
友達ってあったかいし、嬉しい。
有り難いな、有り難い。
僕はアリ型宇宙人。



・・・・・・・・・

まるで時期外れですが
これがピタリと来るので
あげました。

すれちがう
旅人たちよ
ありがとう

の思いを込めて。

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