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「総天然色ハウス」~猫のバーバラさんの巻~

「あれ、ひらがなじゃないの?」って思たかしら?
隼人君が夢中になっている総天然色ハウスを、わたくし比呂乃も体験したくて、今日はこっそりのぞきに来ました。

「担当の比呂乃でございます。」
いつも、裏庭をしゃなりしゃなりと上品に歩いていく、猫のバーバラさんに声をかけた。
「なんだい。あの男の子じゃないのかい。」バーバラさんのしわがれた声に私は魅了された。
「ええ。でも、私はタロットや、おてあてや、リンパケアができます。」
「あたしも130歳になったよ。冥土の土産だ、比呂乃さんとやらのタロットの腕を見せて貰おう。」
「ありがとうございます。」

開いたタロットには、過去の悲しみと癒えきれぬ思いの後が…。
「バーバラさん、以前、愛する方が…」
「そうさ。この年まで生きるとさすがに、何もなきゃおかしいだろ?」
「・・・」
「お前さんも、あったんだろ?」
「ええ」
「泣くようなことじゃないさ。人生の目的はね、愛する人と出会うことなんだ。そんな相手と出会えて愛することができた。そして相手は星になった。それでアガリだ。時が経つごとに、それがお前さんの力になっていくよ。」
「ありがとう。バーバラさん。どっちがセッションされたんだか、わからないわ。」
「あはははは。100年早い、いや70年くらいかね」とバーバラさんがいたずらっぽく笑った。

次は、フェイシャルだ。仰向けになり、瞼を閉じたバーバラさんのお顔をケアしていく。
「あー、くすぐったい。やめておくれ。
おまえさん、私のこと見てるだろ?」
「ええまあ。見ないとできないですし。」
「見ないでおくれ。あー恥ずかしい。」
ベッドで仰向けで、ジタバタしたいけど、しきれずに赤面しているバーバラさん。
なんてかわいい、大好き。
シャボンをたっぷり泡立てて、お顔に
「やめておくれよー。」
バーバラさんは少し身をよじって抵抗しだす。
「いつもちょいちょいっと手で顔洗う程度なんだ。
大袈裟なことはよしとくれ。」
「洗うより刺激は少ないですよ。ふわふわですし。」
「あー。」
洗顔後のパックで、ようやくおとなしくしてくれた。パックで、顔が隠れたから氣が樂になったのだろう、また軽口が飛び出した。
「ふー。化けの皮が剥がれるんじゃないかと、ヒヤヒヤしたよ。」

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