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【ストーリーとしての競争戦略】

概要

優れた戦略とは人に話したくなるようなものでなければならない。

社内だけでなく、社外の人までをワクワクさせ惹き込んでしまうようなストーリー。

事業活動を行う上で恵まれた環境にいることは稀であり、スタートアップもしかり。

どんなに戦略が素晴らしくても、決して成功が絶対なものとは言えない。

しかし、成功の大きな要因を含むかもしれない要素であることは確かであると感じさせてくれる一冊。

私的な要約

戦略とは?

・起業化はアーティスト
 →丹羽宇一郎氏の言葉「経営は論理と気合
・気合という理屈では説明できないものが存在
 →だからこそ理屈や論理が大事になる
 →理屈を理解することは理屈じゃないことを深いレベルで理解しているということ
・戦略には「正しい法則」はないが、「正しい論理」は必要
 →情勢や市場の変化が著しい現在に確かな法則は存在しない
 →だが、普遍的な正しい論理は変わらない

ストーリーをつくるために

・ストーリーを語るとは?
→「個別の要素がなぜ齟齬なく連動し、全体としてなぜ事業を駆動するのか」を論理的に説明し、深い共感とモチベーションを高めること
→因果関係、ストーリーの一貫性が高い

ストーリーを作ることのメリット

・様々な構成する要素の「潤滑油になる」
 →市場、トレンド、マーケット、値付け
 →自社も含め、全てのステークホルダーを動かず必要がある
 →全てが潤滑に機能するために「戦略」が必須
あたかも動画のようにイメージできる
 →自発的にアクションできる
 →顧客、社員、ステークホルダー全ての「心の動きまでを戦略化」する

ビジネスモデルと優れた戦略の違い

ビジネスモデルは「静止画」、優れた戦略は「ストーリー性のある動画」
 →1番の違いは時間軸の概念。優れた戦略はそれぞれの因果関係の流れがわかる
 →スタッフのモチベーションに大きく関わる
・ビジネスモデルだけでは機能しない
 →スキームはわかっても、全体の流れがない
・投資家へ端的なビジネスモデルになりがち
 →だが、組織の実効性を機能させるために、真逆の長めな戦略ストーリーが必要不可欠

ストーリーで戦略に関わる人を「鼓舞する」

・ワクワクする戦略は仕事を楽しくし、努力させる
・ファーストリテイリングの「全員経営」
 →自分の役割のみを果たすのではなく、同じ目的に向かって「解決する集団」を作る
 →京セラのアメーバ経営とも通づる
・経営者の役割は?
 →経営者がストーリーを経営企画が戦略を
 →様々な環境要因を知識として、私達の「今の立ち位置」「今後の向かうベクトル」を示す
数字だけでは未来予想は迫力にかける
 →何らかの確かな根拠に基づいた「確かなクエスチョンと経営者のアンサーが必要だ」

競争戦略(事業戦略)の基本論理

・競争戦略と全社戦略の違い
 →前者は事業ごと、後者は会社の様々な事業のポートフォリオ
 →競争戦略は、例えばソニーとパナソニックの液晶テレビ事業でどういう戦略をとる?という話
・全ては「利益」に通づる
 →株価も雇用もCSRも全て事業の「持続的な利益」が可能にする
・市場を向いた経営
 →経営者が向くべきは「投資家」or 「顧客」?
 →株価ありきの思想は危険。あくまで利益が長期的な企業価値をあげる
 →近年の投資家の短期的な成長を求められ上場廃止する企業も
・「どうやって戦うか」ではなく「どこで戦うか」
 →アメリカ企業GEの競争戦略の考え
 →参入障壁が高く、競合がいない分野を選択し、高収益を上げている
・長期的に見れば必ず「利益が出にくくなる」
 →同じ条件や環境で長く利益が出ることはない
・市場は絶えず「変化する」
 →常に自社の市場における現状、新しい分野やテクノロジーの動向を把握する必要がある

勘違いの競争戦略

・気合や組織論など戦略とは違う話になりがち
・「better」ではなく、「different」が必要
 →より良い性能だけにフォーカスするとコスト増で顧客満足度は上がるのか?という話
・目標を決めたら、具体的な道筋をつけるべし
 →その目標にはどういった方法で辿り着くのか

ポジションニングの重要性

・ファイブフォースという指標
 →提唱者マイケル・ポーター氏
 →5つの考えうる事業の圧力を指標化
 →競合企業数、新規参入障壁、代替品の脅威、供給業者への交渉力、買い手とのパワーバランス
 →これらの圧力が小さいほど「利益が最大化」
 →例えば製薬業界などは参入障壁は極めて高い
 →いかに「優位なポジションニング」をとる
・ポジションニングの重要性
 →従来の戦略は能力にフォーカス。ポーター氏はそもそもその市場を選択するというポジションニングに注目
 →能力も大事だが、それを発揮できる市場を選んでいるか
 →松井秀喜氏、PC業界の話
 →できるだけ「戦わない」戦略とも言える
「何をやる」より「何をやらないか」
 →経営資源には限りが。「何をやる」より「何をやらないか」
 →松井証券が法人向けファイナンスをやらないと決めたこと
 →マブチモーターが小型ブラシ付きモーターに絞る
・オペレーションは簡単にマネできない
 →セブンイレブンの競争優位性の話
 →POSや商品など他社コンビニと一見相違ない
 →仮設検証型発注というシステム
 →コンビニ近くの小学校が運動会だから、おにぎりを多く発注するなど
 →本部と現場の対人コミュニケーションによるオペレーション・検証の仕組み
 →毎月1000人の担当者が本部に集結
 →ノウハウはマネできても、オペレーションの仕組みまでは他社は簡単にマネできない
・経営者が常に意識すべきこと
 →何をやらないかを決め、何をやるか
 →何を頑張り続けるか

持続的な利益を得るために

・競争がない市場を狙うか(ニッチ市場など)
・仕組み(オペレーション、組織、利益構造)で差をつけるか
 →仕組みが確立されると競合がマネしづらい
 →さらにそこに戦略ストーリーがあると真似しづらい
【例】
・トヨタの場合
 →カイゼンで低コストを実現。競争市場で価格ではなく低コストによる利益で差をつける
・セブンイレブンの場合
 →オペレーションの仕組みで差をつける
・フェラーリの場合
 →需要より一台少ない台数を生産する
・ゴール(利益)からの逆算でストーリーを考える
 →「何故儲かるか。何故儲かり続けるのか」が論理的に説明できるか
・(顧客が支払いたい価値)−(コスト)=利益
 →低価格戦略は、低コストが実現する
 →低価格だけで勝負すると競合との泥仕合に
 →瞬間風速的な市場シェアを狙う低価格戦略
 →最終的なゴール(利益)へのストーリーが描いてあるかが条件

ストーリーを「より強く、太く」するために

・優れた戦略は「シンプル」
 →状況は複雑。それを如何にシンプルにまとめ、伝えるか

・マブチモーターの「モーターの標準化」
 →大量生産の実現のためのコスト、人件費、メーカーとの関わりの因果関係
・ベネッセの赤ペン先生がなぜ強いか
 →受講者と赤ペン先生の定着のために
 →受講者と赤ペン先生の繋がり(教材、おたより、誕生日カード)
 →赤ペン先生達のコミュニティ
 →人材は高学歴の主婦の「社会的有給資産」
・成果報酬はチームで。助け合いが生まれる
 →サウスウエスト航空は個人ではなく、チームでの成果を重視した
・最初から完成された戦略はない
 →しかし成功した企業は様々な制約の中でも、普遍的な戦略の枠組みを作っていた
 →Amazonも細かな点は変われど今でもジェフベゾスが書いたスケッチは戦略の原型としてそのままの形で使っている
・アルバック中村会長の言葉
 →他社が実践している立派な経営手法はたくさんある。しかし、それにしても自分で考え、独自の経営を編み出したから強くなったのであって、それを真似しても会社として成長しない。だから私達も自分で考えることにした。
 →経営者はその会社に必要なストーリーを作り上げ、磨き上げる覚悟が必要だ

コンセプトの重要性

・「言われたら確実にそそられるけれども、言われるまでは誰も気づいていない」が素晴らしいコンセプト
・ホントは誰に何を売っているの?
 →コンセプトの重要性
 →誰に何をという明確でシンプルな視点が抜けがち
・誰に嫌われるかを考える
 →ターゲットを絞る際に「誰に嫌われるかを考える」ことでコンセプトがより絞られる

・そのサービスに関わる人の感情や本性を見つめる
 →耳障りのいいサービスは人の心を捉えない
 →ビジネスを取り巻く環境は変われど、「人の心は変わらない」
・あなたの会社は売っているのは何?
 →ただの物?サービス?それとも何かしらの明確な体験や価値?
・リアリティをとことん突き詰める
 →顧客はどのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足に感じるのか。頭で何度も繰り返し考えよ。
 →考えて、考え抜いて、これでダメなら仕方ないと思えるまで練りこまないとスタッフは機能不全を起こす
・目的がなければ目標などありえない
 →KPIはただの目標。それまでの誰もが想像しうるストーリーを働くスタッフが感じなければ「ただの作業で仕事ではない」とホットペッパー事業部長の平尾勇司さんはいう
・コンセプトを言葉にする
 →単語ひとつで解釈が変わってしまう
 →コンセプトはストーリーやイメージを掻き立てるものでなければならない

【例】
・リコー
コピー機など事務機器ではなく、画像処理のデジタル化の価値を企業に提供した
・ベネッセ
通信事業だけでなく、そこに関わる人達のコミュニティを大切にした継続型ビジネスとして提供した(心の交流、あらゆる双方向のコミュニケーション)
 →子供を含めた家族のコミュニティに、学習を促進するコミュニケーションを
 →ただの教材、添削指導だけの機能では計画通りに会員数は伸びなかった
・ブックオフ
自分が買って使ったものをそのまま捨てたくないというゴミ・リサイクル業者が満たせないニーズで「捨てない人のためのインフラ」のライフサイクルを提供した
捨てない人にリユース生活のインフラを
・ホットペッパーは狭域情報誌というコンセプト
 →生活圏内の事業者と消費者に
 →生活情報の提供による消費のマッチングを
・中古車買取専門のガリバーは
 →従来のBtoC向けの小売を辞め、
 →バイサイドの高マージンを捨て、CtoBでオークション販売に徹し、フランチャイズで店舗展開した

楽天やAmazonが何故Eコマースで成功したか

・当時インターネットが普及し、Eコマース事業がたくさん立ち上げ
 →だがほとんどの事業は潰れた
 →原因は単なるネットの自動販売機と考えていたから
Amazonはマーケットプレイスで成功
 →モノを売るのではなく、顧客の購入の手助けをコンセプトにした
・楽天は顧客と出店者の双方向の繋がりで成功
 →ブログ、出店者への直接問い合わせなど
 →卵販売業者の成功例
 →毎日のように卵をどのように大切に育てているかをブログに
 →顧客がその価値に共感し、購入。顧客同士の交流も生まれコミュニティとなる

長期的な利益を得るために

・先行優位は長く続かない
・マネしたくてもできない、既存の事業とコンフリクト(衝突)する
 →一見他社から見ると「不合理である」ことが長期的に優位に立ち利益をもたらす

失敗は「早く、小さく、はっきりと」

・ホットペッパーは明確な撤退ラインがあった
 →18ヶ月での黒字達成必須
 →累積キャッシュアウト20億円以上はしない

秀逸な戦略ストーリーとは?

・体の内側から盛り上がってくる熱気と、心の奥底に沈んでいる黒い錘(おもり)である
・自分以外の誰かのため、世のため人のためであること
・誰かに話したくなる自分が心底面白いと思えるもの
 →それこそが社内の人達を突き動かす最強のエンジンとなる

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